第52話 《黒水晶の洞窟》での戦い
「ハァッ――!」
突然飛びかかってきたモンスター、黒兎の群れを俺は連続剣技で退ける。
黒光りする鋭利な水晶で埋め尽くされた洞窟。
そこは、幻想的な光景とは裏腹にモンスターの巣窟と化しているようだった。
「聖なる水撃――!」
「中級風魔法、ソニックダート――!!」
後ろではリアとルルカが魔法を放ち、他のモンスターを一掃していた。
入り口からここまで、ブラッドウルフやダークトロール、先の黒兎など、様々なモンスターに襲われていた。
これまでに倒したモンスターの数はゆうに100を超えている。
「す、凄い。これがアリウスさんのギルド……。これだけのモンスターを相手にこの人数で戦えるなんて、A級ギルド……、いや、それ以上の実力があるんじゃ……」
「ふふーん。私たちもそれなりに強いですからねぇ。もちろん、最強のジョブを持っているアリウス様には敵いませんが」
「それに、俺もアリウスさんに《称号付与》してもらってから今までにない力が湧いてきて……。本当に凄いです」
ここへ来る前に付与してやった称号の効果を実感しているのか、ポールが自分の両手をまじまじと見つめていた。
確かに《黒影の賢狼》で共に戦っていた時よりも遥かに戦闘力が上がっている。
――俺自身、称号士のジョブ能力やその可能性には驚かされてるしな。
フロストドラゴンや呪術士ガルゴとの戦闘を経て新たに称号も会得しているし、きっとクリス副長を助けることもできるはずだ。
「それにしても凄いモンスターの数だな……」
俺も《黒水晶の洞窟》には来たことがあるが、ここまでの量ではなかった。
明らかに異常な状況だ。
もしかすると今日の朝、クリス副長がこの洞窟に足を踏み入れた時より悪化しているのかもしれない。
クリス副長もかなりの実力者だったが、この状況ではかなり苦しいはず。
「とにかく今は奥の方へと急ごう。ポールは危険だと感じたら後衛からサポートしてくれ。前衛は俺が務める」
「は、はい!」
俺たちはモンスターを撃退しながら洞窟を進んでいった。
そうして結構な距離を進んだ頃だろうか。
――ズゥウウウウウン。
腹の底に響き渡るような轟音。
黒水晶で覆われた洞窟の壁面が激しく揺れる。
――これは……。洞窟の下の方からか?
「師匠、今のは……」
「……何かの戦闘音なのは間違いないだろう。グズグズしている暇は無さそうだ。確かこの先に洞窟の下層に降りる道があったはず」
今の音は洞窟中に響くような規模だった。
もしかするとクリス副長は何か強大なモンスターに襲われているのかもしれない。
俺は念の為、称号士の能力を使用し選択可能な称号を確認する。
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【選択可能な称号付与一覧】
●画竜点睛 【※新規】
・刺突剣技《ライトニングバッシュ》の使用が可能になります。
●閃光
・一時的に素早さのステータスがアップします。
●疾風迅雷
・《連続剣技》の使用が可能になります。
●豪傑
・筋力のステータスがアップします。
●紅蓮
・初級火属性魔法の使用が可能になります。
・中級火属性魔法の使用が可能になります。
・上級火属性魔法の使用が可能になります。
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確認し終えた後で俺は皆に向けて声をかける。
「よし、急ごう!」
皆が頷き、俺たちは洞窟の下層へと歩を早めた。