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第30話 呪術士ガルゴの暗躍


「グロアーナ通信社の、記者?」


 俺たちのギルドを訪れた中年男性、パーズがニヤリと笑った。

 飄々としていて掴みどころのない印象を受ける。

 紺色のシャツにサスペンダーを付けた服装がいかにも記者っぽい。


「あー! ってことはこの記事を書いた出版社の人じゃないですか! 何てことしてくれたんですか!」

「とっとと。ちょっと待ってくださいな、青髪のお嬢さん」


 リアが先程床に叩きつけた広報誌をパーズの目の前に突きつけた。

 そこには、俺が元いたギルド《黒影の賢狼》で劣悪な労働環境をつくった張本人だという趣旨が掲載されている。


「待つものですか! あなたたちがあの糞ギルド長の言い分を信じてこんな記事を載せたんですよね? こんな事実無根の記事を!」

「あのですね、お気持ちは分かるけどとりあえずオレの話を聞いちゃくれません?」

「リア」

「むむぅ。……分かりました。聞きますよ」


 リアが矛を収めると、パーズは挙げていた両手を下ろして話し始める。


「まず、これはお伝えしておきましょ。その記事を書いたのはオレじゃありません。関わってもいません」

「なるほど。でも、パーズさんは何故ここに来たんです?」

「ちょっとオタクらに確認したいことがありましてね」

「確認したいこと?」


 パーズは俺の言葉にコクリと頷く。


「さっきも言ったけど、その記事が掲載された点でおかしなことがありましてね」

「おかしなこと?」

「ご存知かもしれませんが、ウチは裏の取れてない記事なんて絶対に載せません。ましてやその記事みたいに一人の証言だけで構成されたような記事はね」

「いやいや、実際には載ってるじゃないですか。あんな糞ギルド長のインタビュー記事が」

「それが妙なんですよ。オレもこの記事が掲載された後に上層部を問い詰めましてね。あんな信憑性が定かじゃない記事の掲載を承認するなんて何事か! ってね」

「ふんふん。それで?」

「そしたらね。だーれも覚えてないっていうんですわ」

「え?」


 それは確かに妙だ。

 パーズが続けて言うには、この記事を承認した上司、それも複数人が口を揃えてその時のことを覚えていないと言ったとのこと。


「そんで、これは何かあるなとブンヤの勘が働きましてね。独自に調査してみたらその号が刊行される直前に怪しい男がウチの出版社を出入りしてたっていう目撃情報を掴んだんですよ」

「怪しい男?」

「何でも、黒いローブを来た男だったとか」

「……っ!」


 黒いローブの男?

 まさか……。


「おや、その反応は何か心当たりがお有りのようで。まあとにかく、その記事は明らかにオタクらに不都合なものだ。どうも恣意的(しいてき)なものも感じますし、その男のことを知っていたら教えてもらえないかなと思いまして」


 なるほど。

 パーズにとってみれば今回の件は自身の出版社が利用された状況にあるわけだ。

 だから今後のためにも黒いローブの男の素性を掴みたいと、そういう考えで俺たちのギルドにやってきたのだろう。


「で? その黒いローブの男のこと、ご存知でない?」

「実は――」


 俺はエルモ村の付近で出会った黒いローブの男についてパーズに伝える。

 加えてその男がルコットの呪いに関係しているかもしれないことを掻い摘んで話しておくことにした。


「ふーむ。断片的な情報ですが、かなーり気になりますな」


 パーズは俺の話を聞き終えると腕組みをして唸っていた。


 もし、あの記事が何者かの画策なのだとしたら、そこには当然レブラが絡んでいるんだろう。

 そして、黒いローブの男も。


 ……。


 となればレブラと黒いローブの男には何かしらの接点があるのかもしれない。


「まあともかく、今は情報が乏しいもんでね。オレも色々と情報を集めてみますが、オタクらも何か分かったら教えてくれると助かります」

「分かりました。パーズさんの方でも黒いローブのことが何か分かったら教えてほしいです」

「それはもちろん」


 パーズは「それがせめてもの償いになれば」と言い残し、ギルドを去っていった。

 悪い人じゃなさそうだ。


「ふぅ……。しかしギルドメンバーが集まらないのは困ったな」

「ですねぇ。恐らくあの糞ギルド長が絡んでるんでしょうけど。ギルドメンバーについては地道に頑張るしかないですかねぇ」

「そうだね。そのギルド長のこと見返してやろうよ、お兄ちゃん」


 そうして俺たちは頷き合う。


「それにしても、どうしたもんかな」

「とりあえずビラでも作って見るなんてどうかな? 『ギルドメンバー大募集! アットホームな職場です』的な感じで」


 ルコットが提案した一言にリアがピコンと反応する。


「それいいですね! 私が作りますよ! アリウス様の魅力を最大限に伝えるビラを!」

「いや、別に俺の魅力を伝える必要は……。でもそうだな、ビラ自体は作っても良いかもしれない。何もしないよりは良いだろうしな」


 リアがやけに自信満々だし、前向きな取り組みをしてくれるのは正直言ってありがたい。


 ――ここはリアに任せてみようか。


 そう思ったのが間違いだった。


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