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四十三話 教会に入ったよ

レンティア王国を発って、オクト、カルロスを抜け、サバの門に立ったよ。

サバの領地はそれほど広くないんだ。カルロスの四分の一だね。信徒だけだったから、それほどの広さを、あたえるひつようがなかったんだね。

サバの入口は厳重で強固な門で閉められているね。

『教皇に、アスタロトが誓約の件で、ご訪問申し上げたと、お伝え頂きたい。』と、父さんが、門番に言うよ。


少し、時間が掛って門が開いたよ。

門の向こうに、白の鎧に白のマントを来た、騎士団がいるよ。その騎士団の先頭の方が言うよ。

『教皇がお会いになられるとの事、ご案内致します。』

馬車に乗せられるよ。尖った三つの塔の建物に向かっているね。

『父さん、あれが教会なの?』

『ああ、そのようだね。父さんも行った事はないからね。』

『何だか、黒くて、不気味だね。』

『確かにそう見えるね。』

『ねえ、父さん。教会って何であるの?』

『当初は、人の心は弱いから、挫けそうになった時に、何かに縋りたいと思った人を、少しでも助けて上げたいと思った、そんな場所だったのではないかな。』


馬車は鉄の門の前に到着したよ。門が開くのを待って、入っていくね。それから、石でできた橋の円形部分の橋桁を抜けて、塔の入口に馬車は着くよ。

そこから、騎士団に囲まれて、塔の前の十段程の階段を上り、三つの黒い色の尖塔へ、入口を入っていくよ。


そこは、中央が通路で、脇に列をなした長椅子が並ぶよ。長椅子の先には演壇と、その奥に何か飾ってあるね。神様かな。天井は、長椅子の部分は吹抜けだね。明かり取り用の窓もあるね。


僕と父さんは、長椅子の脇の壁にある扉の一つに連れて行かれるよ。

『この部屋で少々お待ちを、連絡が有りましたら、お呼びいたします。』と、白い鎧とマントの騎士の人は言うや、出て行ったよ。

鍵が掛けられた音がしたよ。部屋には、天井近くに小さい窓が二つ、等間隔であるだけだね。それに、卓と、椅子が四つだね。

『とうさん、捕まった気分だね。』と、僕は身震いしながら言うよ。とても、怖いね。

『あはは、本当だね。でも、大丈夫だよ。』と父さんが笑うよ。ァ

それで、随分と落ち着いたよ。


『父さん。随分と待たせるけど、僕達が待たなければいけないの?』

『そうだね。確かに。では伝言だけして帰ろうか・・・』と、父さんが笑ったよ。

僕は、扉を開けようとしたけど開かないね。

『父さん、やはり、鍵が掛かってるよ。』と、僕は父さんを見たよ。


父さんは、どんどんと扉を叩いたよ。

そして、

『帰りますから、開けて下さい。もし、開けないのなら、壊してでも出ますよ。』と、また、どんどんと叩いたよ。 

それでも、父さんは冷静だね。僕を見て、微笑んでくれたよ。

がちゃりと、音がしたよ。

『教皇様はお忙しのです。お待ち下さい。』と、司祭様かな、剣呑な顔を出して言うよ。


父さんは、そのまま、扉を開け放つと、僕を手を引いて部屋の外に出たよ。

『こちらは、告知しに来ただけですから。教皇に会う必要もありませんよ。』

『ただ、神宝教会が、誓約を破られたので、この地はアスタロトにお返し頂く事になります。それが、サバ一世との誓約ですから。レンティアとアスタロト両方の血が絶えない限り、この誓約は、千年でも二千年でも続くのです。残り七日で、この地を出て頂かないと、血は沸騰し、肉は腐りますから。それが誓約です。では、これで。』と、父さんは言ったよ。


『さあ、行こうか。』と、父さんが僕と手を繋ぐよ。

と、司祭の傍らにいた騎士団が、少し距離を取って、僕らを囲むよ。

『ここで、我ら親子を討っても、もう三日前に、誓約は動き出しているのですから、止めようはありませんよ。』と、父さんが、司祭を睨むよ。

『誓約など、有りもせぬ事を脅しのつもりか?』と、司祭が熱り立つよ。


『アメリアがどうなったかお忘れか?其処に居た誓約を守る気の無い者達の上に何が起きたか?』と、父さんは静かに言うよ。

『そんな事は出任せだ。』と、興奮して顔が赤いね、司祭様。


『司祭の方には何を言っても話が通じないようですね。あなたは、騎士団の長の方かな?』と、僕達を、囲んでいる騎士団の長らしき人に向かって言うよ。


その方は頷くよ。

『聖戦騎士団がアーチンソンに現れ、教会の地だと宣言した事はご存知かな。そこまでしては、もうどうする事も出来ないのです。教皇がこの地に居れば、間違いなく生存できないでしょう。そのまわりの方々、司教や大司教の方々も同じです。あなたに、信仰を捨てよと申しませぬ。ただ、その服を脱ぎ、一般になれば住み続ける事が出来ましょう。審判は四日後、七日後が期限です。光に気をつけなさいませ。濃い紫はこの地におれませぬ。薄い紫は、誓約を守ることを誓いなされれば、消えます。その場合は住んでいても何も起きませぬが・・・』と、その騎士の方をみたよ。


『我らを討てと言われましたか?』と、父さんが訊くよ。

騎士の方が、顔を歪ませるよ。

『我らが討たれれば、この地に誰も住むことは出来なくなりますよ。大人しい信徒の方もです。それが誓約です。』と、父さんは騎士団の長を見るよ。

『それに、大人しく討たれるつもりもありませんよ。生きのびる努力は致しますし・・・』と、父さんが言うよ。

騎士団の長の方は、ただ、首を振るだけだね。


『我々は帰るので、お好きにされたらよろしいかと。行こうか。』と、歩き出したよ。その後ろに、キンバリーとメアリーを出して、牽制しておいたよ。

司祭は驚き、後退ったよ。騎士団の方々は剣に手をやったね。


『グレン、大丈夫かい。』

『うん、父さん。早く外に出よう。ここにいると、気が滅入るんだ。まるで、心を押さえつけられるようなんだ。』

『グレンもかい。父さんも普段でいられないように心がざわつくね。』

と、父さんが大きな門を明けて、僕達は外に出たよ。


すると、まるで、僕達を出さないかのように、多くの信徒の人々が階段の下で、少し離れて、入口を取り巻いているよ。

『父さん。どうしよう?魔獣を呼ぼうか?それに乗って飛ぶけど・・・』


『どうか、少々お待ち下さい。』と、別の司祭らしき人が、取り巻いている人の中から出て来て、声を掛けてくるよ。

にこにこしているね。なんでかな。

『何でしょうか?』と、父さんが声を掛けるよ。

『誓約が、破られたと聞きましたが、本当の事なのでしょうか?ここにいる皆はそれが心配で集まってきたので御座います。けして、貴方様アスタロトの方と争うつもりでは無いのです。』

『貴方は司教のようにお見受け致しますが、どの様な立場であられましょうか?』と、父さんが訊くよ。


僕は、父さんを見上げたよ。

『父さん。僕は子供だよ。その僕は先程から色々有って疲れているんだよ。そんな事も配慮頂けないで、僕達を囲むこの方々に、気を使うのもどうか、と思うよ。』


『僕はね、人への優しさが有る人たちなのか無い人たちなのか、多くの人を見てきたからね。この人達にはそんな優しさが、有るとは感じられ無いんだよ。この人達は自分で何か切り開いていこうとする人なの?ただ、人の言いなりになっている人達としか見えないよ。』


『父さんは、優しいから、誰にでも、と思うだろうし、僕に怒るかもしれないけど、でもね、僕は簡単に出す優しさは持って居ないんだ。誓約の件で僕らを囲むのは、違うと思うんだ。この人達と上の問題だよ。破ったのは上だからね。僕らに訊くのは筋違いだよ。』と、顔を膨らましてたよ。


『そうだね。でも、少し話すだけならいいよね?』と、父さんが言うよ。

『父さん、何故この人達はここにいるの?誰に言われてここに来たの?もし、自分で考えたのなら、僕達の所に来ないと思うよ。上の人に話に行くと思わない。この人達は、話し合いの振りをして、事故に見せかけて、僕達を無き者にするために呼ばれたんじゃないのかな・・・』


『グレンは凄いね。そこまで考えるんだね。』と、父さんが驚くよ。

『僕は、一人で行動してた子供だからね。人が舐めているか、尊重してくれるか、味わって来たよ。だから、人が考えることも、短絡な人なのか、慎重な人なのかもわかるんだよ。あの代表の人は必死さが足らないよね。あの人の言う事は、他に、目的があるとしか聞こえなかったよ。』と、僕は、司教らしき人を見るよ。

その司教の方の、人の良さそうだった顔が歪むよ。

騎士団の人が僕らの周りを囲むよ。僕らを守ってくれているのかな。


『騎士団の長の方、教皇に会いに行きたいんだけど、何処に居るかな?されっぱなしは、僕は、嫌いなんだよね。』と、僕は騎士団の長の人を見るよ。

『高い塔の最上階におられる。あの窓だ。』と、上を向いて、指を指されたよ。


『な、何を、教えているんだ。』と、司教の方が、強い声で言われるよ。

『もし、誓約に違反したのであれば、早く教えてさしあげるのが、忠であろう。それに、我々は、ここで生まれ育ったのだ。今更、何処で暮せと?そのような試練を、部下や、部下の家族に与える事など、私には出来ぬ・・・』と、騎士団の長の方が言われるよ。


『父さん、会いに行っても良いかな?』と、僕は父さんに言うよ。

『グレンが会いたいなら、会いに行こうね』

『騎士団の長の方、お名前を教えて頂けるかな?』と、父さんが聞くよ。

『・・・メルクスと申す。』と、言われたよ。

『この子はグレン・ウォーター・ファンタンと、申します。お見知りおきを。』と、父さんが僕を紹介したよ。

だから、僕は長の方に会釈をしたんだ。


『グレン。キョウカを呼んで貰えるかな。』と、微笑んだ父さんが言うよ。

『うん、父さん。』


ぼくは空の遠くを見詰めて、キョウカを出して、ゆっくりと寄せたよ。二つの頭を、それぞれに動かし、尾の大蛇もこちらに頭を向かわせ、赤い舌を見せるよ。


皆は、その姿を見て、恐れ戦くよ。

キョウカを空中で停めて、火を吐かせるよ。それで、集まっていた人々が、散り散りに逃げていくよ。司教の人は一目散だね。

それを見てから、地面に下ろしたよ。

騎士団の人は、流石に逃げる事をせずに、キョウカを見ているね。


『父さん、跨がったら、甲羅を掴んでね。僕は首を掴むからね。』

『跨がったよ。用意はいいよ。』と、父さんが言うよ。

キョウカをゆっくり上げていくよ。

『父さん、騎士団の人々が中に入って行ったよ。』

『団長が、しっかりしているんだね。』と、父さん。

『キョウカに乗るのは、結構大変だね。乗ると思わなかったから、気をつけてね。』

『父さんは力があるから、グレンこそ気を付けるんだよ。』


『あの窓だね。』

『うん。注意は必要だね。いきなり、攻撃されるかも知れないからね。』

『うん、先に、キンバリーとメアリーを入れるよ。』



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