五芒星
目の前に亡霊が現れ、惜しくも父が斬られた。
あたりは霧に包まれ、四つの五芒星が月光に反射し、輝いた。
〈五芒星〉
霧が濃くなる。
あたりを見渡すと兄、母がいなかった。
「お母さん!智兄!」
歩いているとカンッ!という音が足元で鳴った。
足元を見ると金色に光る五芒星の形をした何かがあった。
もしかしたら、夢斬の鍔かもしれない。
五芒星の形のした何かをショルダーバッグに入れ、再び歩き出した。
すると近くから声がした。
「智ー!雪ー!」
母の声だ。
「お母さん!」
「雪!」
母と合流する。
それにしても不思議だ。
さっきまで一緒にいたのに。
これも白昼夢のものなのだろうか?
「そういえばさっきこんなの拾ったのよ」
と母は言い、カバンの中から何かを取り出す。
それは自分もさっき拾った五芒星の形をした何かだった。
「それ、私も持ってるよ。...ほら、これ」
と話していると足音が聴こえた。
「?もしかして智兄?」
「智!大丈夫かい....え?」
そこに現れたのは智ではなく、''亡霊''だった。
「なんで!?あの音が鳴らないと出れないんじゃないの!?」
いや違う。
さっきは確かに姿を消したが、その時走る足音がした。
つまりこの亡霊は消えず、潜んでいたのだ。
亡霊は同様に刀を振り翳した。
「キャアアアアアアアアアア!!」
ザシュッという音とともに宙に紅いものが散った。
目の前で母は倒れ、あたりが血で染まった。
足が動かない。
目の前では刀についた血を飛ばし、私に振り翳している亡霊がいた。
足は動かない。
逃げないと。
『キィィィィィン!!』
刃と刃がぶつかる音がした。
目を開けると、目の前には力いっぱいに押し返そうとしている兄がいた。
「智兄!」
「早く逃げろ!」
「でも!」
「早く逃げろってんだろ!」
「!!!」
足が動いた。
走ると目の前には箱館奉行所があった。
そこに身を潜め、待った。
中に行くと微かに刺している月光に反射しているものを見つけた。
五芒星の形をした何かだった。
すると足音が聴こえた。
そこには智兄がいた。
「色々話すことはあるが、とりあえず俺はこれを見つけた。
おそらくあの書物に出てきたものだ」
といい、智兄は二つの五芒星の形をした何かを持っていた。
自分もそれをショルダーバッグから取り出した。
五芒星の鍔が揃った。
刀に鍔を嵌め込んだ。
一つ、二つ、三つ、四つ。
ドンッドンッ
太鼓の音。
シャンシャンとなる三味線の音とビャンビャンとなる弦楽器の音。
奴が来たのだ。
あたりの霧は晴れ、刀は月光に反射し、眩しく輝いた。
〈五芒星-終-〉
五芒星。