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十四話 母さんに会えたよ

僕は部屋に戻ったよ。

父さんは軽く体を動かしていたよ。

『船はいつ出るか分かったかい?』と、父さんが聞いて来たよ。

『今は、海賊が島を占拠してるんだって。だから、定期便は止めてるって。』

『うん・・・では、もしかしたら、母さんも島から出れていないかもしれないな・・・』

『うん、それでね。ファンタン島に行くにはどうしたら良いか聞いたんだ。そしたら、漁師さんか、船主さんに頼むしかないって。』

『そうだろうね・・・』

『で、今から港に行って見るね。』

『父さんも、行くよ。』

『父さん、あまり調子良くないでしょ。それに、子供一人なら、引き受けてくれるかも知れないよ。』と、僕は笑ったよ。

『そうか・・・じゃ・・・気をつけるんだよ。』

『うん。』


港に来たよ。

桟橋も見えるね。

確か前に泊まった時にも、いくつもの中小の船が見えたし、今も見えるよね。でも動かないのかな?


港の端に漁師さんらしき人が座っているね。何処かの島を見ているのかな?

・・・聞いてみよ・・・


『こんにちは、少し、お聞きしたいのですが、良いですか』と、丁寧に聞いたよ。

『随分、丁寧だな・・・何だ?』と男の人が答えてくれるよ。


『あそこにいる船は何をする船なのですか?沢山、停まっていますよね。』

『ああ、あれは停泊中だな。海賊がいるから、出せないんだよ。』と、漁師さん。 

『実は、ファンタン島に行きたいのですが、行ける方法は有りませんか。』

『坊主はファンタンに行きたいのか・・・今は無理だな・・・あの辺は、海賊が出てるからな・・・』


『では、海賊に出会っても、ファンタン島に行く流れとか、有りませんか?』

『坊が海流の事を知っているとはな。残念だが、そんな流れは無いな。』と、応えてくれたよ。


『坊は何で、そんなにファンタンに行きたいんだ?』

『はい。僕はファンタンなので・・・アメリアから母を探してここまで来たのですが、島に母が居るか、確認に行きたいのです。もし、居なければ、他に探しに行かなければならないので・・・』

『そうか、坊はファンタンか?母親の名前は?』

『グレース・ウォーター・ファンタンです。』

『グレースの息子か、何とかしてやりたいが、俺も、船が壊されて、帰れないからな・・・』


『船は買えますか?』

『ああ、中小の船は買える。しかし、それでは海賊に、囲まれたら終わりだぞ。』

『大型船ならば大丈夫ですか?』

『ああ、大型船なら、波が立つから、寄られないな。』

『それでは、夜に、大型船を持ってきます。それで、夜でもファンタンに行けますか?』

『ああ、大型船なら夜でも、大丈夫だ・・・』と、漁師の人が驚くよ。

『大型船を持っているのか?』と聞いてくる。

『ええ。それで、海賊を討伐するにはどうしたら良いのでしょうか?』

『・・・』漁師さんは考えているよ。


『例えば、海賊を捕らえる。船を沈める。本拠地を攻める、などでは、駄目でしょうか。』

『駄目ではないが・・・その中で簡単なのは、船を沈め、捕らえる、だな。』と男の方が言われる。


『ところで、その大型船は、どうして手に入れたのだ?』と男の方が聞かれるよ。

『はい。ベルマル沖を漂っておりました。船員がおりませんでしたので、貰って、ある島に泊めてあります。エッヘッヘッ。』と僕は笑ったよ。

漁師さんは呆れているよ。


ファンタンの漁師さんと、細かい話をして別れたよ。

その漁師さんも一緒に行ってくれるよ。

夕方になっていたね。

海の上に広がる夕焼けも綺麗だね。


宿に戻ったよ。父さんと夕食だよ、嬉しいな。一人より二人だね。二人より三人が、尚、良いけどね。


『父さん。ファンタンに行ってくれる漁師さんが見つかったよ。』と、父さんに話したよ。

『そうか・・・それで、いつ行くのかな?』

『今夜、深夜過ぎに向かうんだ。だけど、心配しないでね。大きな船で行くからね。』


『出来れば、父さんも行きたいが・・・』と、父さんの顔が蒼いよ。

『大丈夫だよ、父さん。今迄も、一人で上手く出来てきたし、それに、その漁師さん、母さんの事、知っていたよ。』と、伝えたよ。


『そうだな・・・でも、危険な事は駄目だよ。』

『うん、分っているよ。』


深夜前だよ。港から、椅子に乗って、沖合に来たよ。そこで、大型船を出して乗り込んだよ。キンバリーとメアリーも出しておいたよ。キンバリーは操舵室に、僕とメアリーは船首だよ。


で、ゆっくりと走らせ、大型船を港に入れたよ。

これを見て、驚いているよ、漁師さん。

錨を降ろしたよ。階段をどうするか、考えたよ。


『綱を降ろしてくれ。』と、漁師さんの声が聞こえたよ。

で、周りを見ると、太い綱が、繋いで巻いてあったよ。その綱の端を船の外に放り投げたよ。

すると、漁師さん、綱を捕まえ、引っ張って、繋いであるのを確認すると、綱を握って、するすると登ってきたよ。そして、看板に飛び乗って来たよ。


『す、凄いね・・・』と、僕は声を上げたよ。


『これぐらいはな。漁師は一人の時が多いから、なるべく自分で出来るようにしておかないと、命に係るからな。』と、厳しい顔で言うよ。

漁師さんは、キンバリーとメアリーを見て、

『お前さんも、色々出来るだろう?』と僕を見るよ。

『僕にはキンバリーが居るからね。キンバリーは何でも出来るから・・・』と、答えておいたよ。

・・・知られたかな・・・


僕と漁師さん、大型船でゆっくりと、ファンタン島に向かっている。

船は帆も出していないのに進んでいる。あまり気にしていないよ、漁師さん。

・・・どうしてかな?漁師さんも、能力で、船を動かすのかな・・・


漁師さんの指示で航路を移動させて行くよ。

平穏無事だよ、夜の海。陸地の夜と同じだね。風も無ければ、波も穏やかだよ。魔物も海賊も出ないね。順調に進んで行くよ。


操舵室に居る僕と漁師さん。

漁師さんが言うよ、

『坊、これはケイロスの船だな。ここに飾ってある旗はケイロス家の紋章だ。捨てるか、隠すか、外しておけ。』

『そうなの・・・ではケイロスに返したほうが良いのかな』

『いや、ケイロスはフーランの物は返さないから、ケイロスの物は返さなくて良い事になっている。だから、この船は坊の所有で大丈夫だ。もし、ファンタンの家紋があれば貼っておけ。』

・・・うん、ケイロスは父さんの事もあるからね・・・


海に日が昇ったよ。ファンタン島も見えて来たね。

・・・母さん、居るかな?居たらいいな・・・

ファンタン島の桟橋も見えたよ。船の汽笛を鳴らしたよ。

・・・僕らは味方だよ。・・・


大型船、ゆっくりゆっくり動かすよ。

ファンタン島の桟橋に、無事に横付け出来たよ。

もう一度、到着の汽笛を鳴らしたよ。とても、大きな大きな音なんだね。島の皆も集まって来たよ。

固定の縄を降ろしたよ。島の人が留めてくれたよ。

漁師のおじさん、手を振るよ。

『ジョン爺!凄いな。どうしたんだ?』と島の人が聞いてるよ。

・・・ジョン爺って言うんだ・・・


とても大きな船なんだ。島の皆が小さいよ。一生懸命探したよ、母さんは何処だろう。船の階段、降ろしたよ。


見つけたよ母さん、やはり、島に居たんだね。とっても嬉しいよ、今行くよ。船を降りて走ったよ。


あれ、母さん二人いるのかな?

一人は少し、若いかな。

危なく隣のお姉さんに、飛び込むところだったけどね。しっかり、母さんに飛び付いたよ。

後で聞いたら、母さんの従姉妹で護衛の人だって。


『母さん、探したんだよ。それも一人でだよ。やっと、会えたよ、母さん。無事で良かったよ。』と、やっぱり、僕は泣いたよ。

・・・父さんと同じ言い方になったけどね・・・


『グレン、良く来れたね。会いたかったよ。』と抱いてくれたよ。母さんも、とっても嬉しそうだよ。


母さんは、僕の事はね、キンバリーとメアリーが居るから大丈夫って、自分に言い聞かせていたって言ってたよ。船の上の僕を見た時は、似ているな、位にしか思わなかったって。だから、僕が走って来た時には、とてもびっくりしたって。


僕はね、此処に来るまでに、色んな事が遭ったから、間に合わないんじゃないかってとても心配してたんだよって、母さんに言ったよ。

『良かったよ、父さんにも母さんにも会えて・・・本当は諦めていたんだよ。』と、僕は涙を拭いたよ。

母さんは、抱きながらら、僕の背中を撫でて、くれていたよ。


少ししてね、僕は落ち着いたんだ。

そしたらね、母さんが心配そうに聞くんだよ。

『グレン、あの船はどうしたの?』

『母さん、あの船はね、漂流していたケイロスのだよ。でもね、父さんが、ケイロスの鉱山で半年も働かされていたんだよ。だからね、返すのを止めたんだよ。』と、応えたよ。

『父さんは、大丈夫なの?』と、母さんの顔が少し曇ったね。

『うん、ちょっと弱ってるみたいだけど、宿で療養しているからね。でもね、大丈夫だよ。』と微笑んだよ。


『それからね、船に沢山の荷があるから、島の人達で分けたらいいよ。島の人も、困っているんでしょ?荷は見ていないから、何が有るか分からないけどね。』と僕が言ったんだ。

『えっ、いいの?』と、母が驚き、聞いてくる。

『落とし物だからね。海賊が島に迷惑掛けているけど、その海賊だって、ケイロスが裏にいるかもしれないからね。』と、僕は答えたよ。


『荷を降ろし終わったら、僕は海賊に、お願いして来るね。小島から出て行ってねって。』

『グレン。母さんも行くわ。』

『母さん。大丈夫だよ。キンバリーもメアリーも居るからね。それに、今までも、一人で出来たからね。』と笑ったよ。

母さんは、キンバリーとメアリーって名を聞いて、変な顔をしていたけど、直ぐに、ちょっと怖い顔になったよ。何か言いたいのかな。

・・・母さん、何で怖い顔なの・・・


島の皆が、荷を降ろしてくれたよ。

海には、船が沢山見えるよ。あれは海賊船なんだって、母さんが教えてくれたよ。


僕は船に乗って、動かすよ。

ゆっくり、ゆっくり、船を出したよ。桟橋を壊さないようにね。

僕の動かす船に、海賊船は付いてきたよ。


十四話 完


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