第14話 称号士の疑問
――何だ、コイツは?
黒衣に身を包んだ男はフードを目深に被り、その顔色は窺えない。
しかし、不気味な雰囲気を放つその様子から俺は構えを解けずにいた。
「称号士に女神、か……。これは面白い。ククク……」
「……」
剣を握る手に力を込める。
「そう焦るな、まだ戦う時ではない。いずれ、な。フフフ……」
男はそれだけ言い残すと、体を黒い霧のようなものに包んで消えてしまった。
何も無くなった街道を見つめ、俺は剣の構えを解く。
「……何だったんだ?」
「うーん、気味が悪いですねぇ。大体ああいうのって何かの黒幕なんですが……」
リアもまたよく分からないことを言っている。
「……念のため後で王都に戻った時、ギルド協会のキールさんに報告しよう。今はエルモ村に向かわないとな」
「そうですね。とりあえずはアリウス様の故郷に――」
「……? リア、どうした?」
リアが一瞬何かを閃いたような顔をして考え込んでいる。
嫌な予感がした。
そして、
「ああー、何てことでしょうー。さっき使った女神の力でまた魔力切れを起こしてしまったみたいですー。このままでは歩けそうにありませんー」
「おい」
リアは力無さそうに地面へとへたり込む
絶対に演技だろ。
「アリウス様ー、すいませんが私のことおんぶしてくださいー」
「はあっ?」
何度か問答を繰り広げた後、結局もう暗くなるからということで俺の方が折れた。
俺は仕方無しにリアを背負う。
「んふふー。すいませんアリウス様」
久々の故郷への帰郷は、女神様を背負いながらというよく分からないものになるようだ。
俺は溜息を漏らしながらも、先程出会った黒いローブの男のことが頭から離れなかった。
――あの雰囲気、人というよりモンスターに近い気がしたが。気のせいか?
――それに、モンスターが出現するあの黒い渦……。今年の暮れに現れるという《災厄の魔物》と関係があるのか?
考えても答えは出そうにないので、俺はリアを背負いながらエルモ村へと向かうことにする。
「ふんふん。なるほどなるほど」
リアが俺の背中で何か呟いていたが、何がなるほどなのかは分からなかった。