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第74話 称号士と女神の称号


 ガルゴが立ち上がり、口の端を上げる。


 俺の攻撃を受けダメージを負っているにも関わらず、それは余裕のある笑みに見えた。


「何ですか? そんな状態なのにまだアリウス様とやろうってんですか?」

「いや、まずは役者を揃えようと思ってな」

「……どういうことだ?」


 ガルゴは俺の問いには答えず、立ち上がり黒い渦を出現させた。

 俺は攻撃かと思い剣を握り締めるが、その予想は裏切られることとなる。


「レブラ……」


 黒い渦から引き出されるようにして現れたのはレブラだった。


「ど、どうしてあの糞ギルド長が出てくるんですか?」

「分からん……」


「師匠、あの人様子が変じゃないですか?」

「何かに取り憑かれでもしているのか?」


 ルルカとクリス副長の言う通り、黒い渦から這い出てきたレブラの姿は尋常ではなかった。


 目の色が赤く染まり、体の所々に黒い影のようなものが現れている。

 足取りも亡霊のようで、ぶつぶつと何か呟いていた。


「コロセ、コロス、コロセ、コロセ、コロセ……」

「うっわぁ。どうしちゃたんですか、アレ」


 リアはレブラの様子を見て眉をひくつかせている。

 どう考えても正気じゃないな……。


「お前の仕業か? ガルゴ」

「フッ。この男が希望したものでな。力を与えてやっただけだ」

「何故そんなことを……」

「じきに分かる」


 ガルゴは意味深に言って笑う。


 この状況はどう考えたらいいだろうか?

 ガルゴを見たところこちらに攻撃を仕掛けてくるわけでも無いようだ。

 第一、先程の戦闘によって負傷しているし、まともには動けないだろう。


 となると、レブラを操ることで俺たちへの反撃を狙っているのか?

 どちらにせよ、もう大武闘会のルールは無視するつもりのようだ。


「危険かもしれません。離れていて下さい」

「あ、ああ」


 俺は審判に逃げるよう促し、レブラの動きを注視する。

 これでアリーナ内に立っているのは俺、リア、ルルカ、クリス副長、そしてガルゴとレブラの6人となった。


「今度は自分も助太刀します、師匠!」

「私もだ。この男には一発食らわせて目を覚ましてやらないとな」


 ルルカとクリス副長が言って、俺はそれに答えて頷く。


 観客もいつしか静まり返り、事の成り行きを見守っていた。


 そして――、


「アァアアアアアア!!!」


 モンスターのような叫び声とともにレブラが上空に手をかざすと、これまでのどれよりも巨大な黒い渦が出現する。

 俺は先程と同じくレブラに称号付与を試みるが、選択可能な称号が表示されなかった。


 ――これは、ガルゴと同じ……!?


「残念だがその手はもうコイツに通用せんぞ、アリウス・アルレイン。今は私の支配下にあるからな」


 やはりレブラはガルゴに操られているようだ。

 しかし、この巨大な黒い渦で一体何を……。


「ガァアアアア!」


 レブラが吠えると、昼夜が逆転したかのように辺り一面が黒く染まる。


 ――何だ……?


 俺は辺りを警戒するが、景色が変わった以外は特に変化が無いように思えた。


 だが、突然観客席の方からいくつもの悲鳴が聞こえてくる。


「ぐぁああああ! 痛ぇ、痛ぇよお!」

「な、何これ。体中が締め付けられるような……」

「ああ、女神様。お救いください……!」


 観客たちは自分の体を押さえつけて苦しみだす。

 中にはのたうち回る者もいた。


「お、お兄ちゃん……」

「アリウスさん……!」


「っ……!」


 最前列で見ていたルコットやギルドメンバーたちも同様だ。


 その反応には見覚えがあった。

 妹のルコットが呪いにかかっていた頃、同じような状態になったことがあるのだ。


「まさか、ルコットにかけていた呪いを辺り一帯に撒き散らしているのか……!?」


 観客たちを襲った現象はアリーナに立つ俺たちにも現れる。


「ぐっ……!」

「アリウス様!」


 慌てて駆け寄ってきたリアの意図を察し、俺はリアの魔法効果を高める称号、《水天一碧(すいてんいっぺき)》を付与する。

 そして、リアが俺の体に触れ、ルコットの呪いを解呪した時と同じ魔法を唱えた。


「《浄化魔法(エリクシール)》――!」


 蒼い光が輝き、鏡が砕かれるような音が響く。

 そして呪いによる痛みが引いていくのを感じた。


 リアのおかげで何とか呪いから解放されたようだ。

 リアはすぐさまルルカとクリス副長の元へ走り、その呪いを解呪してみせた。


「ほほう。さすがは称号士と女神。この呪いを解呪するとは見事なものだ。だが、悠長なことをしている暇はないぞ。今レブラが放っている呪いはかつての何倍にも即効性を強めたもの。会場にいるこれだけの人数の解呪が果たしてできるかな?」


 確かにガルゴの言う通りだ。

 浄化魔法(エリクシール)は体に触れなければ効果が現れないと、リア自身が言っていた。


 観客たち全員の呪いを解呪しようと思ったらどれだけの時間がかかるか分からず、そもそもリアの魔力が持たないだろう。


「くそっ! どうしたら……」


 ガルゴはもはや手段を選ばないらしい。


 何故レブラを使ってこのようなことをするのかは謎だが、いずれにせよこのままでは大勢の犠牲者が出てしまう。


「リア?」


 そんな中で、ふと真剣な表情を浮かべるリアが目に入る。


「アリウス様。一つお願いがあります」

「……何だ?」

「私に称号付与をしてください」

「称号付与を? それならさっき――」

「いいえ。もう一つ、別の称号です」

「別の称号?」


 リアは表情を保ったまま頷く。

 そこで俺は、エルモ村でルコットの呪いを解呪した際の、初めてリアに称号付与した時のことを思い出す。

 そういえばあの時、リアに付与可能な称号の中に詳細が表示されていない称号があった。

 それをリアは使えと言っているのか。


「今のアリウス様なら可能なはずです。その力を使えばきっと皆さんを助けられます」


 言って、リアは柔らかく笑う。

 その笑顔は王都の街中にある、女神の像が浮かべている笑顔にそっくりだ。


 それを見て、俺は迷わずリアに付与可能な称号を表示させた。


=====================================

【対象リア、選択可能な称号付与一覧】


水天一碧(すいてんいっぺき)

・女神が使用する魔法の効果をアップします。


●水月鏡花 【※新規】

・《女神の祝福(セレスティアル)》が使用可能になります。

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