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第2話 称号士は謎の美少女と出会う


「残念だがウチのギルドじゃ雇えないねぇ」

「そう、ですか……。お忙しい中、ありがとうございました……」


 俺は何度目になるか分からないその言葉を受けて、訪問したギルドを後にする。


 ――外れジョブを授かった野郎を雇う余裕なんてあるかよ。


 後ろで対応してくれたギルド職員の声が聞こえた。

 どうせ悪態をつくなら聞こえないようにしてくれと思ったが、俺は聞こえないフリをしてその場を去る。


 レブラに《黒影の賢狼》を追い出されてから色んなギルドを手当たり次第に当たっていたが、どこもこんな調子だった。


 故郷で病を抱えている妹のためにも、稼ぐ手段をつくらなくてはならないというのに。


 ――これなら、いっそのこと自分でギルドを立ち上げてやろうか。


 そんな考えがよぎったその時、空から雨が降ってきた。


「仕方ない、ひとまず雨をしのげる場所に行こう……」


 王都から少し外れたところに遺跡があったはずだ。

 つい先日までは野盗の根城とされていた場所だが、その野盗は《黒影の賢狼》にいる時に俺の部隊が捕らえていた。

 宿代を使う余裕もないし、今日はそこに行って明日からのことを考えよう。


 そうして城壁の方へと向かう途中で女神像が目に入る。


 肩に水瓶を抱え美しく微笑む女性の姿を模した像だった。

 像の背中からは天使のような翼が生えていて、神秘的な雰囲気すら感じさせる。


「女神様、どうかお導き下さい……」


 俺は胸に手を当て、女神像に向けて頭を下げる。

 子供の頃から教えられてきた女神に対する拝礼の作法だ。


「……」


 当然だが、女神像は何も答えない。

 雨が降る中でも変わらない笑みを浮かべているだけだ。


 そうして、俺は遺跡を目指して歩き出す。


 ――本当に、女神がいるなら導いてほしいよ。


   ***


「それじゃ、ちょっとお邪魔しますよ、と」


 その日の夜、俺は王都外れの遺跡にやって来た。

 遺跡の入口にある階段を少し下った所で布を広げ、俺はさっさと寝てしまおうと横になる。


 ……。


 …………。


 ――何だ?


 俺はふと、何かの気配を感じて起き上がる。


「遺跡の奥からか……?」


 俺は片手に灯り、もう一方の手には愛用のショートソードを持ち、歩を進める。


 そうして、奥の方の壁から冷たい風が吹いているのに気付いた。

 他とは少しだけ色褪せ方が違う壁面があるのを見つけ、何とはなしに力を込める。


 すると――、


「おわっ、何だコレ!?」


 壁が音を立てて崩れ、更に奥へと続く通路が現れる。


 ――隠し、通路?


 風はその奥から吹いてきているようだ。


「野盗の奴らが隠してた財宝でもあると嬉しいんだがな……」


 そうして通路を進んでいくと、開けた場所に出る。

 巨大な石柱が規則正しく二列に並び、王都にある大聖堂を思わせるような場所だ。


 しかし、その不可思議な場所よりも、その一番奥で光を放っているものの方が気になった。

 俺は慎重にその場所へと近づき「それ」を見つける。


「……っ!」


 光を放つ魔法陣の上にいたのは、人だった。

 もっと正確に言うなら、女の子だった。


 そして更に……、というか念のため言うなら、その女の子は一糸纏わぬ姿でそこに倒れていた。


 だが、俺が驚いたのはそこだけではなかった。


 背中の真ん中辺りまで伸びる、水色に透き通った髪。

 目を閉じていても分かる、妖精のように整った顔立ち。


 そして何より、背中から生える純白の翼――。


 若干幼い感じはしたものの、女の子はこの世界に伝わる女神、エクーリアの容姿と瓜二つだったのだ。


「ん、うぅ……」

「お、おい、大丈夫か!」


 微かに声を漏らす女の子に近づき、その体を抱えあげた。

 俺の声に反応してか、女の子の瞼はゆっくりと開いていき、宝石のように蒼い瞳が現れる。


 それはまるで、神聖な儀式か何かのように思えた。

 のだが……、


「ふぁああ。……おはようございましゅ」


 気の抜けた声で女の子は言った。


「……」

「あれ? ここは……?」


 あまりに緊張感の無い第一声に固まってしまう。

 女の子は寝ぼけ眼で辺りをキョロキョロと見回すと、自分の体に目を落としていた。


「……あ、良かった。ちゃんと受肉できてる。翼もある、と。でも体は少しちっちゃくなっちゃいましたか」

「おい君、大丈夫か?」


 俺は何とか冷静さを取り戻して女の子に声をかける。

 すると、女の子の首がぐるりと回転して俺の方に向き、その綺麗な蒼い瞳が見開かれる。


「あ、あ……あぁ」

「……?」

「アリウスさんじゃないですか! お会いしたかったです!!」

「って、ちょっ……!」


 女の子がいきなり俺の手を握ってきた。

 もちろん裸のままである。


「良かったぁ! 早速会えました!」

「ちょっと待って! 一旦離れてくれ!」


 俺は女の子をどうにか引き剥がす。

 そして、生まれてきて一番早いんじゃないかというスピードで上着を脱ぎ、女の子に羽織らせた。


 やめてくれ……。

 生まれてこの方、ギルドの仕事三昧で妹以外の女の子とはロクに話したことも無いんだ。

 それが突然裸の美少女に手を握られるとか、刺激が強すぎる。


 そもそも状況が全く分からない。

 何で俺の名前を知っている?


 この子は一体、何なんだ?


 俺はバクバク鳴っている心臓を落ち着けるため、大きく深呼吸してから女の子に向き直る。


「なあ、君は誰なんだ? どうしてこんなところにいる? それに何で俺の名前を知ってるんだ?」

「お、落ち着いて下さい、アリウスさん」


 いきなり裸で手を握ってきた人間に言われたくないんだが……。


「ええと、どこから話しましょう。あ、そうそう。私が誰かってことでしたね」


 女の子は姿勢を正すと深々と俺の方へ頭を下げた。


「私の名前はエクーリア。女神です」

「………………は?」


 ものすごくあっさりと言われて、思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。


「女神です」


 またも女の子は繰り返す。

 表情は至って真剣そのものだった。


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