戦終わって
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その後、建部山城に入城する。大きな戦をする事無く建部山城は開城した。どうやら一色義道は建部山城に居ないようである。まずは罠が無いか建部山城を隈なく調べ上げる。
そして城内に残っていた者を縛り上げていく。女子供に至るまで全てだ。勿論殺すつもりは無い。城内が落ち着くまでの処置である。其の後、出自によって処遇を決めよう。
こういう所には往々にして間者などが潜んでいるものだ。その辺りは与左衛門に探ってもらうことにする。蛇の道は蛇だ。そして金銀財宝の類は接収だな。借銭の返済に充てる。
しかし、その量が少ない。何故か。それは恐らくだが一色義道が持って逃げたからだろう。命よりも、息子よりも銭が大事だったか。銭の使い方を知らぬ男よ。
その割に兵糧も武具も置いたままであった。馬もそのまま置き去りにされていた。典型的な悪徳領主だな。これで民が付いてくると思ったのだろうか。このような形で子育ての大切さを教わるとは思わなかった。
建部山城に続々と将兵が集まってくる。山内一豊も堂奥城を落とし、矢野備後守と共に建部山城にやって来た。
「中々に良い城だな」
「腐っても一色氏の本城でございますので。それに一色式部大輔が領民から巻き上げた銭で派手に改修を行ったのでしょう」
そう言って不貞腐れる沼田上野之助。どうやら彼は後先を考えない無能が嫌いのようである。俺も愛想を尽かされないよう、頑張らなければ。
総出で建部山城の調査を行い、粗方が完了したところ、城の麓がにわかに騒がしくなった。何事かと護衛についていた宇野勘解由が見に行く。その勘解由が慌てた様子で俺の許に戻ってきた。
「熊谷大膳亮様が一色式部大輔を捕らえてお戻りになられましてございます!」
どうやら俺の読みは当たったようだ。息子を捨て駒にして自身は弓木城に逃げ込む。領主としても、親としても風上におけない男とは正にコイツのことだ。
「捕らえた者共を全て集めよ。将から兵に至るまで全てだ。そして我が将兵も集めよ。首実検も行う」
「承知しました」
さて、論功行賞だ。誰をどう評価するべきだろうか。個人的には一色義定を抑え込んでくれた松宮清長が良い仕事をしてくれたように思う。しかし、慣例に倣うとするならば一色義道を生け捕った熊谷大膳亮が大手柄だろう。
俺は衣服を整えてから表に出る。そこには数十、いや数百といった数の将兵が縛られ座っていた。俺は指定された床几に座り、刀の柄に手をかけた。と言ってもまだ首実検をする訳ではない。何故なら生け捕ったからだ。
「この男が一色式部大輔義道にございます」
そう言って最前列の正面に座らされる一色義道。三十半ばだろうか。贅の限りを尽くしてきましたと言わんばかりの腹。そのせいで年老いて見える。彼は不安そうな表情で此方の様子を窺っていた。
「さて、一色式部大輔殿。贅の限りを尽くしているようですな。丹後の領民から助けて欲しいと願い出があったのだ。それに関して何か申し開きはございますかな?」
これは半分嘘だ。そんなものは直接貰っていない。あくまでも俺が攻め込んだのは借銭のために丹後国を切り取りたいと考えていたからである。ただ、国衆を調略するために百姓は使わせてもらった。
今回の建前は①正当な丹後守護は若狭武田氏である②丹後の領民が圧政に苦しんでる③最初に一色氏から攻め込んできたの三つの理由からだ。我ながら良い理由をこじつけられたと思う。
「ううう、何もござらん。何卒、何卒お慈悲を。儂が間違っておった」
鼻声になりながらそう述べる一色義道。だからといって許す訳にもいかない。周囲の家臣に目配せを送る。誰もが溜息を吐いて頭を抱えていた。
「仮にも一国の主であろう。毅然とした態度で己の役目を全うされよ」
そう述べて伝左衛門に合図を送る。彼は一つ頷いた後、数人の兵に引きずられてこの場を去っていった。その際も「嫌だ」「死にたくない」などの言葉を述べながら無理やり連れて行かれた。あんな男、処してしまえ。
まあ、良い。あれは前座だ。本命はこの男である。一色五郎義定。間近で見えるのはこれが初めてだ。俺よりも少し年上、十五、六というところだろう。父とは体型が似ているが、彼の場合は筋肉である。
「其方が一色五郎義定か。随分と我が軍を苦しめてくれたな」
そう述べて僅かに微笑む俺。それとは対照的に一色義定は不機嫌とした表情を浮かべていた。目つきは鋭く、今にも俺を殺さんと言わんばかりの目だ。
「……さっさと斬れ」
そう呟く一色義定。どうやら俺とは話をしたくないようだ。しかし、俺は違う。お前を仲間に引き入れたい。一色義定は有能な男である。殺すには忍びないのだ。
「どうだ、一色五郎。俺に仕えてみんか? 高禄を持ってお主達を迎え入れようぞ」
「ぺっ」
そう述べた俺に唾を吐きかけた一色義定。これには周囲の家臣達も床几を倒して立ち上がり、刀の柄に手をかけた。どうやら早く殺して欲しい。そういうことのようだ。
「何を!」
「貴様ぁっ!」
立ち上がる沼田上野之助と梶又左衛門。上野之助が取り乱すところを初めてみた気がする。これは良いものを見ることが出来た。服の裾で顔を拭う。
「静かにせい」
「ですが―—」
「静かにせいっ!!」
梶又左衛門を一喝して黙らせる。ここで怒ってしまったら俺の器が知れてしまう。そうではない。お前達を併せ呑む程の度量を持ち合わせていることを示さねば恭順はしないだろう。ただし、この男は別だ。
床几から下り、五郎義定の正面に胡坐をかいて座る。そして彼を正面から見つめた。五郎義定も俺を見る。こと、この場では我らは対等なのだ。もう、権力も何も世のしがらみは関係ない。
「そうか。どう足掻いても降ってはくれぬか」
「某は武士にござる」
取り付く島も無くなってしまった。それであれば今後のことを話すことにする。俺は彼に敬意を表したい。出来る限りの望みを叶えてあげることにする。武士の情けだ。
「あい分かった。では、其方に免じて家臣や領民の罪は問わないものとする。他に願いはあるか?」
「……願わくば一色家の存続をお許しいただきたい」
「ふむ」
別に一色氏を滅ぼしたくて滅ぼした訳ではない。あくまで丹後国が欲しかっただけである。一色氏は滅ぼすよりも取り込んだ方が良いだろう。しかし、義定の他に一色は居るのだろうか。
「であれば其方が私の許に下るのが良いのではないか?」
「それは出来ぬ。あくまでも某は若狭武田に弓を引いた身。その恥辱を受けておめおめと麾下で生き延びれぬ」
仮にも名門の一色氏だ。そうおめおめと軍門に降ることは出来ぬか。それも甲斐武田ならまだしも若狭武田だもんな。俺自身、その自覚は十分に持っている。
「では、誰が一色を継ぐのだ?」
「弟の右馬三郎に」
どうやら弟が居るようだ。一色右馬三郎重之という名の弟が。彼は三男なのだという。次男は直ぐに亡くなってしまったのだとか。こればっかりは致し方ない。
「右馬三郎、よろしく頼むぞ」
「……ははっ」
直ぐ傍に控えていた重之が頭を下げる。まだ若い、下手したら俺よりも年の若い少年だ。
「分かった。ではその弟を千石、いや二千石で召し抱えよう。それで如何だ?」
「御配慮、忝い」
縛られたまま頭を下げる一色義定。熊のような見た目をしているにも拘わらず、中々どうして礼節を弁える教養の高さも窺えるではないか。ますます死なすには惜しい存在だと認識してしまう。
「一色右馬三郎とやら。其方は俺に忠節を誓うことができるか?」
「……出来まする」
一色重之は兄を見て、家臣を見て。そして目を閉じてじっくりと考えた後にはっきりとした言葉で俺に宣言した。そこに嘘偽りは無いものと考える。
「もし、其方が家中を掌握していたら丹後への侵攻は不成だったであろうな」
一色義道のせいで丹後が腐敗し、一色義定が頭角を現しつつある今だからこそ、丹後は攻略できたのだ。
もし、これが十年ほど後ろだったら手古摺っていただろうな。二十年ずれたら尚のことである。
物事を成すには天の時、地の利、人の和の三つが大事になってくる。今回は一色義定が成熟する前に攻め込んだという天の時と一色義道の圧政という人の和の乱れがあって勝ちが転がってきたのだ。
「ふっ。俺も其方のように家督が転がってくれば良かったのだがな。中々どうして。踏ん切りがつかなかったわ」
そう言って憑き物でも落ちたかのように笑う義定。ああ、ここで有能な将を一人失うのか。彼を説得出来なかったのは俺の不徳の致すところである。
まずは父親である一色義道を処す。彼奴は切腹などさせぬ。ただ首を切り落として晒し首にして終わりである。
「父親は責任を持って一色氏の菩提寺に奉ろう」
「忝し」
「一色五郎を内藤筑前の元に預けておけ」
「ははっ」
引っ立てられながら一色五郎が歩いていく。五郎義定は一度、内藤重政に預けることにした。これで丹後一色氏を降したことになる。
ふぅと溜息を吐く。いかんいかん、勝って兜の緒を絞めよだ。まだ国衆たちの仕置きが済んでいない。滅ぼす国衆、懐柔する国衆を選ばなくては。
まだまだ仕事が山積みであった。むしろ、戦が終わった後の方が忙しいと思うほどに。
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