山名について本気出して考えてみた
本日、頑張って更新しますのでポイントください。
なんとかランキングのトップに食い込んでみたいです。
また、モチベーションにもなりますので、ご協力をよろしくお願いします。
私を助けると思ってください。
永禄五年(一五六二年)一月 若狭国 後瀬山城 武田氏館
山名祐豊が丹後に攻め込んできた。これに対する対策を皆で話し合った結果、まずは防備を固めることで合意した。というのも、こちらの態勢が整っておらず、また降雪の時期に差し掛かって来たからだ。
山名とは事を構えるつもりは無かったので情報が少ない。その情報を家臣達に急いで集めさせた。そして確信する。急いて攻め返さなくて良かったと。
山名には弱点が多い。一つ目の弱点は但馬国は一枚岩ではないということである。
山名には山名四天王と呼ばれている名家が四家ある。朝来郡には太田垣輝延、養父郡に八木豊信、気多郡と三含郡には垣屋続成、城崎郡には田結庄是義。以上の四氏だ。
この中で一番力を持っているのは垣屋氏だろう。なにせ但馬守護代の地位に就いている。播磨の赤松氏の戦で一度は滅亡しかけたようだが、今は盛り返してきているようだ。
他にも七美郡に田公豊高と二方郡に塩冶高清が居るようだ。しかし、彼らは皆、仲が良かったり悪かったりしているようである。
まず、守護の山名氏と守護代の垣屋氏の仲がよろしくない。どうやら何度も戦をしているようだ。山名氏は垣屋氏のせいで直轄地を減らされていると言っても過言ではないだろう。なんだか、当家と粟屋を見ているようだ。
そして垣屋氏は田結庄氏とも仲がよろしくないようだ。同じ但馬国に敵が二つ。彼らは靡いてくれる確率が高いと見ている。
それから八木氏と太田垣氏だ。彼等はどちらが日下部氏の氏長者なのかで争っているようであった。正直、氏長者になったとしても何の得も無い。ただ威張れるだけだ。それなのに争うとは、そんなに名誉が大事かね。
そして二つ目は我等が武田である。実は若狭武田の傍流である武田高信が因幡の鳥取城番になっているのだ。そして、独立したいという野心を抱えているとのこと。悪くはない、悪くはないぞ。
そうと決まれば、また根回しからである。戦と言うのは謀が多い方が勝てるのだと昔の偉い人が言っていた。その言葉を素直に信じることにする。
しかし、何故攻め込んできたのか。一色氏の後詰めの他にも理由はあったようだ。それは『勢い』である。
この数年前に因幡国に居る同族の山名氏を滅ぼし勢いに乗っているのだろう。その勢いに乗じて攻め込んできたのだ。井の中の蛙だと言うことを理解させてやろう。
そこで俺は叔父御を鳥取城へと派遣した。勿論、武田高信の助力を乞うためである。それから垣屋氏と太田垣氏の両名と接触する。
彼らを味方に引き入れるのだ。垣屋氏と山名氏は争い合っている仲。そして太田垣氏と八木氏も争い合っている仲である。その片方に肩入れをすると言えば、結果は火を見るより明らか、のはずである。
「何処も彼処も戦ばかりで嫌になるな」
戦の用意をしている張本人が述べる言葉ではないのだが、畿内では未だに三好と六角、畠山、浅井の連合軍が睨み合っている。もうすぐ半年になるのではないだろうか。
このまま不毛な睨み合いが続いてどの国も国力を落としてくれると嬉しいのだけど、流石にそうも続かないだろう。農繁期である三月までには動きがあるはずだ。
「どうしたのです? そんな黄昏ながら空を見上げて。寒いので戸を閉めますよ。お風邪を召してしまいます」
尼子孫四郎が強引に扉を閉める。確かに寒い。これは否定できない事実だ。何か改善案を考えなければならないな。
毛皮は暖かいけど量産することは出来ない。綿花を育てることが出来れば良いのだが、如何せん種が無い。そもそも育て方が分からない。
それならば、酒精の強い酒で身体を温めるか。ロシアなど最北の国ではヴォッカで身体を温めるからな。蒸留すれば酒精は強まるが、美味しいかどうかは別問題だ。
「何をそんなにニコニコしているんだ?」
「え、笑顔でしたか?」
「ああ、嫌という程の満面な笑みだったぞ」
そう言うと少し照れたのか、頬を紅潮させる孫四郎。一体何をそんなに喜んでいたというのだろうか。問い質してみる。
「もうすぐ戦ですよね。某も参戦できると思うと血沸き肉躍る思いでございます!」
そうだ。次の戦には連れて行くと言ってしまったのだった。そして我々と山名との対立は決定的。もう戦は避けられないのが現状だ。
「あー、うん。そうね」
「ばったばったと八幡太郎が如く敵を薙ぎ倒して御覧にいれましょう。そのために又左殿から槍の手解きを受けているのです」
よりによって又左衛門か。いや、確かに「槍の又左」という異名を持つくらいだし槍の扱いには長けているのだろうけど、もっと、こう、常識のある人物から習って欲しかった。
「失礼いたしまする」
そんな話に花を咲かせていると、一人の若武者が戸の奥から声を掛けてきた。孫四郎の表情が変わり、戸の傍で膝をつき襖を開ける。そこに居たのは一色重之であった。すぐさま孫四郎が太刀を持って控える。
俺が一色重之を呼び出したのだ。実はこうして相まみえるのは二度目である。一度目はゆっくりと話すことが出来なかった。歳は俺と同い年くらいだろうか。お家の事情で元服は済んでいる。
「お呼びでございますか?」
「ああ。近況を聞いてみたくてな。どうだ?」
彼も小姓として取り立てようかと思ったが止めた。信用していない訳ではないが寝首を掻かれるのが怖かったのだ。彼の父兄を死に追いやったのは他の誰でもない。この俺である。そして、これはオレが背負うべき業だ。
それに兄から譲り受けた優秀な臣下が彼の許には居る。少量であれば領地を与えても問題ないと判断したのだ。なにより彼の兄との約束もある。
「何不自由なく過ごさせてもらっておりまする。御配慮、痛み入りまする」
「気にするでない。其方の兄上との約束だからな。それは守る。だが、一つだけ問題が生じた」
「と申しますと?」
「山名右衛門督の息子が一色氏の名を騙り、丹後に攻め込んできているのだ」
母親が一色氏の出なだけあって、あながち間違いではないのが癪に障る。恐らく、一色氏は俺が攻め滅ぼしたとでも思っているのだろう。現に一色義道と一色義定は処断している。
「其方は父の、いや兄を廃嫡し一色氏を継いだ。違うか?」
「違いませぬ」
「正しい一色氏の後継は誰だ?」
「……某にございまする」
言わせている感は否めない。だが、こうして口に出すことで自覚を促す側面も担っているのだ。さて、後は一色重之の判断を尊重することにする。
「右馬三郎、其方はどうしたい?」
「……」
「別に誅する必要が無いのであればそれでも良い。ただ純粋に、其方がどうしたいと思っているのか知りたいだけだ」
俺は脇息に持たれかかり、くつろぎながら重之に尋ねた。本当にこれは雑談。どう答えても未来は変わらないのである。
ここで重之が何と答えようとも俺は但馬に攻め込む。違う方法で攻め込むだけである。この判断は自身で下さなければならないものだ。強制ではなく、彼自身が一色の名を継ぎたいと思っているのかどうか。
「正直、父に好感は持っておりませんでした。しかし、兄上は心から尊敬しておりました。勇猛果敢で国衆からも信頼されておりました兄上を。私はその兄を穢しとうはございませぬ。某がその名を守る。某こそが一色の当主にございまする!」
小声でぽつぽつと話し始めた重之。しかし、最後は兄譲りの野太い声で力強く高らかにそう宣言した。
やはり一色義定は手本となるべき御仁だったようだ。その熱量に応えるため、負けないよう声を張って応える。
「相分かった! では一色の名を騙る愚か者に共に制裁を加えに行こうではないか! 戦の用意を致せ!」
「ははっ!」
重之が深く頭を下げる。まずは彼らに戦の用意をさせる。先鋒は間違いなく一色重之だ。どちらが一色の正嫡かを争う戦になったのだ。出陣まで時間はあるが、準備は入念に行うに越したことはない。
さて、どうするべきだろうか。やらなければならないことは丹後国の熊野郡の奪還だ。叶うならば豊岡の平地を平らげたいが、それは難しいと見るべきだろう。
まずは松倉城と六体城の奪還からだな。争点は久美浜と備後衆山の砦だろう。どうやって攻め込むか。勢いに任せてああは言ったが、今は待ちだ。正月過ぎだし寒い。寒いと怪我をする確率が高くなってしまう。
それに二月と三月は農閑期だ。向こうも十分な兵を用意できてしまう。戦うなら四月か五月だ。こちらには銭で雇って鍛えている兵が居る。数は少なくとも、それらを上手く使えば十分に奪取できるはずである。
俺は雇い兵を使った新たな戦を行ってみたい。そう密かに画策していた。
いわゆる電撃戦だ。向こうの準備が整っていない間に叩く。それに、因幡の武田や垣屋、太田垣の調略を進めるにはそれだけの時間が必要である。
問題はそれを誰にやらせるかだな。位置的には松宮清長だろう。しかし、彼一人に三人の調略は荷が重い。補佐を誰に任せるか。
一人は一色重之だろう。彼の父は人望が無かったが、兄は人望があった。その地盤を引き継いでくれれば熊野郡は安泰だろう。
武田高信の調略は当初の予定通りに叔父御に依頼しよう。一門の人間が話した方が分かりが良いはずだ。
残すは垣屋氏と太田垣氏の両名だが、山県源内と宇野勘解由に任せることにしよう。もう、武一辺倒とは言ってられない。うん、これで決まりだ。
それ以外は領内の仕置きを進めてもらうことにする。若狭と丹後の石高を九万石と十一万石まで底上げしたい。
正条植えや塩水選等、そのためにやれることはやった。あとは開墾を進めることしか出来ない。やはり棚田だな。
まずは高浜の日引と宮尾で棚田を導入してみよう。そのためにも新たな農具を開発する必要がある。鋤と鍬、それからスコップやシャベルも必要だな。これで少しは改善できるはずだ。
後は鴨だ。やはり鴨が欲しい。鯉よりも鴨なのである。これは組屋源四郎に用立ててもらう必要がある。鴨があれば鴨蕎麦を食べることもできる。鴨と葱と蕎麦。絶対に美味しい。
「孫四郎、松宮玄蕃允と叔父上、それから山県源内と宇野勘解由の両名を呼び出すよう手配してくれ」
「かしこまりました」
戦と内政と外交。考えることが多過ぎて嫌になる。それでも昼夜を問わず、考え続けなければならないのだ。俺は気持ちを新たに運ばれてくる書類に目を通すのであった。
Twitterやってます。フォローしてください。
https://twitter.com/ohauchi_karasu
モチベーションアップのためにポイントください。
ご協力、よろしくお願い申し上げます。