表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/48

八話 王妃様に会ったよ

街の広場は、少なからずのテントや馬車が利用していたんだよ。でもね、朝早くから、異様な感じがしたんだよ。

僕はゆっくりと馬車を降り、広げてあった椅子に座って、朝食を食べ始めたよ。僕の後にはキンバリーとメアリーを立たせているから安心だね。


広場は衛士に囲まれているんだね。広場の人達が、気にしているんだな。僕は、気にはしないよ、と云うか、僕には、どうする事も出来ないからね。


僕の朝食はパレス館で用意して貰った物を食べているのさ。作り立てと変わらず、五歳の僕には、大層有り難いよね。食事も終わったよ、お茶を飲んで出発だ。


広場を囲む衛士達、こちらに歩いて来るんだね。五十人程かな。怖いよね。

・・・うん?面倒事?・・・ロジャースの爺さん、何かしたかな・・・


衛士達が、僕の馬車を囲んだよ。一人の衛士が僕の前に立ったよ。

『子供、一緒に来い』と、僕に言うんだよ。

・・・失礼だよね・・・


『どこぞの、どなた様か知りませぬが、いきなり、子供を囲み、一緒に来い、と言われても、はい、とは言えませぬ。僕はこう見えても、ファンタン家の嫡男なので、誘拐されるような愚かな真似は出来ませぬ。クックックッ』と、笑って上げたよ。


『賢しらなガキが・・・嫌なら力尽くで連れて行くぞ・・・』と、衛士の代表者。


『お出来になられるならどうぞ。しかしながら、僕は抵抗致しますよ。きっと、あなたは馬鹿なのですね。私はアシリアのファンタン商会の嫡男と申しましたよ。つまり、書類を示めさず、連れて行こうとは、それは拉致であり誘拐になりますよ。間違いなくアシリアとの紛争になるばかりでなく、香辛料組合の信用も失いますよ。クックックッ』と、また笑ってみる。


衛士の代表の男は怒りのあまり、何も言わない。

僕は続けたよ。

『さすれば、組合は如何すると思われますか?信用出来ぬ領家には、塩も砂糖も香辛料も、入れる事は無くなりますよ。王妃様はいかに思われましょうや?クックックッ。』と怒らせるように、笑うのさ。


『王弟様の指示だ。四の五の言わずに来い』と、鼻白んで言うんだね

『ほう、王弟様と、クックックッ。それでは益々行く必要は有りませんね。この国の王弟に、いかな力が有りましょうや、クックックッ。』


衛士の代表が僕を睨んでいるよ。

・・・おお、怖い。・・・


他の衛士達が、口々に小さな声で話してる。どうしたのかな?

『皆様、そろそろ王妃様もお気付きでありましょう。王妃様の怒りを買わないように、お気を付けなさいませ。』と、他の衛士達を見回すよ。

『皆様、僕は領都に向かわなければなりません。これで、失礼致しますよ。クックックッ』


衛士の代表の方が何か強く言っているが、他の方々は首を振っている。衛士の一部の方々は引き上げて行くんだね。それを尻目に、僕も馬車を出すよ。急いで、レマンを出ないとね。

・・・危ないよね、衛士さんの人数多いと、対処出来ないよね・・・


広場を抜け、街の門に差し掛かる。検問は有るが、検閲はしていない。僕は窓から顔を出し、挨拶したよ。それで通してくれたよ。


僕は街道を領都レスタスに南下して行くのさ。

・・・領都へ行く街道なのに、他の馬車がいないんだね・・・まぁ、気楽で良いね・・・


昼頃、レスタス迄、半ばに達した頃なんだ、前方レスタス方面から、大量の馬の足音が聞こえてくるよ。

念の為、空き地の木の陰に馬車を寄せておいたよ。衛士が百人程で護衛する豪華な馬車の一団が、ゆっくりと街道を北上していくんだね。

・・・誰かな?面倒は、困るんだよね・・・避けていて良かったよ・・・


僕は街道に馬車を出したよ。後ろから二騎の馬が来たんだ。衛士の姿だね。僕の馬車の傍らに馬を寄せて来たんだよ。

『恐れ入りますが、お待ちを。我が主がご挨拶をと申しております。直ぐに参ります故に、少々お待ちを。お願い致します。』と、聞こえて来るよ。


『うん?ご丁寧なご挨拶、痛み入りまする。しかし、人違いでは在りませぬか?僕は五歳の子供です。挨拶頂く謂れが在りませぬ。』と、返したよ。


と、豪華な馬車が、僕の馬車に横付けされたよ。

『ご子息、そちらに伺っても良いか?』と御婦人が言われたよ。

『構いませぬが・・・何か御座いましたでしょうか?』と、聞いてみたよ。

『では、そちらに乗せて頂く。』と御婦人が言われたよ。


僕は扉を開けて、御婦人が乗り込んで来るのを見ていたよ。

乗り込み、座られた御婦人が言われるんだ。

『流石、シャンタン家の馬車、中は豪華であり、乗り心地も素晴らしい。』と微笑んで下さるのさ。

『僕をシャンタン家の嫡男とお知りの貴方様はどちらの方で御座いましょうか?』

『これは済まぬ。妾は王妃スタナじゃ。見知りおいてたもう。』と、豪華な波打つ銀の長い髪と派手なお顔立ちの女性が言われるよ。

『これは、真に光栄ではあります。五歳の身、ご無礼を申し上げるかも知れませぬが、お許し下さいませ。』と、僕は、頭を下げて答えたよ。


そっと顔を見てみたんだ。王妃は僕を見て笑っている。

『いや、普通で良いぞ。此度は世話になった。相済まぬな。今は、急いでおると聞く。また、寄ってたもれ、礼がしたい。』と微笑んでいる。


『ところで、ファンタンのご当主が不明とは真か?』

『はい。レンティア領を出た迄は分かっておりますが、その先は行って確認を致しませぬと、何とも言えませぬ。』

『そうか、それは難儀な。無事を祈っておるぞ。』

と言われると、王妃は僕の馬車を降りて行ったよ。 

・・・乗るのも早いが、去るのも早いね・・・


・・・何か感謝されていたな・・・何の用であったのかな・・・うん、ごたごたに巻き込まれるのは御免だな、急いでゴルシアに向かおっかな・・・


ーーーーーー 王妃スタナ ーーーーーー

『王妃様、如何で御座いましたか、彼の者は?』と爺が聞いてくる。

『ああ、あの者は、智恵憑きの児、鬼児、魔神の児とか、恐れられる者であろうぞ。』

『しかし、何故その様なご判断をなされました?』

『爺、この世界で、五歳の子供が旅など出来るものか。そうわ、思わぬか。執事も待女も手助けしておらんかったわ。』

『そうでございましたか・・・如何なされます?』


『何もせぬ。顔を見知っただけで十分よ。我が領内で親が亡くなった訳ではないからな。構わぬ事よ。下手に巻き込まれると損よ、碌な事にならん。』

『はい。』

・・・誰だ、あの親を葬ろうとしておる者は、もし、死んでなどおったら、とんでもない事になるわ・・・


・・・確か、我が家の年代記に鬼の児として載っておったな・・・いくつもの領家や国が滅んだと・・・


最近でも百年前か、二十家の内の、真ん中の位置の国であったか、鬼の児の親を殺した家があったが、その家は、鬼の児が成人した時には皆殺しと、家と国を滅ぼされたと年代記に載っておったが・・・

・・・怖ろしき者達よ・・・くわばらくわばら・・・


レマンに着いたか。尻が痛いわ。ファンタンの馬車が欲しいが。あちらの馬車の乗り降りもの良かったのう。

付き人が店に声を掛けようとする。

『よい、妾が声を掛ける。』


『ロジャース殿は居られるか?』

・・・横に二人、後ろに二人、王宮衛士が従っているか・・・ここまでせずとも良いのに・・・


『これは、これは、王妃様、わざわざのお越し、恐れ入りまする。』と、ロジャースが出て来て、畏まっている。

『ふん、面倒な事よ。』

『塩が用意出来たと聞いたが、真か?』と、妾が聞く。

『はい。ファンタンの嫡男が譲ってくれました。』

『では、その分、妾に譲ってたもれ。妾が配る。』

『はっ、畏まりました。』とロジャースが笑う。

・・・ふん、評判取りであるのは分かっておるが、仕方ない、方法はそれが唯一じゃ・・・


『王妃様。ファンタンの嫡男が妙な事を呟いておりましたが・・・』とロジャースが言う。

『ほう?ファンタンの坊がか?・・・何と?』

『王弟と商会では無理とか・・・私にはなんの話かわかりませなんだが・・・』とロジャースが不思議そうに応える。


・・・何!・・・

ちっ、顔に出たわ・・・ロジャースには見られたか・・・仕方ないが・・・

・・・うむ?となると・・・そうか、そう云う事か・・・

『馬鹿にしおって・・・』

・・・つい、声が出てしまった・・・


それを聞いた、ロジャースが、心配そうに聞き返す。

『ファンタンの子息の事で御座いましょうか?』

『心配するな。あの坊の事でない。気にするな。内の事じゃ。』と、苦か笑いになった。


・・・バノンが戻って来たか・・・

『バノン。弟と商会は捕まえたか?』

『王弟様は監禁致しております。商会の者は逃げて御座います。北の国境まで追わせております。』

『そうか・・・』

『弟は王宮に連れ帰れ。商人は引き続き追え、どこまでも追え!領外でも構わぬ。捕まえよ。』

『妾も、支度出来次第、戻る。良いか?』

『はっ!』


『ロジャース殿。ファンタンの子息の付き添いの者には会ったか?どの様な者達であった?』

『はい。まるで、温もりが感じられませんでした。』

『温もりが無いか?』

『はい、一言も喋らず、子息にしか応じておりませんでした・・・』

『そうか・・・力は在りそうか?』

『おそらく。』


今は馬車で領都に戻っている途中だ。

『爺、廃王を行なう。一般に落とす。』

『・・・しかし、王妃様、それだけで良いので?』

『後は知らん、任せる。』

『はい。』


『怖いのう。ファンタンの坊は・・・気が付いておったぞ。』

『王の事でございましょうか?』

『ああ。』

『幼子と思うから驚くのでしょうな・・・大人と思えば、さもありなん、でございますな。』

『大人か、確かにな。ただ魔力はどうであろうな。年代記には能くしたと有ったわ・・・』

『そちらは確認しておきましょう。』

『ああ、頼む。』

『それと、ご子息は店舗を売却しておりましたな。ロジャース様に言っておりました。アシリアには戻るつもりが無いのかもしれませぬ。』と、爺が言う。

『そうか・・・では、諦めておるのかもしれぬな・・・』

・・・困った事よ、荒れぬと良いが・・・


八話 完




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ