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第15話 称号士の帰郷


「おう、アリウスじゃねえか! って誰だそのお嬢さんは!?」

「アリウスくんお帰り! どうしたの、その女の子!?」

「アリウス兄ちゃんだー! え、誰そのかわいい子!?」


 俺の故郷、エルモ村に到着すると面々からそんなお言葉をもらう。

 背中には相変わらずリアが乗っかっている。


 まあ、そういう反応になるよな……。


「ふふ、アリウス様の妹さん。ルコットさんでしたっけ? 会うの楽しみです」


 溜息をつく俺とは対照的に背中のリアはやけに嬉しそうだ。

 とりあえず夜も深くなってきたので妹、ルコットのいる家に行くことにした。


 家の扉の前まで来てノックをする。


「はーい」


 可愛らしい声の後にゆっくりとした足音が聞こえ、扉が開く。


 ――良かった……。今日は立ち上がれるくらいには元気そうだ。


「ただいま、ルコット」

「お兄ちゃん! …………って、ええっ!?」


 俺の顔を見て明るく弾けたルコットだったが、俺が背負っているリアに目を向けて素っ頓狂な声を上げる。

 黒く綺麗な髪の奥に困惑した表情が浮かんでいた。


「初めまして、ルコットさん。私、リアと申します!」


 俺の背中からリアが快活に挨拶をする。

 そろそろ降りてほしいんだが……。


 ルコットは俺とリアの顔を交互に見て、目をゴシゴシとこすっている。

 そして目を開けて、


「ええっ!?」


 もう一度素っ頓狂な声を上げた。


   ***


「もー、ビックリしたよ。お兄ちゃんに彼女ができたのかと思っちゃった」


 ――シュッ。


「ああ。だから俺とリアはそんな関係じゃないって」

「うんうん。でも、お兄ちゃんはずっとお仕事ばっかり頑張ってたし、それでも私は嬉しかったんだけどなぁ」


 ――シュッ。


「そういえば、リアさん、でしたか? お兄ちゃんとはどのようにして知り合ったんです?」

「え、えと……。私が困っていたところをアリウス様に助けていただいて――」

「へぇー、アリウス()かぁ。お兄ちゃんてば慕われてるんだね! 妹としても嬉しいよ」


 ――シュッ!


(……あの、アリウス様?)


 リアが小声で俺に話しかけてくる。


(なんだ?)

(どうしてルコットさんは包丁を研ぎ続けているのですか!? 怖いんですが!)

(ああ。きっと手持ち無沙汰でやっているだけだよ。ルコットは人見知りなところがあるからな。緊張してるんじゃないか?)

(そ、そうなのですか?)


「さてと……」


 ルコットは包丁を手にしたまま振り返る。


「ヒッ……!」

「これで準備できました」

「じ、準備って、何のです……?」

「ふふ。お兄ちゃんの連れてきたお客様ですからね。料理を作らないと」

「ほ、ホントに?」


 ルコットはとてもにこやかな笑いを向けていた。

 長い黒髪を後ろで一本に束ねエプロンを付けている様は可愛らしいのだが、まだ包丁は持ったままである。

 ソファーで俺の隣に腰掛けている女神様はビクビクだ。

 仕方ない。


「なあ、ルコット。リアが怖がってるから包丁を置いてやってくれ」

「あ、これは失礼しましたリアさん」


 俺の言葉で、ようやくルコットは包丁を置く。

 まったく、人見知りなのも困ったものだ。


 その後、俺たちはルコットの振る舞ってくれた料理をいただくことになった。


「ルコットさんの料理、美味しいです!」

「ふふ、そう言っていただけて何よりです」


 リアは始めこそビクビクしていたが、ルコットと話すにつれて徐々に収まってきたらしい。

 ちなみに俺とリアの出会いについてそれとなく話したが、女神であることは念のため伏せておいた。


「そっか。お兄ちゃんはギルドをクビになっちゃったんだ……」

「でも、それは全てあの糞ギルド長が悪いんです! アリウス様はとーっても強いのに」

「……それでリアさんは、お兄ちゃんのギルド立ち上げに協力してくれてるってことなんですね?」

「そうですね。アリウス様みたいな方が理不尽な仕打ちを受けるのは納得いきませんでしたから」


 それを聞いてルコットはリアに対して頭を下げる。


「本当にありがとうございますリアさん。正直言うと最初はお兄ちゃんが悪い女の人に騙されてるんじゃないかって、ちょっぴり思ってしまいました」

「いえいえ。誤解が解けたようで何よりです」

「でも、あんまりお兄ちゃんをたぶらかしちゃ駄目ですよ? お兄ちゃんは私以外の女の人に免疫がほとんどないんですから」


 ルコットは可愛らしく「めっ」という感じで言う。

 しかし始めの印象が強すぎたのか、リアは恐々としながら頷くばかりだ。


「それで、お兄ちゃんたちは依頼のあったモンスターを倒しに行くんだよね?」

「ああ。今日は夜も遅いからな。明日にしようと思ってるが」

「村長さんたちは気にし過ぎだと思うんだけどね。実際にモンスターを見た人がいるわけじゃないし」

「まあまあ。村長もそれだけこの村のことを考えてくれてるんだよ」


 ルコットの話によれば、このエルモ村の近くでモンスターの痕跡が見つかったらしい。

 どんなモンスターなのかも不明だが、その痕跡から大型のモンスターのものに違いないだろうということだ。


「ま、どちらにせよ明日になってからだな」


 俺はソファーを立ち上がる。


「それよりルコット。今日はまだだろ?」

「ああ、うん。そうだね」


「……?」


 リアは俺たちのやり取りの意味がよく分からないといった様子だ。

 まあ、この機会に見てもらうのもいいだろう。


「早速始めよう」

「うん。分かったよ、お兄ちゃん。優しくしてね」

「それじゃ、まず服を脱いで。ああ、リアも手伝ってくれないか?」


 俺の投げかけに、一瞬ぽかんとした顔を浮かべるリア。


 そして――、


「え、えぇえええええ――っ!?」


 小さな家に絶叫が響き渡るのだった。


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【俺だけ使えるスキル奪い放題】王家追放されましたが、世界唯一の《スキル刈り取り》スキルに覚醒しました。無限にスキル収集し無双する~【剣聖】も【勇者】も【聖者】も、弱者を虐げるなら全てを刈り取ります。

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