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第77話 決着


「これで終わりだ! アリウス・アルレイン!」


 邪気を纏ったガルゴが距離を詰めてくる。

 対する俺は武器を失い、普通であればその攻撃を防ぐ手段は無いはずだった。


 リアの手が背中に触れる。

 そう認識して、力が湧いてくる気がした。


 そして、俺は唱える。


「称号付与、《天衣無縫》。聖剣《レーヴァテイン》をこの手に――」


 言い終えると、俺の差し出した手に光の粒子が集まる。

 それは剣の形を為し、俺の手の中に収まった。


 黄金色に輝く光の剣。

 そんな印象だった。


「何……!?」


 驚嘆の声を上げたガルゴに向けて、俺は聖剣レーヴァテインを横薙ぎに払う。

 その剣撃はガルゴを捉え、やすやすと竜の前足に食い込んだ。


「グガァアアアア!」


 ――これなら……!


 俺は《疾風迅雷》の称号を付与し、突進を止めたガルゴに向けて連続剣技を放つ。


「トリプルアサルト――!」


 竜の前足に集中させた三連続攻撃。

 その全てが命中し、竜の前足が斬り落とされた。


「ぐぉおおお! ば、馬鹿な……! 何だその剣は……!?」


 焦燥に駆られたガルゴが叫ぶ。


 片側の前足を失いバランスを崩したガルゴは口を開けて黒い咆哮波を放ってきた。

 しかし――、


「ハァッ!」


 俺がレーヴァテインで振り払うと、黒い咆哮波は消失する。


 不思議な感覚だった。

 初めて使う剣なのに、何故かどういう扱い方をすれば良いかが直感的に理解できる。

 この剣ならどんなものでも斬れると感じるほどだ。


「お、おのれ……!」


 ガルゴが立て続けに咆哮波を放ってくるが、俺はその全てを斬り払う。


「おのれぇ! 私は負けんっ! 負けられんというのに……!」

「ガルゴ、負けられないのは俺だって同じだ。百年前のこと、赤眼族のことを分かった気になるつもりは無い。だけど、この世界は壊させない。だからここでお前を倒す」


 一度言葉を切って、俺は続ける。


「女神様に、頼まれたからな」


「……貴様は、女神のためにこの世界を守るというのか?」

「リアは気の抜けたところもあるし、空気も読めない。あとついでに普段から妄想全開でぶっ飛んでるところがある。正直、全然女神っぽくない」

「アリウス様……!?」

「でも、今の俺があるのはリアのおかげだ。リアは、一番キツかった時に俺を笑わせてくれた一人の女の子なんだよ。だから、俺は戦うさ」

「そうか……」


「アリウス様……。あ、ヤバい。カッコ良すぎです。惚れ直しちゃいます。というかニヤケが止まりません。うへ、うへへへへ……」

「……」


 リアの緊張感ゼロの笑い声が聞こえてくる。

 雰囲気が台無しである。


 でも、それでこそリアなのかもしれない。

 いや、それでこそリアだ。


「ならば私も、全身全霊で応えよう。この力の全てを賭けて」


 ガルゴが言って、一際強い邪気が竜の体の周りを覆っていく。

 どうやら最後の攻撃を仕掛けてくるようだ。


 俺もそれに合わせ、称号付与とともに剣を後ろに引いて刺突剣技の構えを取る。


「アリウス様。最後の一撃、決めちゃいましょう。今度は私の魔力も乗せます」


 翼で宙に浮いたリアがそっと手を添えて、聖剣レーヴァテインがより一層強く輝き出した。

 剣を握る手に、力を込める。


「ゆくぞ! アリウス・アルレイン!!」

「ハァアアアアアアッ!!」


 俺とガルゴは互いに至近距離まで迫る。

 ガルゴが纏う邪気を斬り裂き、俺の剣はそれでも止まらず竜の中心部へと突き進んだ。


 そして――、


「ク、クク……。見事だ、アリウス・アルレイン……」


 ――ズゥウウウン。


 漆黒の竜は地面を響かせて倒れ込んだ。


 ――やった……。


「アリウス様!」

「師匠!」

「アリウス!」


 仲間たちの声がして、近づいてくるのを感じる。

 俺は振り返り、笑顔でそれに応じた。


 ――ワァアアアアアアア!!


 事情を理解した観客たちから歓声が上がる。


 ルコットやギルドメンバーたち、共に戦ってくれたキール協会長やマリベルさんも見えた。

 サーシャ王女を始めとして王族たちも無事のようだ。


「これで、終わりましたね」

「ああ」


 俺はふと倒れた黒い竜に……、いや、ガルゴに目を向ける。


「く、くく。貴様のような存在が百年前にもいてくれたら、な……」

「ガルゴ……」

「そのような目をするなアリウス・アルレイン。私は元々百年前に死していた存在だ。それがあるべき形に戻るだけのこと」

「……」

「貴様は私たち一族の怨嗟を終わらせてくれたのだ。せめて勝者らしく振る舞うのだな。それがせめてもの(はなむけ)、だ……」


 ガルゴはそれだけ言い遺すと、光に包まれ霧散していく。


 ――ガルゴ・アザーラ。いつかお前たちの暮らしていた大陸に行ったら、墓を作らせてもらうよ。


 俺が心の中でそう呟くと、不意に手の中に何か感触を覚える。


 見ると、それは赤く丸い石だった。

 ガルゴが遺したものかと思ったが、それを問う相手はいない。


 そうして、俺は光が空に消えて見えなくなるまでそこにいた。


お読みいただきありがとうございます!


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