白昼のゆめ
義豊、かつて新撰組で活躍した鬼の副長"土方歳三"の墓の前に突き刺さった刀。
"夢斬"と書かれた刀を抜くと雪と家族は謎の電流により、
白昼の夢へと迷い込む。
〈白昼のゆめ〉
・・・・・・・
「ハッ!」
寝ていた...?
いや、私は刀を引き抜いてそれで....
その先の記憶がない。
私はその墓の前で倒れていたようだ。
すると手に力を込めていることに気づいた。
手が無意識にも刀を握っていた。
立派な刀で、真新しく見える。
鞘には何やら文字が刻まれており、『夢斬』と書かれていた。
ゆめきり...?
なんて読むかはわかんないがそれしか書かれていなかった。
普通、刀は〇〇守〇〇とかではないのか?
ふと、周りを見渡してみた。
遠くに両親て兄の姿が見えた。
そして周りは来た時はなかった霧が出ていた。
何があるかわからなかったのと、怖さが勝ち、刀を持っていってしまった。
「智兄〜!お母さ〜ん!お父さ〜ん!」
「雪〜!」
お母さんが私に抱きつく。
「雪〜大丈夫だった?」
「私は大丈夫だよ。それより、お母さんたちは?」
「俺たちは電気みたいなのが急に来て倒れたんだよ」
「私も!....」
(いや、これは私のせいだ...あの時刀を抜いてなければこうはならなかった...)
「とりあえず五稜郭から出よう!何が起こるかわからん」
お父さんが言った。
「そうだな。出口に向かうぞ!」
私たちは素早く走った。
五稜郭には二つの出口があり、私たちはその一つ、
半月堡へ向かった。
行くと、門が閉まっていた。
...ん?門?
「まだ希望を捨ててはだめだ!まだもう一つある!」
兄が言い、私たちは反対側の出口へ向かう。
「...くそ!こっちもだめか...!」
こっちの門も...いや...私たちが来た時門なんてなかったよな...?
というかまず五稜郭に門は存在しない。
どういうことだ...?
私はそのことを話した。
するとお父さんが口を開いた。
「もしかしたら...あれの可能性があるな...」
とお父さんが言う。
「あれって...?」
お母さんが聞く。
「......」
「なんだよ、勿体ぶらずに言えよ」
「.....む...」
「は?」
「白昼夢....だ」
「はくちゅう...む?ってなに?」
お母さんが言う。
「は...?嘘だろ...?」
「智兄!白昼夢ってなに!?」
「白昼夢...それは日中、目が覚めたまま空想や想像、幻を夢のように
見る非現実的なものだ。だが、なぜ俺らが一斉になったんだ?」
(もしかしたら...)
「もしかしたら、私がこの刀を抜いちゃったからかも...」
「なんだその刀?」
「夢斬っていう刀。義豊って書かれてるお墓の前にあって...」
「...は?夢斬?嘘だろ?」
「智、なんかわかるの?」
「夢斬は、数百年前に存在されたとされる呪物。言わば妖刀だ。
しかもその夢斬は呪物の中でも最高峰のランク、特級呪物ってやつだ。
昔、その刀でこの函館の地にいた鬼を討ち取って封印されたはず」
「智兄めっちゃ詳しくね?」
「まぁ、こういう系好きだし」
「智、じゃあなんでこれがここにあるの...?」
お母さんがいう。
「刀を封印した人は刀を封印する時、刀と契約を交わした。
その契約は、次、この函館の地に鬼、妖怪が現れた時、封印を解く」
「じゃあ、まさか...」
ドン、ドン。
太鼓の音。
シャンシャンとなる三味線の音。
そしてビャンビャンとなる弦楽器の音。
この音は...?
〈白昼のゆめ-終-〉
夢を断つ。