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第62話 称号士と王族を巡る陰謀


「先程は申し訳ありません……。実は私、夢中になるとちょっと(・・・・)暴走してしまう(へき)がありまして……」

「「「「……ちょっと?」」」」


 体をクネクネとよじりながら言ったサーシャ王女に、同卓していた全員が揃って同じ反応を返す。


「ま、まあそれは置いておくとして。とにかく俺たちが大武闘会で優勝すればいいわけですね」

「ええ、そうなりますわ」


 サーシャ王女は姿勢を正してから俺の言葉に頷く。


 依頼の達成目標に関しては分かったが、気にかかることがあるな……。


「あの、王女様。先程、王族の方を含めて城の人間の様子が変だと仰っていましたが、それ自体は何か影響が出ていたりしないのでしょうか? 例えば、公務に差し支えがあるといったような」

「ええ。今のところそのような兆候は見られませんわ。……ですが、これが何者かの陰謀によるものであれば楽観視はできませんわね」


「ふぅむ。完璧な精神操作、みたいな馬鹿げたものでは無さそうですね。もしそんなことになっているのであればもっと深刻な事態になっていそうですし。判断能力を下げるような魔法の類でしょうが確かにこのままだとマズそうです」


 サーシャ王女の言葉を受けてリアが考え込みながら呟く。


「そういえば、なぜサーシャ王女は何も影響が無かったのです?」

「実は、事が発覚したのは私が隣国の公務から戻った時のことだったのです。なので、その間に城で何かしらの出来事があったのかと……」

「なるほど。今回の件がもし何者かの陰謀によるものなのであれば、魔法……なのか分かりませんが影響下に置くことのできなかったサーシャ王女の政治的権力を奪うものなのかもしれませんね。もっとも、推測にすぎませんし、何故再度王城に魔法をかけないのかなどの謎は残りますが」

「ふふ。アリウスさんは聡明なお方でもありますのね」


 サーシャ王女が口に手を当てながらおしとやかに笑う。


 そこで俺はふと思いつき、リアに声をかける。


「なあリア。その城の人たちにかかっている魔法みたいなものって、解除することはできないかな?」


 妹のルコットにかかっていた呪いを解呪してくれたリアのこと。

 女神の力を使えば今回の件を解決することができるかもしれない。


「たぶん、アリウス様の称号付与で浄化魔法(エリクシール)の力を強めていただければできると思います。ただ、ルコットさんの時と同じように直接その人たちの体に触れる必要がありますが……」

「何と! そのようなことができるのですね! それは是非お願いしたいです」


 サーシャ王女が顔を輝かせてこちらを見る。


「……でも、今、城の中にアリウスさんたちを迎え入れることは残念ながら厳しいと思います。最近、城では何故か厳重な警備が敷かれていまして。この間は酔っ払った一般市民が城に近づいただけで牢に入れられていましたから。私が手引きしたとしても難しいですわね……」

「そうですか……」


 強硬策で城に立ち入るという方法も無くはないだろうが、諸々を考えるとあまり現実的じゃないな。


「ですが、その件についても《大武闘会》で解決できるかもしれませんわ」

「と言うと?」

「大武闘会の最後には優勝者に王族から覇者の冠を授ける式が行われるのです。その時であれば、アリウスさんたちが近づいても不自然ではありません」


 なるほど。

 となればやることはシンプルだ。


 元のサーシャ王女が持ちかけた依頼通り、大武闘会で優勝すればサーシャ王女自身の問題も解決し、王族の人たちに生じている異常も解くことができる。


「分かりました。今回の件、精一杯やらせていただきます」

「あ、ありがとうございます! 本当に、アリウスさんのギルドに話を持ちかけて良かったですわ……」


 サーシャ王女はこちらが恐縮してしまうほどに頭を下げていた。


   ***


「ではアリウスさん。大武闘会の件、よろしくお願い致しますわ。勝手なお願いだと思いますが、どうか……」

「分かりました。サーシャ王女のために頑張ります」

「ああ。アリウスさんが私のために(・・・)。うふ、うふふふふ……」


 サーシャ王女を見送りに出たところ、そのような反応をもらった。

 どこかリアに似てるなこの王女様……。


 そうして、サーシャ王女を見送った後、俺はギルドの扉を閉めて一つ息をつく。


「うーん。中々に癖が強い王女様でしたねぇ。何かこう、妄想全開という感じが」

「リアも人のこと言えないと思いますが」

「ルルカさんってば、酷い!」


 俺は戯れているリアとルルカを見て、クリス副長と顔を見合わせ苦笑した。


「しかし、思いの(ほか)事の大きい話になったな、アリウス」

「そうですね。でも、やるべきことははっきりしていますし、大武闘会で優勝できるように頑張りましょう」


 呪術士ガルゴが今回の件に関わっているのかは分からないが、もし仮にそうだとしたら奴の狙いは何なのだろうか?

 考えても答えは出なかったが、俺は不穏なものを感じて手を握りしめる。



 その後、俺はギルドメンバー全員を集めて今回のサーシャ王女からの依頼を皆に共有した。


 ギルドメンバーの皆は驚きを隠せない様子だったが、王族までも関係する依頼に一致団結しようと奮起する。


 そうして大武闘会の参加メンバーも決めて、優勝に向けて特訓を重ねながら日は過ぎていった――。


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