第10話 称号士のギルド設立と初依頼
――オォオオオ!!
「やった、やりましたぁ! アリウス様の大勝利です!」
「す、すげぇ! アイツ、キール協会長に勝っちまったぞ!」
「ああ、見たかあの動き。それに高威力の魔法まで……」
リアが歓喜の声を上げ、遠巻きに見ていた観衆からも歓声が上がる。
「いやぁ、参りました。まさかこれほどとは」
「あ、ありがとうございます。キールさん」
「しかし、アリウスさんのジョブ能力は剣や身体能力に関わるものだと思っていたのですが……。まさか魔法まで使用されるとは……。魔法剣士、にしては魔法も剣の威力も強いですよね。一体どのようなジョブなのです?」
キール協会長は解せないという顔を浮かべている。
と、リアが近くまでやって来て、俺の代わりに得意げな表情で答える。
「ふふーん。アリウス様のジョブは【称号士】というつよつよジョブなんですよぉ」
「え? 称号士……?」
さすがにキール協会長でも聞いたことがないようだ。
俺は掻い摘んで称号士のジョブ能力について説明する。
「そんなジョブ能力が……。アリウスさん、あなたは一体……」
キール協会長はふと、リアの方をじっと見詰めたかと思うと納得したかのような表情を浮かべる。
「なるほど……。まさにアリウスさんは女神に選ばれた人というわけですね」
「……」
若くしてギルド協会長の立場に就いているだけあって、さすがの洞察力だ。
伝承の姿よりも小さくなっている上、ヴェールで印象を変えているのにリアの独特な雰囲気から察したのかもしれない。
「あの、キールさん。このことはどうか内密に……」
「ふふ。分かっていますよ」
キール協会長は柔らかく笑い首肯する。
「それにしても、私の目に狂いはありませんでした。これなら安心してお任せできそうです」
「……? キールさん、それってどういう?」
「まずはアリウスさん、あなたのギルド設立を認めます。と同時に、アリウスさんのギルドはC級とさせていただきます」
「え!? E級ではなくC級ですか……?」
ギルドにはランクがあり、階級はA級からE級までが存在している。
そして、普通はどのギルドもE級からスタートするはずだ。
いきなりC級から始まるギルドなんて聞いたことが無い。
「どのランクから始まるかについて、実は決まりは無いのです。それに、アリウスさんほどの強さでE級というのはあまりにも見合っていないと思いますから」
「……いいんですか?」
「私はC級というのも控えめな評価だと思っていますが……。そこはまあ、ギルドメンバーなども増えて依頼も達成していったらということで」
そう言って、キール協会長はお茶目にウインクしてみせた。
「さっすが協会長さん。どこかの節穴ギルド長とは違ってお目が高いですね!」
「ふふ。そう言っていただけて光栄です」
「あ、ありがとうございます。キールさん」
俺はキール協会長に向けて深々とお辞儀をする。
ランクによって受けられる依頼なども変わってくるのでありがたい限りだ。
「さて。ところでアリウスさん。これを見ていただけます?」
「え?」
キール協会長は懐から一枚の紙を取り出す。
それはどうやら依頼書のようだった。
「この依頼、引き受けてくれるギルドがいなくて困ってるんですよねぇ。C級以上のギルドであれば受けることが可能なんですが……。おや、そういえば都合良くアリウスさんのギルドもC級ですね」
「キールさん、まさか……」
「わぉ、協会長さんってばやり手ですねぇ」
俺はにこやかな表情を浮かべているキール協会長を見てため息をつく。
これを見越して手合わせしたいって言ってきたわけか。
「でも、先程の勝負は手加減したわけじゃありませんからね。アリウスさんが強いというのは本当ですよ。もちろん、その依頼も無理強いはしません。受けてくださるならで結構です」
「は、はあ……」
とりあえず、俺は依頼書の内容に目を通す。
王都から離れた場所で大型のモンスターの痕跡が見つかり、その討伐を求むという趣旨だ。
村が近くにあるため、放置すると村人に危害が及ぶかもしれない、と。
それで、場所は……。
「あ……」
「んーと、場所は……、エルモ村? どうします、アリウス様?」
リアが村名を読み上げ、俺の顔を覗いてくる。
どうするかは決まっていた。
「やります! この依頼、受けさせてください!」
エルモ村――。
それは俺が生まれ育ち、今も妹が暮らしている村の名前だった。