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三話 出発して討伐者様に会ったよ

夕方にアメリアの街の門を出立したよ。初めての旅でどきどきだね。

・・・父さん、母さん待っててね・・・


直ぐに、暗くなったよ。この世界の夜は漆黒だね。

この世界の夜にはね、魔物が現れると伝えられているよ。でもね、この地域ではね、ここ百年、魔物を見た人はいないんだよ。難しい書物に書いてあったよ。

だからね、夜にね、街道を塞いでいる物がないか、確認しながら、馬車を駆っているんだよ。


南に向かう街道は、森の中を行くんだね。広くて、整備はされているよ。

馬を二頭動かすのは大変だね。人前で、浮かす訳には行かないからね。今のうちに、練習だよ。

右後肢から右前肢そして左後肢から左前肢ってね。四足は難しいね。

・・・常足、速足、駈歩、襲歩、って頭に浮かぶんだ・・・

馬も馬車も浮かせてもみたよ。振動は無いから、気持ちいいね。


うん?・・・遠くに明かりだな・・・この深夜に誰だろう・・・前の灯りは一人用だね・・・今更停めると、怪しまれるだろうな・・・

浮かせた馬車を道に降ろし、ゆっくりと、走らせて行くよ。


馬車の灯りが、歩いている人の後ろ姿を照らし出したよ。大剣を背負っているよ。金髪の、後ろに束ねられた長い髪、背は高めだね。でも、細身な体躯だね。胴のみの薄い銀色の鎧、肩から手の甲までの革の覆い、足首までの革のズボン、膝下までの革の靴。

・・・護衛の方かな・・・


その護衛らしき人が止まったよ。そして振り返る。驚いた顔をしていたね。でも、直ぐに、右手は大剣の柄を握り、こちらを睨んだよ。

その顔は若目のお姉さんだね。

・・・うん、変だね・・・大剣を所持してるとは云え、女の人が、一人で深夜に旅をしているとはね・・・僕も変だけどね・・・


僕は、馬車を大剣の女性の離れた、横の位置に止めたよ。馬車の窓から顔を見せたみたよ。馬車の室内に、灯りは有るからね、僕が子供とわかる筈。

睨んでいた女性の顔が驚きに変わったよ。

・・・切れ長の目の、鼻筋の通った高い鼻、綺麗なお姉さんだね・・・


『今晩わ。このような深夜に御会いするとは。奇遇ですね。どちらまで?よろしければ、都合の良い処までお送り致しますよ。』

『・・・そ、そうか・・・では・・・た、頼もうか・・・』と、護衛らしき女性の驚いた声。

『袖すり合うのも多生の縁。どうぞ・・・』と、賢しらに言ってしまったよ。


僕は馬車の扉をずらして、女性の方を招き入れるよ。

女性の方は馬車の中を確認し、僕しか居ないのを確認すると、不思議そうに乗り込んで来たね。

『侍女の方は?・・・』

『前に移動しておりますよ。』と、僕は微笑んだよ。

・・・しっかり、メアリーに気が付いていたね。腕は良さそうだね・・・


馬車を出したよ。

『ところで、この夜中に、何処へ行かれますか?僕はベネッタに両親を訪ねて、移動の途中なのです。あなた様は?』 

『私はグラの村まで、賊の討伐の依頼を受け向かうところだ・・・』と、女性の討伐者様は苦々しそうだね。

・・・へぇー、討伐者とはね・・・それも一人なんだね・・・


『僕は、未だ五歳に成らぬ身で、物を知らぬのです。教えて頂きたいのですが・・・賊の討伐とは一人で為さるものなので御座いますか?』

『ふん。・・・いや、本来であれば何組かを集めて十人以上で行うものだ。しかし、今回は人手が足りないからと個人である私もお願いされたのだ・・・しかし、どういう訳か私一人であった。で、仕方なく一人でその村へ向かっている・・・』 

と、女性の討伐者様、怒りが顔に現れたよ。


でも、僕の顔を見ると慌てて、笑ったよ。優しい顔で、僕に尋ねて来たね。

『坊は五歳に成らぬと申されたが、御者の方や侍女の方が居られるとはいえ、旅をするには危険ではないか?』

『討伐者様。知恵憑きという者を聞き及びで御座いますか?』

『確か、生まれた頃より、大人を超える知識、見識を持つ幼子で、忌み児の事であろう・・・』と目を伏せて応えてくれたよ。

『討伐者様は実際に会った事は有りますか・・・』 

『いや、何処ぞの誰それの児は・・・との噂は聞いた事は有るが、実際に会った事は無い・・・』と、興味深げに、僕を見つめているよ。

・・・そうか・・・他にも僕と同じ智恵憑きは居るのだね・・・一応気を付けないとね・・・


『そうでございますか。恐らくは、僕はその智恵憑きでありますよ。クックックッ』と笑ったよ。

討伐者様は不思議そうに僕を見たよ。

『それに、僕は生まれて三か月より、魔力を使えておりましたので、一人でも困りは致しませぬ。』と、更に話したよ。

『う~ん・・・なんと・・・』討伐者様は唸ったよ。

何故なら、魔力は五歳に成らねば魔力の発芽は無いし、二十になって、やっと、実践で使えるように成るんだ、と父さんが話していたな。


『ご両親は、何故に、坊を置いてベネッタに?』と聞かれたよ。

『両親は僕が智恵憑きとは知りませぬ。普通に愛情を注いでくれておりますよ。』と、討伐者様に微笑む。

・・・討伐者様は何か勘違いしているのかな?・・・


『両親はアメリアにおいて商会を営んでおります。半年前に、いつもの通り、ベネッタに仕入に向かい、一月程で戻る予定であったのですが、半年経った今でも、未だに戻って参りませぬ。消息も不明であります。故に、両親の消息を確認しにベネッタまで、跡を辿るつもりで、アメリアを出て参りました。夜に移動するのは目立た無い事と、災難を招かない為ですよ。子供の一人旅は中々に厄介そうですから。』と、クックックッと笑う。

『それは・・・それは・・・だな・・・』と討伐者様が絶句したよ。


『討伐者様。僕の事より、討伐者様が災難に会われている気が致しますよ。恐らく、村も賊達に占拠されて、討伐者様を待っているのでは有りませんか?』

・・・頭に浮かんだ事を言っちゃったよ・・・

討伐者様が僕の顔をじっと見ているよ。

『・・・何故そう思われる?』


『工匠組合の事は分かりませんが、もしこれが商業組合であれば一人で出立させる事は有りませぬ。恐らく、工匠組合に、この件の協力者が居るのでしょう。つまり、狙いは討伐者様になりませぬか?』

討伐者様はじっと僕を見てから、外を見ながら、考えているよ。


馬車は主要街道から逸れて、森の中の道をグラの村方面に向かうよ。

『この辺りで止めて頂けるか・・・乗せて頂いて助かった。感謝する。』と討伐者様が言われたね。

『ここから村まで、それ程の距離では有りませぬ。村までお送り致しましょう。それに、お邪魔にならぬ程に、多少のお手伝いは出来ましょうから。』と、真面目な顔をして見せたよ。

討伐者様は、怪訝な顔をされたが、何も言われないよ。


討伐者様とグラの村に向かっているよ。

森の中を進んでいるよ。

『討伐者様。工匠組合の事はよく知らないので教えて頂きたいのですが?』と僕は尋ねたよ。 


『何をだ?』

『はい。商人は護衛を工匠組合の護衛者の方に頼むことはあるのですか?我が父は商業組合で護衛を頼んでおりましたが?今回はどうであったか、気になったものですから・・・』


『商業組合より工匠組合へ、護衛者を指名依頼により雇われるのだと思う。商業組合にて護衛者を抱えているとは聞いたことが無いからな・・・』

『そうですか・・・工匠組合の護衛者の方は信用は置けますか?』 

『経験、遂行能力を踏まえて、分けてあるぞ。初心者、下級者、中級者、上級者、特別者だ。因みに、私は上級者だ・・・格が上がれば信用度も増すな。それに請負う資格も色々だな。護衛者、討伐者、採取者、捕獲者、作製者などだ。』

・・・しかしね・・・この方の状況を踏まえれば、工匠組合は信用は於けないかもね・・・


三話 完

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