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ユグドラシル大陸戦記 天翔る碧眼の竜騎士  作者: 風花 香
第一章 戦乱への序曲

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二十三 謎の騎馬隊

 レオンとペドロサは数十合に渡って打ち合ったが、実力は伯仲しており決着がつかない。

 となれば、やはり数で大きく劣るカナン軍は、次第に劣勢に追い込まれていき、徐々にマナリア軍の波に飲み込まれようとしていた。


「キミが抑えられてちゃあ勢いも殺されちゃうよねぇ。どうするの? このままじゃ全滅しちゃうよ?」


 レオンはギリッと奥歯を噛みしめる。

 打ち合ってわかった。人を食った態度のこの男、一筋縄で倒すこと能わない。偃月陣の突破力を止められては、側背に回り込まれ全軍がすり潰される。何か突破口はないのかッ?


「迷いは剣に出るよねぇ〜」

「ぐっ!!」


 ペドロサの斬撃がレオンの剣をすり抜けた。レオンが纏う銀鋼鎧(ミスリルメイル)の隙間から血飛沫がまう。


「へえ、致命傷を与えるつもりだったけど、あそこから半身躱せるんだ」


 血を見て更に激高するかと思われたが、レオンは斬られたことで逆に冷静さを取り戻す。

 

「ゴッタ伯! この場は危険だ、卿は後方に下がられよ」


 戦いの心得の無い宰相を、危険から遠ざけようと声を張り上げたレオン。

 しかしその宰相は偽物。ゴッタ伯に扮する魔道士の口角が三日月のように上がった。


「何をレオン公。カナンの怒りを、憎悪を晴らすは今ですぞ。さぁ、かかれ、かかれ!」


 見晴台の上から響き渡るその声を聞いた瞬間、レオンの瞳が赤く染まる。同時に突破口を見出そうとした思考も、再び怒り一色に塗り替えられてしまった。

 

 その様子をペドロサは、冷めた視線で見据えていた。

 なるほどね、そこで操ってると。本来なら魔道の輩と共闘なんざ御免だが、この戦争は皇帝陛下のご意志だ。


「そこをどけ……邪魔立てするものは全て斬り捨てる」


 胸から血を滴らせながら、殺意の篭った視線をペドロサに突き刺すレオン。そのレオンを品定めするように睨め回すペドロサ。にぃっと笑ったペドロサが薙刀を振りかぶる。


「じゃあ、取り敢えずこの面倒くせぇ奴を()るまではよしとするかぁ!」


 再び竜巻のような剣戟の応酬。互いに相手をねじ伏せようとするも、やはり実力は拮抗しており、決定機は生まれない。

 しかし先に述べた通り、カナン軍にとってはこの場で足止めされることが危険であり、側面に回り込まれればひとたまりもない。

 そしてその包囲は間もなく完成する。

 ところが。


「あん?」


 レオンと闘いつつも、ペドロサは不意に視界の端に映った違和感を見逃さなかった。

 平原の西に広がる湿地帯。そこから戦場を横断しようとする騎馬隊が現れたのだ。

 流石にレオンを相手にして悠長に確認している暇はなく、数やどこの軍かまでは把握するには至らない。


 カナンの伏兵? いや、あり得ないよねぇ。先に陣を張ってたのはこっちなんだからさぁ。それに魔道士の術中に嵌ってるこいつ(レオン)が策を弄せるはずもない。現にあの騎馬隊に気が付いてる様子もない。

 問題なのは、あの騎馬隊がカナン軍を横撃する為に突出した、右翼の側面に現れた事だ。あれでは逆に横腹を貫かれてしまう。

 

「おい、本陣に控えてるセリオに早馬飛ばせ。右方の湿原に謎の伏兵が潜んでる」


 セリオとは第八軍団の参謀長を務める若き副官だ。大将であるペドロサが戦闘狂であり、常に前線に立つ為、軍全体の統率は専ら彼が担っている。


 とはいえ、セリオが手を打つより先にあの騎馬隊が殺到するほうが早いだろう。正面と右方のどちらを相手にしても、側面を脅かされる厳しい攻めだ。


「面倒なのが紛れ込んだものだねぇ。右翼に気合い入れさせに走れ! 選り取り見取り、討ち取り放題だってなぁ!」


 レオンと激しく剣戟を交えつつ、供廻り衆に指示を出したペドロサ。二十合程打ち合い、ようやく一定の距離が開いたところで、確認の視線を右方に送る。


 一丸となって突撃してくる騎馬隊は統制こそよく取れているものの、数はせいぜい一五〇騎といったところ。

 それもそうだ。あんな湿地帯に多くの兵が隠れられるはずがない。だからこそ、効果的であるわけだが。


「あの程度の数なら潰走するってことはないだろ。遅かれセリオも手を打つはずだし」ぶつぶつと呟くと、その口角が残忍に歪んだ。

「てことで、やっぱり俺はお前を仕留める事に集中できそうだなぁ!」


 ペドロサは距離を詰め、渾身の一刀をレオンに叩き付ける。しかし怒りに呑まれながらも、レオンの双眸はこの一撃を狙いすましていた。

 闘いの中で剣筋に慣れてきたレオンは、なんと受けた刃を滑らせていなし、そのまま返し技を放ったのだ。

 ペドロサほどの猛者を相手にやってのけるは正に達人の域。

 ペドロサの首に銀閃が迫る。


 鈍い衝撃とともに呼吸が止まった。声にならない叫びを上げ、馬上からずり落ちたのはレオンの方だった。


「今の攻撃。悪くはなかったけど、それじゃあ俺には届かないねぇ」


 いつの間にか回転していた薙刀。跳ね上がった石突が、レオンの一閃より僅かに早く腹部を痛打していたのだ。鎧の隙間を正確に突いた一撃にレオンの口から鮮血の霧が舞う。

 

「それじゃあ、人生お疲れさん」


 落馬して動けないレオンに、トドメの一撃が振り下ろされた。

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