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第32話 魔女っ子、ルルカ・ランフォーレ


「ルルカさん、これをどうぞ」

「やや、これはどうも」


 ルルカはルコットが用意した紅茶にフーフーと息を吹きかけながらすすっていた。

 外見もそうだが、仕草を見るとどこか子供っぽい。


「もう一度聞きたいんだけど、ルルカは本当にそのビラを見て俺たちのギルドにやってきたのか?」

「はい! ぜひ自分をこのギルドに入れてもらえないかと思いまして!」


 何とも元気の良い魔女っ子だ。


 それにしても、まさかリアの作った新興宗教の勧誘文みたいなビラを見て来てくれるとは。

 世の中、分からないものである。


「自分からこんなこと言うのもなんだけど、ルルカはグロアーナ通信の最新号、見てないのか?」

「見ましたよ?」

「そうか。でも、それならどうしてウチに……」


 《黒影の賢狼》がギルドメンバーに課していたノルマや過剰労働の環境は俺が原因だったとするグロアーナ通信の記事。

 ギルド長レブラによる策で事実無根とはいえ、その記事によって俺たちのギルドは加入希望者が集まらないという事態に陥っていた。

 しかし、ルルカはそれを見た上でここに来たのだという。


「あんなの関係ないです。人の噂というのはその一部だけを切り取って見ても真に分かるものではありませんし。それに実は、ここに来る前にもいくつかギルドの面接を受けてまして。で、《黒影の賢狼》の面接も受けたんですよね」

「そうなのか?」

「ええ。でも、なーんかあのギルド長、胡散臭いという感じがしたんです。それで、他のギルドメンバーの方に聞いてみたのです。あの記事は事実なのかと。そしたら、内容はデタラメもいいところだって。何でも、副長のクリスさんという方でしたが」

「クリスさんが……」

「はい。むしろ『アリウスという男は信用できる。もし彼がギルドメンバーを募集しているなら会いに行ってみると良い』と仰ってました」


 俺はクリスに向けて心の中で感謝する。

 いつかお礼しに行かないとな。


「やっぱり見てくれてる人はいるんだね、お兄ちゃん」

「あの糞ギルド長を胡散臭いと一目で見抜くとは、やりますねぇ」


 話を聞いていたリアとルコットもルルカに好印象を持ったようだ。


「そんな折、あのビラを見つけて素晴らしい内容に感銘を受けました。そうしてこのルルカ・ランフォーレ、ギルド《白翼の女神》さんにやって来たというわけです」


 ルルカはニッコリと笑って言った。

 こんな状況で来てくれるなんてありがたい限りだ。


 俺は一枚の書類にペンを走らせ、ルコットに手渡す。


「ルコット。悪いんだけど、これをギルド協会のキールさんに届けてくれるか?」

「えーと? あ、うん! 行ってくるね!」


 ルコットは俺が渡した書類に目を通して笑顔になる。

 その書類はギルドメンバーの変更があった際、ギルド協会に提出することになっている書類だった。

 そこには当然、ルルカ・ランフォーレという名前が記載されている。

 ルコットはその書類を手にしてパタパタとギルドから外へと駆け出していった。


 一仕事終えてほっと息をついた俺は、まだ残っていた紅茶を飲み干す。


 それにしても「ランフォーレ」か。

 どこかで聞いた名だな。


 ……。


 思い出した――。

 確か代々【賢者】のジョブを授かる家系があったはずだ。


 魔道士系のジョブの中でも最上位に位置するとされる【賢者】。

 そのジョブを授かったものは例外なく魔法のエキスパートであり、多彩な属性魔法を使いこなすとされていた。


 通常では滅多にお目にかかれるジョブではないが、【賢者】のジョブを代々授かっている特殊な家系も存在する。


 《賢者一族》とも呼ばれている家系。

 それが確かランフォーレ家という名前だった。


「ルルカ。君はあの賢者一族の家系なのか?」

「え? あ、はい。確かに私はランフォーレ家の生まれですが……」

「どういうことです? アリウス様」


 リアが求めてきたので、俺は簡単に説明してやった。


「えー! それじゃあルルカさんがギルドに加入してくれたら百人力じゃないですか!」

「い、いえ。その――」

「ああ。本当にありがたいな。……っと、そういえばちょうどモンスター討伐の依頼を受けてるんだ。良ければ一緒にどうかな? ルルカの魔法の腕も見たおきたいし」

「そうですね! 見てみたいです! 賢者一族の力を!」

「あの、ちょっ――」


 リアが言って、困惑しているルルカを引っ張っていく。

 俺も装備を整え、3人で王都近くの草原に向かうことにした。


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