キャー! 旦那様人前です!!
やったー!の日から、旦那様は変わりました。
何が変わったって、とにかく幸せそうなんですよ。
にこにこして「僕たちの結婚生活最高だね」みたいな顔しやがるんですよあの男、あーもー信じられない。
夜寝る時は、旦那様はルンルンして、毎晩私を腕の中にしまい込んで、優しくちゅ、ちゅ、ちゅーとキスして、すやすやーっとお眠りになる。
おかしいな? もしかして私が気づかないうちに初夜終わってる?
何初夜? 想像初夜? 夢の中でイチャイチャ初夜? 実は寝ている間にされてました初夜?
え? なにこれ? どゆこと?
旦那様は二人きりの時も、溺愛してくれるようになりました。
膝の上にのせて、お菓子を食べさせてくるなんてしょっちゅうです。
いつも手を繋いでくるので、本のページをめくるのも一苦労です。
この前まで不安でいっぱいで、苦しそうな顔をしていた旦那様が、こうして幸せそうにして、二人きりで過ごしたがるのは、とっても嬉しいです。
それからね、人前での溺愛ですけど、相変わらずです。
限界に挑戦されることは無くなったので一安心ですが、とにかくキスはしてきます。
ビーシェヴァル伯爵夫妻のキスの裏路地なる場所が新しく命名されてたました。
私が伯爵家を飛び出して、すぐに連れ戻されてから3カ月ほどが過ぎました。もうこの生殺しに耐えられなくなってきて、もう一度通い婚にしようかしらと思い悩んでいると、旦那様の様子がちょっと変になってきました。
「ミリア、もうすぐ僕たちの2年目の結婚記念日だね。僕はその日を特別にお祝いしたいんだ」
「特別とはどんな?」
「ミリアがしたいことを全部する」
「それなら会場を素敵に飾り付けて、とびきり美味しいお料理を食べて、小さな音楽団をよんで旦那様とダンスして……」
思い付くままに我儘を言ってみました。旦那様は顔が溶けるくらい、にっこにこです。
それから初夜をしたいです。
もう口には出せません。心の中は雪嵐がびょーびょー吹き荒れてます。
悲しいな……
幸せだけど、私ね、旦那様に愛されたいし、愛したいの……
それからの旦那様は、結婚記念日のお家パーティに前のめりで転びそうです。
日が近づくにつれ、旦那様の目がちょっと妖しく光ってきました。なんかギンギンです。ちょっと息が荒いくらいです。ただでさえ、神々しいお顔が、妖しい魔王みたいになって、美しさにすごみがでてきました。もう見ただけで、色気がむんむんで昇天しそう。
どうした旦那様、熱でもあるのか!
その旦那様の興奮は、結婚記念日前夜に最高潮になりました。
あんまりにも、おめめまん丸で、全力でご主人に走って来るワンコみたいに、しっぽぶんぶんしてハッハしてます。
心配です。旦那様の胸に手を当てると、心臓がドゴドゴすごい速さです。
「どうしたの?」
「明日が楽しみなんだミリア」
なにがそんなに楽しみなんだろう。おねだりして用意してもらった、ビンゴゲームマシーンのことかな。
もしかして、旦那様が張り切って用意してくれたドレスを、私が着るのを楽しみにしてくれているのかな? それだったら嬉しいな……
寝床の中で、明日着るドレスのことを考えて、ちょっとにこにこしてました。
珍しく、今夜の旦那様は抱きしめてきません。
腕枕でねるのが習慣になっていたので、ちょっぴり寂しいですが、今夜の旦那さまは変なので放っておきましょう。
目がぱっちり開いて、天上をぼーっと見ているかと思うと、突然にへーっと口が緩んで、ふふ、へへ、って笑うんです。怖いんです。どこかにいっちゃってるんです。
もう旦那さまのことは知りません。私は寝ます。
真夜中
突然息ができなくなりました。
苦しい、ぷはっと息を継いでも、また息が吸えない。
あれ? 私全裸になってる?
何かが体の上でもぞもぞしてる……え? え?
半分寝ている頭で、体の上を見ると、毛布の塊が動いている……それが動物みたいに見えて……
「キャー!!」
大きな叫び声をあげました。
がばっと毛布の塊から、旦那様の顔が出てきました。
「ミリア、ミリア、僕のミリア」
ぎゅーっと抱きしめてきて、そして手が胸に……
え?
もしかして、初夜してます?
「ミリア、結婚記念日になったら、パリーバルバルとの契約が完了して、僕たち初夜ができるんだ!」
「けいやく? わ、わ、ひゃっ!」
何を言っているのか分からない、旦那様がびっくりする場所を触ってくる……
「ありがとうミリア。あの日に君がパリーバルバルいつまで旦那様にこんなことをさせるの?って聞いてくれたから、パリーバルバルが答えてくれたんだ。僕たちの結婚記念日、ああ、やっと君を抱ける」
結婚記念日になったら、私を抱ける?
旦那様にすごいことをされて、もう頭の中が真っ白になりそう、もうあなたのことしか考えられない。
「ディルク、大好き、私達、今初夜をしているのね」
「そうだよ、ミリア。僕たちの結婚記念日に! ああ、やっと君が僕の名前を呼んでくれた」
「……ん? ちょっと……待って……結婚記念日は明日……」
旦那様が深く口づけた後、とろける声で告げた。
「僕、さっき気づいたんだ。12時を過ぎたらもう明日だって……ミリア、僕はもう我慢しない」
「愛してるディルク」
「愛してるミリア」
バーン!と夫婦の寝室のドアが開きました。
「どうなさいました奥様!」
「先ほどすごい悲鳴が!」
「大丈夫ですか? ご無事ですか?」
使用人がどやどや入ってきた。
ちょっと、旦那さま止まって、人が入ってきたから。
あれ、ディルク? ディルクったらー止まってよー、キスしてたら声が出せない。
ちょっと我にかえって、ディルク、え? 気が付いてないの?
キャー 旦那様、人前ですー!!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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この話のディルク君のように、我慢する男が大好きです! 別の話で100話ほど、ひたすら主人公が、我慢してもんもんする話を書いてますので、私と同じ「我慢男子」「耐え男」が好きな方よかったら
『見ているだけで満足な姫と、死んでも触りませんと誓った剣士』の話ものぞいてみてください!