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五稜星  作者: 本堂 咲京
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十慈

両親の目の前に現れた亡霊。

五稜郭に響いたのは鋭い刀の斬撃音...

紅い液が宙を舞う...

〈十慈〉

土方歳三は最期、一人で参謀府に刀一刀を持って駆け抜けた。

馬上から片手で刀を振り回し、次々と兵どもを斬り捨てていった。

新政府軍が土方歳三に気づくと射撃姿勢を取った。

砲煙と共に土方歳三は兵どもの頭上を馬で跳んだ。

着地した瞬間にしたドンッという鈍い音と共に土方歳三は馬上から倒れ落ちた。

数秒後、土方歳三の羅紗服が紅色の血で濡れ始め、

そこにいた兵どもはこの瞬間にこの敵将が死んだことを知った。

そして目の前に広がった光景は土方歳三が両手で刀を振るい、

十字を描いて紅色のインクを飛ばしていたもの。

数秒後ドンッという音と共に父は倒れ、あたりが血の海になった。

足が震えた。

目の前にいる父を殺した亡霊のに足が竦み、歩めない。

そこで先に行動をとったのは兄だった。

「ッッウァァァァァッッ!!」

兄は叫び、私が持っていた刀を取り走った。

「殺してやる!!」

兄は刀を鞘から抜き、亡霊に向かって一太刀を振るった。

だが、亡霊をすり抜け亡霊は姿を消した。

「父さん!」

母が父のもとに歩みより、私も歩んだ。

兄も刀を鞘に収め駆けつけた。

「ハハハ...所詮これは夢...夢から覚めたら..生きているだろう」

父が言っている通りこれは白昼夢という夢。

「もし父さんが生きてなかったらどうすんだよ!」

だが、これは普通の夢ではない。

本当に生きているかはわからないのだ。

「心配するな...あとは...頼んだぞ...智」

父は全員に看取られながら絶った。

「あゝ、任せてくれ」

全員は眼に雫を溜めながら喘ぎ、喚いた。

あたりは霧に包まれ、時雨が注いだ。

星は紅く、輝いた。

〈十慈-終-〉

和泉守兼定。

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