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第43話 称号士は仲間たちと温泉に入る①


「はぁー、極楽極楽ですなぁ」

「ええ、本当に」


 俺はパーズと共に屋内に備え付けの湯船に浸かりながら手足を伸ばす。

 当然だが混浴ではない。


 ブラス地区長に案内してもらった宿に着くと、やはり雪の影響もあってか客は俺たちを除いておらず、まさに貸し切り状態だった。


 部屋にも余裕があるので一人一部屋が割り当てられることになり、「えー! アリウス様と一緒のお部屋じゃないんですか!?」とかリアが嘆いていたのを思い出す。


「でも、温泉というのはこんな感じなんですね。初めて入りました」

「そりゃあ良かった。外の露天風呂なんかに行くと雪景色が綺麗で尚のこと癒やされますぜ。湯に酒を混ぜた酒風呂(さかぶろ)なんてのもありますからな」

「へぇ。面白そうですね。後で行ってみようかな」


 ルコットなんかは酒の匂いだけで酔っちゃうくらいだから気をつけて欲しいけど。


 と、そんなことを考えながらくつろいでいたところ、唐突に隣の女湯から声が聞こえてきた。


『おおー! これが温泉! 素晴らしいです!』

『リアさん、今度はあまりはしゃぎすぎないでね?』

『ふふ、分かってますよルコットさん。この私がそう何度も――、ふぎゅう……!』

『きゃっ!』

『ちょっとリア、大丈夫ですか?』

『あっははー。けっこうツルツルしてるんですねぇ、この床。でも、ルコットさんが胸で受け止めてくれたので平気でした!』

『も、もう。リアさんったら』


 どうやらまた転んだらしい。

 何をやってるんだか……。

 まあ、それでも喜んでくれているようなので良しとしよう。


 それにしても温泉というのは気持ちいいものなんだな。

 鉱石の成分が染み込んだ温かい湯に方まで浸かっていると、まるでギルド《黒影の賢狼》で激務に追われていた頃の疲れまでも剥がれ落ちていくような錯覚を覚える。


『呪いの治療の時にも思いましたが、ルコットさんって意外と胸、大きいんですねぇ。これは鍛えがいがあります』

『ひゃっ! ちょっとリアさん……。揉まないでぇ!』

『おお……、まるで手が吸い込まれるような柔らかさ。癖になりそうです。おっと、逃しませんよぉ? それそれー』

『あっはは! やめてぇ、くすぐったい!』

『むぅ……』


「……」


 何てことをしとるんだあの女神様は。


 最後に恨めしそうな声が聞こえたがルルカだろうか。

 何となくだがリアとルコットのやり取りを見て自分の大きさを確認しているルルカが目に浮かぶ。

 その二人と比較するのは酷かもしれないぞ、ルルカ。


『そういえば、ルルカさんに聞いてみたいことがあったの』

『何です? ルコット』

『何で魔法使いの格好をしてるのに杖じゃなくて(ほうき)なの?』

『あー、それ私も気になります!』

『ふふふ。よくぞ聞いてくれましたね、お二人とも。それは魔女といえば箒だからです!』

『えー、そうかなぁ?』

『小さい頃に絵本で読んだのです。大昔の魔女というのは箒に(またが)り空を自由に飛んでいたと。だから自分もいつかそうなりたいと思ってですね――』


 へぇ。そんな理由があったのか、アレ。

 ルルカがいつも風魔法を使っているのもゆくゆくは空を飛びたいとか考えているからなのかもしれない。

 確か風魔法の中にそんな魔法があったなと、そんなことを思い出す。


『でもルルカさんならその内できるよ、きっと! お兄ちゃんと毎日修行頑張ってるしね』

『そうそう。こうして温泉に入れるのもルルカさんがあのオバサンに勝ったからですし。鍛えてくれたアリウス様に感謝、ですね』

『ありがとうございます。……でもそうですね。本当に師匠のおかげです。師匠と出会えなければきっと自分は野垂れ死んでましたよ。本当に、感謝してます……』

『えー? ホントに感謝だけですかぁ?』

『あー、ルルカさん顔赤いー』

『なっ……! ち、違います! これは温泉に浸かっているせいで――』

『またまたぁ、そんなに隠さなくて良いんですよぉ』

『な、何を隠しているというのですかリア!』


「モテモテですなぁ」

「よ、よしてくださいパーズさん」


 隣を見るとニヤニヤ笑うオジサンがいた。


 というかあいつら、会話の内容が聞こえてるって気づいてないのか……。


 それから少しして、隣の女性陣は湯船から上がったらしく、パタパタと足音が聞こえてきた。


 隣ではまだパーズが俺の反応を楽しんでいるような笑みを浮かべており、俺は逃れるように湯船から立ち上がる。


「ち、ちょっと外の方にも行ってみますね」


 さっきパーズが外に露天風呂があると言っていた。

 雪景色が綺麗だと言うし、行ってみようかと歩を進める。


「ええ、ごゆっくり……」


 そう言って何故かまだ悪戯な笑みを浮かべているパーズだった。


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