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十二話 船を拾ったよ

そろそろ日が昇るんだね。ベルマルまでは夕刻には着けるかな。他の馬車には行き会わないね。

・・・やはり、砦のせいかな・・・


夕刻に、ベルマルの入口の門に着いたよ。まだまだ明るいね。

向かって、右側は海、左側は垂直に近い岩の壁、そんな広くない所に門を作って警備しているんだね。

その門は鉄の板だね。頑丈そうだよ。高さは大人三人分もあるよ。

しかし、どうやって開けて貰うように連絡すればいいのかな?見た処、何も無さそうだよ。


よし頑張って、伝えるよ。

まず、大声で呼び掛けてみたよ。

『誰か居ませんかー、街に行きたいのですけどー』

でもね、暫く待ったけど反応が無いよ。

次に、石で叩いたよ。

『がーん、がーん、がーん』

しかし、誰も来ないんだよ。


越える事は出来るけど、向こうの様子がわからないと、危険だよね。入ったは良いけど、捕まったり、大怪我でもしたら、父さん母さんに会えなくなるから、気を付けないとね。

・・・父さんと母さん、元気にしているかな・・・


ベルマルは港街なんだってさ。絶壁の岸に囲まれているんだって。街並みを見たかったけど、仕方ないよね。

何故、砦を作ったのか、分かった気がしたよ。

多分だけどね、ベルンの分家はね、ベルマルを確保するのがやっとなんだね。だから、砦を作ったんだね。

・・・でもね、閉鎖して、食べ物とかどうするんだろうね・・・


で、僕はね、街道を戻ったよ。海に降りれる所までね。

馬車をしまってね、岸壁を椅子に座って降りて行ったんだよ。簡単だよね。海辺に着いたよ。波は穏やかだね。


すると、岸壁の陰に、大きな船が停まっているよ。人は居ないみたいだね。漂流したのかな?船の横に、擦った跡があるしね。船の色は黒いね。何となく、良くないよね。


船に乗り込んで見たよ。なんせ、僕は、椅子に乗れば、浮くからね。

船員さん達は、居ないみたいだね。船首に行ってみたね。回りを見回したよ。

・・・錨を降ろしてないな・・・

と僕の頭に浮かんだよ。錨?重しかな。


船の中を見て回ったよ。操舵室から船室へ。船室は沢山あるね。広いのから狭いのまで。下に降りたよ。倉庫も広いね。厳重に荷造りされた箱が、半分くらい占めているね。

舵倉のどこも、壊れて、穴の開いてる所は見当たらないね。良かったね。


僕は、船から岩場に降りたよ。

漂流船ならいいよね。

・・・仕舞えるかな、大きな船だからね。仕舞え無い場合が、どの様になるか知りたいんだよね・・・


・・・な、なんと。仕舞えてしまったね。・・・残りはどれくらい、仕舞えるかな、船は仕舞っておこう・・・


辺りは、すっかり暗くなったね。

僕はね、浜の岩場に隠れながら、ベルマルの街に向かったよ。

でもね、知られないで、街に入るのは無理だね。港の桟橋の辺りは明るいね。数人の人が見回りながらしっかりと警備しているよ。

侵入者を警戒しているのかな。


だからね、深夜にベルマルの街に沿って海を渡って行く事にしたんだよ。街を通り過ぎてから、岩場を登って街道に出たよ。馬車を出して、休んだよ。

朝まで、まだ時間は在るね。もう一度、船の荷を確認してみたよ。

仕舞ってある物は、頭に映像として浮かぶんだよ。

なんだろね。塩とか砂糖、野菜に肉、お酒とか生活用品が多いね。やはり、船の事は内緒だね。


朝の街道を、フーラン家の領地に向かうよ。

フーラン家はベルン本家とは友好的で、その先のケイロス家は分家を支援していると、バリアス様が言ってたね。


フーラン領も海辺に面していて、平坦な地なんだよ。だから、街道も通り易いのさ。

でもね、ベルン領の砦の手前の副路はね、山岳地帯を通って、曲がりくねりながら、ケイロスの地に入る難路なんだよね。だから、皆、通り難いのさ。


フーラン領の境界で衛士いるよ。でもね、何事も無く入れてくれたよ。衛士の方々は驚いてはいたけどね。

衛士の方は半年前のファンタン商会の通過を覚えていたよ。

そこで父さん母さんの様子を聞いてみたよ。

両親と護衛が四人と教えてくれたんだ。特に、変った様子はなかったとも言っていたね。少し、安心したよ。


境界からフーリンゲンに向かったよ。

フーラン家の領都フーリンゲンも港街だよ。街道は海の際を通って街に入っていったよ。特に門や検問はないんだね。

街から見える港には、中小の船が行き交っていたね。街道を封鎖されても、それ程の影響は無いように感じられたよ。


ファンタン商会御用達の宿を探したよ。

ぼくも久々に、宿に泊まるつもりだよ。

宿は二軒目で見つかったよ。外からは、門が小さいから、小ぢんまりとした宿に見えたよ。でも、中は広いんだね。幾つかの棟が有るんだね。庭も広そうだよ。最初の棟に入ったよ。受付と待合室だね。

受付に、落ち着いた年のお姉さんがいるよ。


『こんにちは。僕は、グレン・ウォーター・ファンタンと申します。半年程前に両親がお世話になっていると思いますが、それは間違いないでしょうか?それと僕一人なのですが、泊めて頂きたいのですが、可能でしょうか?』と、お姉さんに訊いたよ。商業組合の証明書も見せたよ。


お姉さんが、じっと僕の顔を見ているよ。

そして、微笑んで言ってくれたよ。

『確かに、グレース様に、よく似ておられますね。ファンタンのご子息様なら、お一人でも大丈夫ですよ。それと、確かに、半年程前にベネッ夕への途中だと言われて、お泊まり頂きました。が、今回は、未だお戻りになられておられないようですね。』


父さん母さんは、もっと先なんだね。少し、気落ちしたよ。

でも、母さんに似ている、と言われてとても嬉しいよ。


部屋は海の見える広い部屋だね。宿の人が、父さんと母さんが、普段泊まる部屋だと言ってたよ。窓からは、海が一望だね。空の青さと、海の青さは違うんだね。とても綺麗だね。

幾つも、緑の島も見えるんだね。食事も子供用でとても美味しかったよ。石の風呂も広かったね。


午前の半ば、宿を出る時に、念の為、受付で聞いてみたよ。

父さんたちは街道を使ったのかなって。

すると、たまに、母さんだけ、船で、島を回って、べネッタまで行くんだって。

前回も、船での予約をされていたから、船で行かれたと思う、と教えてくれたよ。


とても、驚いたよ。母さんだけ船って、何か在るのかな。

やはり、来て、見て、聞いてみないと分からないもんだね。


で、考えたよ。

先に父さんを追うか、母さんを追うか?

街道ならば、追いつける可能性があるから、父さんを追う事にしたよ。  

でもね、少し心配なんだ。ケイロスはフーランと仲良くするつもりはないからね。すんなりと入れてくれるかね。


海沿いの街道を東に、ケイロスの境界に向かったよ。朝に宿を出て、ケイロスの境界にはね、昼頃到着したよ。

何やら、検問所が騒がしいね。

ケイロス領から、戻って来た人達が怒っているね。


僕は、少し離れて聞いたのさ。

法外な通行料を要求されて、逃げて来たんだって。中には捕まった人達もいるらしいよ。商会の人々は、皆、捕まっているんだって。

・・・父さんもかな?・・・ 


この件の事は、フーラン家では申し入れしか出来ないと、衛士さん達が説明しているよ。でもね、ケイロスからは音沙汰が無いって言っているね。組合から言って貰うのが良いって、言ってたよ。


僕は、本当の処に気が付いたよ。

ケイロン家がベルマルを封鎖する事で、フーラン領の封鎖をしたんだね。何か、恨みでも在るのかな?

とても、迷惑だよね。


・・・また、海から侵入しようかな・・・ 

『クックックッ』と、思わず笑いが出たよ。海の上は楽しかったのかな。


馬車と馬、キンバリーとメアリーを仕舞ったよ。椅子に乗り、海岸に降りて行ったよ。念の為、黒の帽子を被ったよ。


ケイロス側に入ったよ。岩場を進んで行くよ。 

岸の上に人が見えるね。こちらを、指を指して何か言っているよ。

『あらら、見つかったね。どうしようかな・・・』

・・・そうだ、魔物の被り物を作っていたんだっけ・・・


魔物の被り物を被ったよ。猪の顔に鹿の角、木造の牙は二本だよ。虎の皮が躰だよ。

『びっくりしてくれるかな。クックックッ』


岸の上の人が、慌てて走って行くよ。

僕は、被り物を仕舞ったよ。そして、フーラン領に戻ったよ。

・・・しまったな、油断したな。夜にすればよかったな・・・


僕は、フーラン領の検問所から離れた所で待機したよ。

深夜になったね。検問所に行ったよ。検問所に灯りはあるけれど、人影は無いんだね。フーラン側からは問題なく通れたよ。 

・・・ケイロス側はどうだろう・・・


やはり厳重な二十扉だね。でもね、僕は物使いなんだよ。何処からでも入れるんだよ。見張り所にも死角は有るからね。

そこから、飛び越えたよ。

夜は、人も出ないんだね。


ケイロス領の検門所の見える所に居るよ。ここで見張っていないとね、捕まった人が何処に連れて行かれたか、分からないからね。念の為、そこで父さん達を探してみるよ。居ないと嬉しいんだけどね。


十二話 完


訂正 第十二話→十二話

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