第19話 称号士と巨大蛇ウロボロス
「悲鳴っ……!?」
「村の入口の方からです!」
俺は咄嗟に、悲鳴の聞こえた方へと走り出す。
「お兄ちゃん! どうしたの!?」
途中、家の前を通った時に困惑の表情を浮かべるルコットと出くわした。
「恐らくモンスターだ! ルコットは家に隠れているんだ!」
「わ、分かった!」
俺はルコットにそれだけ伝えると、そのまま村の入口を目指して駆ける。
そして――。
「……っ。これ、は……!」
村の入口で目にしたのは、巨大な蛇のモンスターだった。
――巨大蛇ウロボロス……!
蛇のように独特な動きをすることから大型モンスターの中でも特に討伐が難しく、上級ジョブを多人数揃えたパーティーでも苦戦を強いられるとされるモンスターだ。
加えて、振り回される尾撃は屈強な戦士をまとめて薙ぎ払えるだけの威力を持つと聞く。
村の自警団がウロボロスの侵入を阻止しようとしているようだったが、ほぼ壊滅状態だった。
片膝をつく者、地面に突っ伏している者が多数でとても戦闘は続行できそうにない。
「ネロ村長!」
「おおアリウスよ、来てくれたか!」
自警団の指揮を取っているネロ村長が俺に気付き振り返る。
「俺も加勢します!」
「すまんが頼む。《黒影の賢狼》で鍛えてきたお主なら百人力だ!」
正確には元だが、今はそんな経緯を説明している場合ではない。
俺はショートソードを鞘から抜き放つ。
と、リアが唐突にウロボロスを指差して叫んだ。
「ああー、アリウス様、これこれ! これです! これがルコットさんに呪いを付けたモンスターです!」
「はぁっ!?」
そんな馬鹿な。
目の前の巨大蛇は村の家屋より遥かに大きいぞ。
こんなのに呪いをかけられた、というか出くわしたなら、ルコットも当然気付くはず。
けど俺はルコットからそんなことを聞いた覚えが無い。
「間違いないのか?」
「絶対です! 気配を探っていたモンスターと同じですから。……でも、おっかしいですねぇ。さっきまでは森にいたはずなんですが……」
「……」
解せない点は残るが、今は目の前の敵に集中しよう。
コイツを倒せばルコットにかかった呪いの力は弱まるということだ。
エルモ村のみんなを守るためにも、ルコットを救うためにも、絶対に倒す……!
俺は再度決意し、手にしたショートソードをきつく握りしめた。