第13話 称号士と黒いローブの男
数はおよそ10。
リビングデッドは邪気の集合体とされるアンデッドモンスターだ。
頭蓋を砕かない限りは永遠に動き回るとされていて、討伐依頼を受けることができるのもB級以上のギルドに限定されている危険なモンスターだったはず。
しかし――、
「こんな街道に現れるモンスターじゃないんだけどな……」
「アリウス様、私たちの愛の力でこんなモンスターども蹴散らしちゃいましょう!」
一言多い気がするが気にしない気にしない。
「いくぞっ!」
俺は最も近いところにいたリビングデッドに向けて突進しながら剣撃を見舞う。
ショートソードが頭部を捉え、頭蓋を粉砕するとそのリビングデッドは塵となって地面に崩れた。
――コカカカカカッ!
その一撃を見て脅威と感じ取ったのか、散開していたリビングデッドが素早く一箇所に固まる。
――これに突撃するのは避けた方がいいか。
と、背後でリアが動くのを感じる。
「ふふーん、私だってアリウス様のお役に立ちますよぉ!」
背中から翼を生やして飛翔するリア。
リビングデッドの上空に位置すると、両手を広げて魔法を唱え始める。
普段の言動がアレだったから意外に感じたが、そこだけ見ると神々しくて何とも女神っぽい。
「女神の力、パート2! 聖なる水撃――!」
リアが唱えると、光の雨がリビングデッドたちの頭上に降り注ぐ。
――コカッ!?
雨に打たれるとリビングデッドたちの動きが目に見えて鈍った。
あれはどうやらアンデッド属性のモンスターに有効な聖属性の効果を持つ魔法らしい。
「いまでーす、アリウス様。やっちゃってください!」
リアの声に反応し、称号士のジョブ能力を使用。
青白い文字が目の前に表示させる。
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【選択可能な称号付与一覧】
●豪傑
・筋力のステータスがアップします。
●紅蓮
・初級火属性魔法の使用が可能になります。
・中級火属性魔法の使用が可能になります。
・上級火属性魔法の使用が可能になります。
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「称号付与! 《紅蓮》っ!」
そしてすぐさま動きの鈍っているリビングデッドに向けて上級火属性魔法を放った。
リビングデッドたちの足元から業火が立ち上り、その火柱は全てを飲み込んでいく。
――コカカカカァッ!!
断末魔なのか分からない悲鳴が収まると、そこにいたリビングデッドたちは全て消滅していた。
頭蓋とか関係なしに全て焼き尽くしてしまったらしい。
「やったぁ! さすがアリウス様!」
そうして地上に降りてきたリアと健闘を称え合う。
どうにか撃退できたようだ。
しかし、ブラッドウルフの時に続いてここでも黒い渦か……。
モンスターが発生する黒い渦の話なんてギルドにいた頃から聞いたことがない。
「アリウス様、あれ……」
「え?」
俺はリアの指差した方を見やる。
いつからいたのか、そこには黒いローブを纏った男が立っていた。