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第12話 称号士と黒い渦


「フフフーン、フンフフーン♪」


 グラグラと揺れる馬車の中、隣でリアが鼻歌を歌っている。

 上機嫌な女神様と俺の距離は肩が触れるくらいに近い。


「……なあリア。少し近くないか?」

「えー? だってこれだけ荷物満載ですし、仕方ないですよ」

「そうだろうか?」

「そうですよぅ」


 キール協会長との勝負に勝って、めでたく……、と言っていいかはわからないがC級ギルドとしてスタートすることができた。

 そこで提示された初依頼は俺の生まれ育った故郷、エルモ村での大型モンスター討伐依頼。

 故郷の村が危機に瀕していると知った俺は即決でその依頼を受けることを決めた。


 そうして今はリアと二人でエルモ村に向かうため、行商人の馬車に乗せてもらっている。


「ところで、何でそんなに上機嫌なんだ?」

「エルモ村には妹さんがいるんですよね? アリウス様の妹さん、どんな方なのかなぁと思って」

「妹……、ルコットは至って普通の子だぞ。あんまり変な絡み方するなよ?」

「ルコットさんって言うんですねー。アリウス様の妹さんですし、きっと可愛いんでしょうねぇ」


 俺の妹だからってどういうことだろうか……。

 実際ルコットは少し……、いや、かなり可愛いとは思うけど。


「これでアリウス様のご家族にも挨拶ができますね。もしかしたら恋人に間違えられたり? フフ、ンフフフフフ」

「おい」


 リアはまたしても自分の世界に入っているようだ。

 怪しい笑みを浮かべるさまは、とても女神には見えない。


「そういえば、何であの依頼を引き受けてくれるギルドがいなかったんでしょうね? モンスターの討伐依頼なら普通に受け手もいそうな気がしますが」

「たぶん、報酬の問題だろうな……。依頼書を見せてもらったが、大型モンスターの討伐が絡む依頼とは思えないほど安かった」

「ああ、なるほど……」


 エルモ村は俺がいた時から貧困に苦しんでいた。

 だから、今回の依頼に適切な報酬が設定できなかったんだろう。


 俺を解雇処分にした《黒影の賢狼》のギルド長レブラも拝金主義だったからな。

 レブラなら低報酬の依頼はまず受けないだろうが……。


「それでもアリウス様は依頼を受けた、と」

「……? 当たり前だろ?」

「へへへー、やっぱりアリウス様は素敵です」


 リアがにへっと笑う。

 そして、こともあろうか、俺の腕に抱きついてきた。


 ――いや、何で!?


 腕に柔らかい感触がして、それが何かなんてことは明らかで、肩が触れている時とは比べ物にならないほどに緊張してしまった。


「お客さーん、もう少しでエルモ村に着きやすぜー」


 ナイスタイミングで御者台の行商人から声がかかる。


「…………チッ」


 おい、舌打ちしなかったかこの女神様。


 ……まあいい。

 とにかく、降りる準備をするか。

 そうしてリアを引き離そうとして――、


「おわあああああ!」


 行商人が悲鳴を上げて、馬車が急停車した。


「きゃあっ!」

「わっ、とと……!」


 俺は咄嗟に倒れかかったリアを抱きとめる。

 さっきよりも密着する形になったがそれどころじゃない。


「リア、大丈夫か!?」

「……行商人さん、グッジョブ」

「……」


 大丈夫そうで何よりだ。

 とにかく今は状況確認をしないと。


「どうしたんです?」

「あ、ああ。あれを見てくだせぇ」

「……あれはっ!?」


 見ると、街道の真ん中に黒い渦のようなものが出現していた。


 ――リアと会った時、ブラッドウルフが出現した渦だ……。


「たぶん、またモンスターが出てきますね……」


 真面目モードに戻ったリアが俺の隣で呟く。

 案の定、黒い渦の中心からはモンスターの気配が感じ取れた。

 俺は愛用のショートソードを手に取り、リアと一緒に馬車から飛び出す。


「行商人さん、ここまでで結構です! 俺たちが何とかしますのであなたは逃げてください!」

「か、かたじけねぇ。ご武運を!」


 さて、鬼が出るか、蛇が出るか……。


 俺は剣の切っ先を黒い渦の中心へと向けて構える。

 そして――、


 ――コカカカカカ。


 黒い渦の中心から現れたのは黒い瘴気に身を包んだ骸骨兵《リビングデッド》だった。


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【俺だけ使えるスキル奪い放題】王家追放されましたが、世界唯一の《スキル刈り取り》スキルに覚醒しました。無限にスキル収集し無双する~【剣聖】も【勇者】も【聖者】も、弱者を虐げるなら全てを刈り取ります。

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