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四十四話 教会のえらい人に会ったよ

 キョウカに乗った僕と父さん、それにキンバリーとメアリーは最上階の広い窓の前に姿を晒したよ。

そして、先ず、キンバリーとメアリーを、窓から部屋の中に入れたよ。そして、キンバリーを窓の左脇に、ゆっくりと移動させたよ。次にメアリーを右脇に歩かせるよ。で、キョウカを窓の直ぐ傍に近付けたよ。


僕と父さんは、部屋の中を見るよ。

広い部屋だね。少し、暗いけど。飾ってある絵や壺、彫刻品が多数あるね。調度品も高価そうだよ。窓から見て、右に扉、左に立派な机に立派な椅子。それぞれ一つだね。その机を前に、椅子に座っているのが教皇かな。同じ身なりの四人が机の左右に居るよ。

五人は、驚いた顔で僕と父さん、キンバリーとメアリーをを見ているよ。


『部屋に居るのは五人だけのようだね。』と、父さんが言うよ。

『父さん。机の向こう側、座っている人に近く立っている人が、アーチンソンに聖戦騎士団と共に来ていた、ノルベルトって言う人だよ。大司教だって。』と、僕は、その大司教を見ながら言ったよ。 

その人は僕から目を逸らしたよ。何でかな。

『そうなのかい。では、話は早いね。中に入って、サバ殿に話をして帰ろうか。』 

『うん、そうしよう。』


僕と父さんは、キョウカのまま部屋の中に入ったよ。

そして、伏せたキョウカから、下りたよ。

五人はじっとキョウカを見ているよ。何も言わないね。怖いよね、キョウカは。

キョウカは、二つの顔は瞼を閉じて、伏せているよ。


父さんは、少し、窓から机に近付くと、

『窓から失礼する。アスタロトの者だ。』と、言うよ。

右の扉が開いたよ。騎士団の方々が、静かに部屋に入ってきたね。

僕は少し驚いたよ。誰か合図でもしたのかな。


父さんは気にせず続けるよ。

『サバ殿に、お伝えしようと思って来たが、直接お話がしたかったが、周りの方の意思なのか、それともあなたの意思なのかは分からぬが、時間が取られそうなので、仕方なくこの様な羽目になった事は、お詫びを申し上げる。話をしたら直ぐに失礼する。息子はこの地が嫌いなようなのでね。で、サバ殿。話は通じておられるか?』


『ああ、話は聞いておる。しかし、千年の前の約束など守る必要があろうか?不快である。』と、椅子に座っている人が、父さんを睨みながら言うよ。椅子の人は、白の衣装に、金の飾りがたくさん付いているね。


『不快な約束という事であれば、サバ一世に言われるべきだな。まあ、その一世のお陰で、教皇に成れたのであろうに。血のお陰の教皇にも拘らず、その守るべき誓約を、自分から否定する者に、この地位は必要は無いのだろうな。』父さんが、淡々と言うよ。

『だから、もう、この地の主ではない。期限の内に去られるよう、忠告致す。』と、更に言うよ。

椅子に座っている人は、父さんの言った事を馬鹿にしたように笑っているよ。

父さんは、それを見て肩を竦めただけだね。


『・・・メルクス。排除せよ。』と、大司教の一人が熱り立って、言うよ。

『マルマン大司教、貴方様の命を受ける訳には参りませぬ。いま、私達が此処にいるのは、アスタロトの方々が、安全にお戻り頂き、一般信徒が、引き続きこの地に住めるようにするのが我らの責務である、と心得ます。』と、メルクスさんが硬い顔で言われるよ。


『我の命に逆らうか?そんなに一般信徒が大事か?』と、マルマンと言われた人の顔が赤いよ。

『マルマン殿。何を言われる。信徒あっての教会ではありませぬか。今の言葉を、一般信徒が聞いたらどう思うか、考えた事が有りますか?』と、メルクスさんが、怒って言ったよ。

『・・・』

マルマン大司教は睨むばかりだね。


『ブランシュ。居るか?』と、別の大司教の人も、大きな声で呼ぶよ。

『パルメ殿。ここに。』

男の人がいきなり現れるよ。

黒っぽい服装だね。でも、革の鎧は着ているね。

『あの二人を、討て。』

『うん。・・・困りましたな。騎士団がおりますから、討つのは無理でしょうな。私は、暗殺専門ですから、このような状況はごめん蒙りたい。それに、アスタロトの方々を討てなどと、それこそ御免蒙る。』と、黒の服装の方も言われるよ。


『ブランシュ。貴様もか・・・我らの恩を何と心得る?』

『恩?笑わせてはいけません。恩などありますか?嫌な仕事を押し付けられる身にもなって下さいな。子供をやれと言われるなんて、とんでもない事です。御自分でどうぞと言いたかったですよ。』と、半笑いを浮かべている。

『・・・』と、パルメと言われた人も、地団駄を踏み兼ねない顔付きだね。


『どうせなら、聖戦騎士団の長の方にも来て頂ければどうでしょう?上司だった方に、その心の内を聞いて頂くのも良いかも知れませんよ。』と父さんが、言ったよ。

『よろしいですか?一応待機はさせておりましたが。』と、ブランシュさんが言われるよ。

『それは、それは。どうぞ、こちらに。』


『ブランシュ、何を勝手なことを』

『何時までも、上司気取りはお止め頂きたいですな。人の事より、ご自分の行く末を御案じなされては如何です?この事は決定事項でありますし、ここはもうアスタロトに還された地でありますよ。』

『何を言っておる。』と、声がしたね。

四人の方々もそれぞれ、怒って、ぶつぶつ言ってるね。


ブランシュさんが、扉の傍らに行くよ。そして扉を開けて、外を見るよ。手招きしているね。

そして、ブランシュさんの後に人が入ってくるよ。


『失礼する。アスタロト殿にご挨拶申し上げる。聖戦騎士団を率いていた、クードフと申す。御子息には、戦闘の手加減及び、大切なご忠告を頂き、騎士団全員無事に帰れたことは、とてもありがたく感謝いたす。誓約などある訳が無いと、そこの方々に嘘を吐かれるとは、これが、教会の上の方々の考えとは情けなくなりました。余程、ご子息のほうが上に立つべき姿であるのではないかと・・・』と、入って来たクードフさんが、父さんに言うよ。

父さんは苦笑いだね。僕も困ったね。


『では、メルクス殿、ブランシュ殿、クードフ殿。教会の建物は期日には、塵と変わりましょう。下で、今後の件で話がしたいのですが、宜しいかな。』

『それは、助かります、何せ、前代未聞の恥知らずな事が行われ、多くの信徒が当惑致しております。今後に付いてご教示頂ければと思っておりました。』と、年長らしき、ブランシュさんが言われるよ。


『お先にどうぞ、こちらは窓から失礼するので・・・早いですから。』と、父さんが言うよ。

三人の方は、三人で顔を見合わせると、父さんに肯くと、部屋を出て行ったよ。


父さんは、続けて僕を見て言うよ。

『グレン、キョウカを起こしておいてくれるかな?そして、首に掴まっているんだよ。』

『うん、父さん。キンバリーとメアリーにも注意させておくね。』と、僕はキョウカの片方の首に掴まるよ。


『さて、サバ殿。他の代表信徒のご意見をお聞き致した。あなた方とは違うようだ。上に立つ者として、どうお考えであろうか・・・』


『私々は、これで失礼する。お気をつけて行かれよ。』と、父さんは言うよ。

それに対し、教皇は苦い顔だね。

そして、脇の人に何か言ったよ。


『ま、待て。した事は謝ろう。少し待って貰えぬか。教皇様も直ぐにでは困るのだ。』と、ノルベルト大司教が言うよ。


父さんは首を振ると、キョウカの背に跨がったよ。

『父さん、あの人は何を言っているんだろうね。自分達だけは特別だと思っていたのかな?』

『かも知れないね。特別の人など居ないのにね。放って、行こうか。』と、父さんが微笑んだよ。


僕は肯くよ。

キョウカを浮かせると、窓の外へ出たよ。

そして、キンバリーとメアリーを見ながら声を掛けたよ。

『行くよ。』と、そして、浮かせて、窓の外へ移動させたよ。

そのままキョウカも、キンバリーもメアリーも、ゆっくり下ろして行くよ。

教会前の広場には人は居ないね。しかし、教会の敷地を取り囲むように、多くの人が集まっているね。


教会の前の広場に降りる前にキンバリーとメアリーを仕舞ったよ。

キョウカを広場に下ろし、僕らはキョウカの体から離れたよ。

次に、キョウカを、宙に飛ばして、消えるように仕舞ったね。


僕と父さんは、広場の角の石垣に座った頃に、三人の方と騎士団の方々は教会より出てこられたね。三人の方以外はどこかに行かれたよ。

三人の方はこちらを見つけ、歩いて来られるよ。


僕は、キョウカの首に掴まって首を上げていたので、首が凝ったよ。それで、首を揉んでいたんだ。すると、ひとつ大事な事を思い出したよ。


ブランシュさんが僕の傍らに来たよ。

それで、訊いてみたんだ。

『ブランシュさん、帝国内で、馬車に乗せていた僕の人形の首を切り落しましたか?』

『えっ、・・・ええ。』と、ブランシュさんが、慌てたよ。

そして、父さんの顔を見るよ。

父さんの顔が怖くなったね。


僕は構わず続けたよ。

『あれ、直すの高いんです。弁償して下さいね。』と、僕はブランシュさんを見たよ。

『あはは、弁償したいのは山々なんだけど、しがない信徒は金がなくて・・・』と、困った顔をしているよ。

『では、貸にして起きますから、そのうちに、何かで返して下さいね。』と、仕方の無い顔で僕は言ったよ。

『私の借りですか・・・はい。』と、何とも言えない顔で、ブランシュさんは呟くよ。


『グレン。問題はそこではないだろう。命を狙われたんだよ。』と、父さんが、少しきつい顔で言うよ。

『でもね、父さん。ブランシュさんは僕とイレーネが何処で寝ているか、知っていた筈なのに、僕の首を落としに来ないで、人形の首を落としたんだよ。メアリーの鎧にも傷を付けてね。』


『では、グレンの居場所を知っているのに、グレンの居ない馬車を狙って、人形をの首を落とし、騒ぎを大きくしたと。』

『そうだよ。騒ぎを大きくして、しっかり警戒しろと、それで、警戒が厳重になったから無理になった、との言い訳をしたんだと思うよ。端から子供を狙う積もりは無かったたんだよ。』と、ブランシュさんを見るよ。


ブランシュさんは頭を掻いているけど、何も言わないね。

『でも、グレン。寝ている処を襲われたらどうするつもりだったんだい?』

『父さん。イレーネが居るんだよ。イレーネを信用しないの?キンバリーだって居たんだよ。それに寝床はニ重だから大丈夫だよ。そうでもしないと、テントで寝るのに、イレーネはうんと言わないんだよ。』と、僕は父さんを見たよ。

『そ、そうだね。イレーネが居るから大丈夫だね。』と、少し焦っているね、父さん。//

『だから、僕の大事な人形の首を落とした事が納得いかないんだ。』と、父さんを見て、ブランシュさんを見るよ。


『御子息はしっかりしておられますね。あはは。』と、ブランシュさんは父さんに言うよ。

父さんは困った顔で返すよ。

『ええ、グレンはファンタンでもありますから。私より、損得の計算はしっかりしていますから・・・』


『こちらにパール商会の出先は有りますか?』

『パール商会?パール大司教の店の事ですかな?』とブランシュさんが言われたよ。

父さんの顔は渋いよ。


四十四話 完







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