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04.Inn

 

 ー


 森からの帰還、報酬の受け取り、宿での宿泊


 いつもより豪華な二人部屋、なぜかマウだけさらに豪華な一人部屋


 ベッドに寝そべり、天井を眺めつつ、一人反省会


 ー





「にゃは、みんなの分と、ボクの取り分をちゃんと分けて、と」


「このエマ様は全てお見通しよ、マウ、今懐に入れた金貨をよこしなさい、今なら特別に許してあげるわ」


「あれが死角?冗談は顔だけにして頂戴。私の千里眼、アイズ・オブ・プロヴィデンスにはそうは見えなかったけれど」


「あんたに食事半分とられちゃったせいで全力が出せなかったじゃない、だからつかまっちゃったの、勘違いしないでよね」




「盗んだ後のエネミーはゴミにゃ。ゴミは燃やしてあげるもの、シャナはやさしいにゃ」


「リトはもう少し体を鍛えなさい、そうすればこれからも私の役に立つことを許可するわ、光栄でしょう」


「あなたの指示が遅すぎて苦戦したのよ、まるでナメクジ、いえそれ以下ね。私の崇高なる魔力の委ね先としての自覚が足りていないのではないかしら」


「別に助けてなんて言ってないでしょ、自力で脱出できたんだから。それにしてもベットベト。はやくお風呂入りたい」






 などという会話をつい先程まで繰り広げながら帰還した。


 仲睦まじく、つっこみどころ満載の会話。



 思い返せば今日も色々あったが、まあそれはいい、些細な事は後。




 懸案事項はただ一つ。




 あいつらは、とにかく言うことを聞かない。




 戦闘が始まっても。


 指示通り動かない。


 自分勝手な行動。


 すぐ文句たれる。





 俺のコーチングのレベルを見限っているとか、力量が足りないというのなら受け入れる。


 しかし俺に付いてきてくれている以上一定の信頼は得ていると思っている。


 過去を振り返っても明白。では何故。




 …まさか俺が死ななきゃ言うこときかないつもりか?




 文字通り死ぬほどの激痛なのだ。この先何度も耐えられるとは思えない。




 が、上等だ、もしそうだとしたら俺はいくらでも死んでやる。


 俺にできることはそれくらい。それであいつらの役に立つなら本懐。





 まあ今日はたまたまアレがきっかけだっただけ。


 何があろうと必ず守る、そのことに変わりはない。


 そもそもあいつらは俺が死んで復活してるなんてことは知らないはずだから。





 ………





(言うことを聞かないのは信頼の何よりの証)


(何が起きようとも最後には必ずあなたが何とかしてくれる、そんな思いの表れ)


(だからこそ甘え、そして頼る。禅問答。それゆえに常に危険と隣り合わせ)


(幸いなことに今まで無事に乗り切れた。しかしこのままでは何かが起きるのは時間の問題)


(取り返しのつかない事態に陥る前にどう行動するか。それはあなた次第)





 ………





 気付くと先程の天井。うたたねをしてしまっていたようだ。


 何を考えていたんだっけ。思い出せない。疲労が溜まっている。





「ん…リト…」





 起こしてしまったかと首を右へ傾ける。起きてはいない。寝言のようだ。



 サイズ不明のベッド一つ。隣り合い横になる二人。



 互いの息遣い、体温、匂い、それら全てが意識せずとも容易に伝わってくる距離。




 寝ているのはリン。




 二人部屋はリンと俺のペア。もちろん他意はない。リンの希望。



 少しうなされている様子。こういうことはたまにある。



 普段明るく振舞っているが、こいつは自分と戦っている。



 以前の俺と同じ様に。




 それは俺がこの世界に降り立った時の話。


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