亡霊の鬼
ドン、ドンとなる太鼓の音。
シャンシャンとなる三味線の音。
そしてビャンビャンとなる弦楽器の音。
この音と共に現れたのは...亡霊?
〈亡霊の鬼〉
太鼓の音。
シャンシャンとなる三味線の音。
そしてビャンビャンとなる弦楽器の音。
ザッザッザッ。
茂みを歩く足音がする。
その音の方向を見るとそこは義豊と書かれた墓の前からだった。
墓の前には洋装でオールバックの髪型をした男が立っていた。
服は紅に染まっており、腰には愛刀をかけていた。
すると、
キーーン。
刀を抜く音と共にその男は刀を抜き鬼の形相で構えていた。
「キャアアアアア!!」
「お母さん落ち着いて!」
と言ったところで落ち着けるわけがない。
バッ。
茂みを蹴る音。
その男は兄の前で刀を振り翳していた。
「智兄!」
ギギギギギギギ...
だが、兄は茂みを蹴る音と同時に咄嗟にお土産で買った木刀で防いでいた。
「クソが...力強すぎだろ...!」
少し兄が押し負けている。
「おらあああああ!!」
父が拳で加勢しに行く。
父はこう見えて、空手は黒帯だったのだ。
父の素早く力が乗った拳にはさすがの男でもよろめいた。
すると男が口を開き、
「まさかこれ程とはな...だが心配するな。必ずその魂は、裂く」
その声と共に男は霧となり消えた。
「二人とも大丈夫!?」
母が父と兄に確認する。
「うん、大丈夫」
「その歳であんな拳を振るえるのはおかしくない?」
「はははは!まだ現役だぞ!」
「んな嘘つかなくていいって」
こんな雑談をしているが....
「でも、そんな話してる場合じゃないんよね...」
母が言う。
「あの男の人一体なに?」
「おそらく...」
兄は解ったようだ。
「幕末、明治維新にかけて活躍した新撰組の中で、
副長と呼ばれる地位だったと呼ばれる...」
「あ!もしかして...!」
「土方歳三の亡霊だ」
〈亡霊の鬼-終-〉
義豊。