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十九話 会合に向かったよ

フーリンゲンに戻って、数日たったよ。

街から見える、青い海の景色も、見慣れてきたね。


家の居間に居るよ。

父さんには多くの文が届いてるね。挨拶状の返事かな。

『トールスの先代から、援助に対するお礼の手紙が来たよ。迷惑料を、返して貰えるとは思わなかった、って。お陰で随分と楽になったと。それから、もう一人の孫については、じっくり話をして、したい事をさせる事にしたって。それから、歓待するから、一度はトールスに泊まってくれって、書いてあったよ。』と父さんは笑ったよ。


それから、父さんがもう一通の文を見ながら、難しい顔で言うよ。

『半月後のべネッタの会合は一部の領主も参加するらしいよ。きょう、連絡が来たよ。』

『そうなの・・・面倒にならなければ良いけど。』と母さん。

・・・本当に、つい余計な事を言ってしまうんだよね・・・


『父さん、僕は隠れていても良いよね?』

『うーん・・・それが、お会いしたい方がおられるので、ご子息を伴ってご参加をお願いしたい、とも書いて有ったからね。隠れているのが知られたら、信用に関わるから、駄目だね。』と、父さんが首を振る。


『それは、会長のナント商会からなの?』と、僕。

『いや、副会長のモルドス商会の名だね。』

『父さん、僕は、何か聞かれたら、賢しらに答えてしまって、上手く、子供らしく答えられないと思うんだよ・・・』

『それは、構わないけど・・・出来るだけ、話す機会を少なくするように考えるよ。』と、父さんは母さんを見たよ。母さんも、僕に、微笑んでくれているね。


僕はため息が出たよ。

・・・ごめんね、父さん母さん・・・

『うん、父さんと母さんが良いと云うなら、そうするね。』と答えたよ。


それとね、わざわざ手紙が来た事の懸念も伝えたよ。

『今度のべネッタ行きでは、襲われると思うんだ。だからね。夜に移動したほうか良いと思うよ。普通の馬では、夜に馬車を曳かせられないから、僕の馬を出すね。』と話してみたよ。


『グレンは襲われると思うのかい。』と、父さんか驚いたよ。

『うん、だから、わざわざケイロンのナント商会ではなくて、モンパスのモルドス商会から手紙を送ってきたと思うんだ。それに、僕はファンタン商会の代理人でもあるんだよね。ファンタン商会の代表、副代表もしくは代理人を会合に出させないようにしたいと、考えていると思うんだ。』と、父さんと母さんの顔を見たよ。


『そうね。その可能性はあるから、気をつけましょう。』と、母さんが言ってくれたよ。

『そ、そうか・・・』と、父さんも考えているよ。

・・・父さん、一度捕まったよ。二度も捕まったら、何と言われると思う・・・


父さんも母さんも、エルザ姉もエリス姉も、家や店、商品の事、それと人に会ったりで、ここ三、四日とても忙しくしていたよ。香辛料組合の会合で留守にするから、その段取りで大変なんだね。


だから、僕は一人であちらこちら見て回る事にしたんだ。僕は、まだ、ファンタン商会の息子だって、ほとんど知られていないから、気が楽だよね。


で、今日は港に行ったよ。

港は広いんだよ。漁師さん達の場所と、人や荷物を運ぶ場所で別れているんだよ。

漁師さんの所では、素性が知られているから、用が無いと行き難いよね。

だから、人や物を運ぶ区域の船舶会館に寄る事にしたよ。二階建てだね。二階は定期便の待合所があるね。一階は船の寄港手続きとか、寄港料を徴収する事務所だね。


僕は定期便の待合所にいるよ。

待合所はからは海が一望だね。定期便の桟橋も見えるよ。

ここにいる人達も情報は大切だから、大人々は気軽に誰とでも挨拶するし、世間話をするんだよ。


ササビーの人かな?衣装の美しい人がいたよ。

その人が話すんだ。

『立太子の祝宴以来、皇帝は表にも出て来ないし、政務もしていない。何をしているんだ・・・でも、賢い皇太子がいるから安心だよ。ただ目が赤くなる程、忙しいから心配だな・・・』って。

・・・目が赤いのは、心配だよね・・・


後は海賊の話と天候の話だね。香辛料組合の会合の話も聞こえたね。3半と五半、それに十とか十一とか、何だろうね。


次の日には、商業組合にも行ったよ。

商業組合の作りはどこも一緒だって。確かにアメリアの組合と変わらないね。待合室は人が多いよ。他の地から来た商人々には色々手続きや依頼、商人同士の交渉もあるからね。


自分はモッティから来たという人が、この地の商人に訊いているね。

『・・・以前、香辛料の価格が一時的に上がったり下がったりしたんだが、この地も同じ事はありましたか・・・』

『いや、この地では不足した事はあったが、価格に変動は無かったですよ・・・。不足も、ファンタン商会が来てから、不足する事はなくなりましたね・・・』

・・・母さんに、香辛料の価格は西方地域二十家では一定と聞いたよ・・・


後は、何処の地が不作だとか、アメリアの麦は変わらず豊作だとかそれにしては、アメリアは物価が高いとかだよね。

・・・アメリアって物価が高いのか・・・


続けて、船舶会館や商業組合に行くと気が付いた人に訝しがられるから、次は広場だよ。


広場の屋台にいると、食事依頼を受けたい人と、依頼したい人がわかるようになったよ。だから、衣装から、他地域の人や、到着して間もない人に声を掛けたよ。


そういう人達からは、各地の面白い話が色々と聞けたよ。

カンジナビア大公国が、西方神宝教会の布教を認めたと云う事もその一つだね。それで国教と言われていた北方正教会と大公家が不仲になった、だとかね。


今日の深夜に出かけるよ。会合に遅刻すると大事になるから、一日早く到着出来るようにしたよ。


三日前からだよ、エルザ姉とエリス姉がね、見張りを見つけたよ。五組もいるんだってさ。

とても怖いんだけど。だって、僕は五歳だよ。五組は襲って来るのかな。


深夜前には出発したよ。流石に見張りはいなかったよ。けどね、エルザ姉とエリス姉は夜の移動に、不安そうだね。母さんは気にしていないね。父さんは二回目だから落ち着いているよ。御者台は空席だね。


今はね。少し、早く駆けてるよ。見張りが居たからね。用心のためだね。


皆は揺れない馬車に、うつら、うつらしているよ。

その間も、馬車は駆けて行くよ。検問所を抜けて、ケイロス領を、カンター領目指して駆けて行くよ。

ケイロスの領都ケイロンの広場で休憩だね。街の門に、衛士はいたけど、簡単に通してくれたね。しっかりと馬車を見ていたけどね。


僕はケイロンの街を見てみたかったけど、馬車から出なかったよ。エルザ姉とエリス姉が屋台に行っただけだね。その間は、キンバリーとメアリーを出して、警戒していたよ。エルザ姉とエリス姉は、物珍しい料理は無かったって残念がってたね。


昼の、街中の広場だよ、人は多いからね。特に、襲われる様な事やその気配は、何もなかったね。ただ、見張りはいたけどね。


ケイロンを夕方に出たよ。ゆっくり走らせていたよ。

するとね、僕たちを追っかけて来る者がいたよ。殺気だっているのが感じられたよ。

僕達は少々焦ったよ。追っかけて来る人数が、三十人以上いたんだよ。

『おい、その馬車、止まれ・・・』

って声が聞こえたよ。

だからって、止まる訳にいかないよね。

僕は速度を上げたよ。だって、争うのは嫌だからね。

途中からみえなくなったよ。捕まえるのは諦めたようだね。


朝方にはケイロスとカンターの境に着いたよ。ケイロスの境でも、カンターの境でも何も言われなかったよ。それぞれ、衛士はいたけどね。

無事にカンター領に入れて良かったよ。


カンター領からジルバ領、そしてベネッタ領に、無事到着したよ。移動中に、僕達を襲ったのは、ケイロス領だからだね。他家の領地では諦めたんだね。


香辛料組合の本部はベネッタだよ。組合長が変わっても変わらないんだって。組合長は二年の選挙制だよ。変わった組合長の度に、本部が移動するのは大変だよね。


会合が行われる建物は、円形だよ。広間に置かれているテーブルも円形で、四重に置かれているね。其々、二十に別れているよ。席は全て固定なんだって。一番の内側は商会の代表が座る席だよ。その外は、家族や付き添いだね。その外には護衛用もあるんだね。。

その商会の護衛の外には、領家の席だよ。勿論、領主の護衛が立てるように、広くなってるよ。

領主も偶に、討議の様子を確認する為に、観覧することが在るんだってさ。


そして、大事なのは、出入口が二十有り、扉は無いんだよ。いつでも退去は自由に、拘束は無いよ、という事らしいんだ。建前はね。


そして、その建物の周りの土地は、芝生が広がってるね。

建物から放射状に石の道で区切ってあるよ。皆が馬車を置いているよ。

宿は取らないんだよ。全て、馬車、もしくはテントで済ますのさ。


父さんは、ハンセン家の割り当てに馬車をおいたよ。ハンセンの商権はファンタン家が確保している事を示す姿勢だね。でもね、アシリアの当主は良い顔をしてなかったね。


領家は五つの領主が来ているね。

アシリア、レンティア、ゴルシア、ベルンにフーランだね。

可怪しいね。僕は、もう少し、多くの領主が集まると、思っていたんだよね。でもね、きっと隠れていると思ったよ。それぞれ、面子が在るからね。 

でもね、僕の挨拶が少なくて良かったよね。


会合は明日なのさ。

しかしね、明日の会合開始まで、領家の当主と会話する事はしないんだって。それと、商会同士は会合を終えてからなんだって。

つまり、事前の打ち合わせはしていませんよ、自分の意見ですよ、と云う事なんだって。ただの建前なんだろうけどね。

僕にとっては、大変有り難いよね。一人一人への挨拶が短くて済むからね。

・・・でもね、会合が終わってからは自由なんだって・・・


十九話 完








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