第21話 悲願成就
「お兄ちゃん……」
「大丈夫。きっと、うまくいく」
俺は不安げに見上げてくるルコットに笑顔を向ける。
俺たちはウロボロスを倒した後、すぐにルコットの元へと戻っていた。
理由はもちろん、ウロボロスを撃破したことで弱まったであろう呪いを解呪するためだ。
事情を聞いたネロ村長を始め、エルモ村の住人たちも固唾を呑んで見守っていた。
「それではアリウス様」
「ああ」
俺はリアの言葉を受けて称号士のジョブ能力を使用する。
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【対象リア、選択可能な称号付与一覧】
●水天一碧
・女神が使用する魔法の効果をアップします。
●???
・???
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「称号付与、《水天一碧》――」
俺がリアに向けて称号付与を試みると、リアの周りに蒼い光の粒子のようなものが現れた。
その幻想的とも言える光景に、ネロ村長や周りにいた村人たちから感嘆の声が漏れる。
「アリウス。先の戦いでもそうだったが、おぬしのその力は一体……」
「はは……。どこかの妄想大好き女神様から授かりました」
ネロ村長が怪訝な顔を浮かべる中、当の女神様は集中した顔をルコットに向けている。
正確にはルコットの背中に浮かぶ《黒蛇の刻印》に向けて、だ。
ウロボロスを撃破したからだろうか。
心なしか黒い刻印が少し薄くなっているように見えた。
「お願いします。リアさん」
リアが頷き、女神の力を使うべく両手の先を見据える。
「では、いきます。めが……、コホン。何だかよく分からない力、パート4」
「……」
下手にごまかすくらいなら言わなくてもいいのでは?
そう思ったが、集中しているようなのでそっとしておく。
リアは両手の平を黒蛇の刻印に添える。
それに導かれるようにして、リアの瞳のように蒼い光がルコットの背中を覆っていく。
――頼む。
「浄化魔法――」
刹那、蒼い光が一際強く輝き、鏡が砕かれるような音が響いた。
「やった、のか……?」
見るとルコットの背中からは黒蛇の刻印が綺麗に消え去っていた。
「か、体が凄く軽いよ、お兄ちゃん……!」
ルコットが笑顔を弾けさせる。
まるで何かから解放されたかのように。
「ふう。これで大丈夫。バッチリ解呪できたはずです」
「あ――」
――叶った。
事の成り行きを見守っていた村の人たちからも歓声が起こる。
長年の悲願が成就した瞬間だった。