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何かがおかしい

越前国 一乗谷 朝倉館 朝倉義景


 何かがおかしい。


 宗滴が死んでからというもの、なにやら国内が上手くまとまらぬ気がする。先日は加賀の一向宗が越前に攻め込んできおった。宗滴が生きていたら攻め込んで無かったと思うと儂は軽んじられているのだろうか。


 景鏡が上手く対処してくれたから本願寺は何とかなったものの、敦賀郡司と大野郡司との確執が表面化してしまった。これは如何するべきか。悩みの種は尽きぬ。


 このままだと大野郡司の景鏡を優遇したと思われかねん。敦賀郡司である、いや、敦賀郡司であった景紀としては面白くないだろう。そのせいで息子が腹を捌いたのだから。


 宗滴が生きておったらば、このようなことにはならなかったであろうな。酒を呑まねばやってられん。若狭から質の良い酒が越前に流れ込んで来ておる。


 儂はその酒を側女に注がせ、一気に飲み干す。どうやら若狭は良く治まっているらしい。確か孫犬丸と言ったか。儂の甥に当たる男だ。有能と聞く。何とか上手く扱えぬものだろうか。


 側女の懐に手を滑り込ませながら考える。そうか、そんなに有能なのであれば一向宗退治に一役買ってもらうのもありだ。後詰めの要請を出し、断れば攻め込む。


 なに、国力差はこちらが上だ。そして儂は孫犬丸の叔父である。保護という名目で攻め込めば公方とて黙るしかないだろう。儂は自分の手を汚さずに一向宗を始末することが出来る。


 しかし、流石に無理があるか。たとえ孫犬丸が了承したとしても家臣たちの反発が大きいはずじゃ。タダ働きなぞ、死んでも断る。儂もそうする。であればどうするか。


 対価を渡せば良いのだ。問題は渡せる対価が無いということである。領地は割譲できん。となると銭か宝物か。それとも娘を与えるか。考えものである。


「これは殿。何やらお悩みのようでございますな」


 儂が考え事をしているとやってきたのは従弟であり、悩みの種である景鏡だ。その景鏡が儂ににじり寄ってくる。儂は侍女を呼び出し景鏡用の盃を持って来させる。


「なに、一向宗のことよ。どうしたものかと悩んでおってな。若狭の孫犬丸を上手く使えぬかと思案しておったわけじゃ」

「そういうことでございましたか」


 景鏡が盃を手にしたので儂は酒を注いでやる。景鏡はそれを一気に飲み干した。良い飲みっぷりである。儂は空になった杯にそのまま酒を継ぎ足した。


「っぷはぁ。これはまた良い酒ですな。さて、殿の悩みですが、浅井を使うというのは如何ですかな?」

「ほう、浅井を?」

「我らの盟友である浅井でございます」

「浅井は武田とは犬猿の仲ではないのか?」

「犬猿の仲でございます。ですので、浅井を上手く武田にけしかけるのです。それを殿が取り持つ。取り持つ代わりに一向宗攻めを手伝わせるのです」

「なるほどのぅ。しかし、果たして上手くいくだろうか」


 景鏡が行おうとしていることはいくつかの障害がある。まず、浅井を武田に攻め込ませる理由が必要である。それも角の立たない理由が必要なのだ。それが一番難しいだろう。


 しかし、考えの方向性は悪くない。そうだ、この際である。小難しいことは景鏡に任せてしまおう。儂を悩ませている罰だ。それくらいしてもらわねば困る。


「この一件は其方に任す。なんとか一向宗征伐に対し、武田もしくは浅井の協力を取り付けてくるように」

「おお、某にそのような大任をお任せいただけるとは。恐悦至極にございまする。必ずや殿の期待に沿ってみせましょうぞ」

「う、うむ。よろしく頼むぞ」


 そういった意図はなかったのだが、それでやる気が出るのであれば訂正はしないでおこう。これで問題は一つ片付いた。一向宗が居なくなれば越前は安泰である。


 さて、少し遊んでくるか。儂は側女を何人か連れて寝屋へと向かうのであった。

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