家臣団と方針
皆様、ポイントありがとうございます。
まだまだ前のポイントには程遠いですが、少しだけやる気が出てきました。
これからも応援よろしくお願い致します。
ここからが第二章だと思っていただいて結構です。
第二章もよろしくお願い申し上げます。
永禄三年(一五六〇年)八月 若狭国 後瀬山城
そこからは速かった。まず、父の兄弟を抑え込むために将軍である足利の、征夷大将軍の権威を借りることにした。
伯父である将軍の足利義輝に俺が国主であると認めてもらうのだ。勿論、これは簡単に認めてもらえた。何せ、血の繋がった親族なのだから。
流石に祖父の兄弟も父の兄弟も将軍家を敵に回すことは考えなかったようだ。いや、それとも俺には勝てないと踏んだのだろうか。武田信景、父の二番目の弟が俺に合力してくれた。
これで、新しい若狭武田はこのような布陣になった。
【一門衆】
武田右衛門佐信景
明智十兵衛光秀
父の弟、つまり叔父の信景と外戚の十兵衛は一門として取り扱う。今、我ら若狭武田は内紛に次ぐ内紛で身内の数も減ってきている。一門が心許ないと軸がずれてしまうのだ。
【四老】
内藤筑前守重政
熊谷大膳亮直之
武藤上野介友益
逸見駿河守虎清
新たに武田の四老は粟屋を除き、代わりに熊谷を入れることにした。武田四老は維持することにする。若狭を盤石にするまで維持だ。
【大身分】
松宮玄蕃允清長
白井石見守光胤
香川右衛門大夫
寺井兵部家忠
彼らは譜代と四老の間に位置する知行取りの武士である。一国一城の主だ。二千石から三千石前後の領地を治めている。
【譜代衆】
市川山城守定照
一宮壱岐守賢成
畑田加賀守泰清
山県下野守秀政
安芸の頃から付き従っている譜代の家臣たち、また、若狭に根付いていた地侍で古くから我らに付き従っている者たちだ。多くても二千石ほどの領地を治めている。
【奉公衆】
沼田上野之助祐光
宇野勘解由弥七
山県源内政親
大塩長門守吉忠
陪臣や蔵米取りの武士たちが該当する。ただ、上野之助だけは別格だな。だが、贔屓していると思われ、他の者が腐っても困る。何か良い手を考えなくては。
【馬廻衆】
山県孫三郎盛信
広野孫三郎高元
熊谷伝左衛門直澄
【浜衆】
菊池治郎助助蔵
梶又左衛門信盛
彼らは馬廻と浜衆だ。浜衆は小浜に住んでいる武士である。誰も彼も武には自信を持っている者たちだ。戦が起きた際には傍に控えさせておきたい。
【外様衆】
山内伊右衛門一豊
前田又左衛門利家
新たに召し抱えた者たちである。彼らを出世させることにより、他の優秀な者たちが集まる地にしたい。若狭は平地は無いが立地は良いのだから。
【小姓】
尼子孫四郎
主だったところではこの辺りだろうか。見れば分かる通り外様衆が少ない。これは内輪で治まってしまっている証拠である。もっと有能な人材を確保していかなければ。
それから母衣衆を選抜することにしよう。今回の功から宇野勘解由と広野孫三郎を母衣衆にしようか。伝左はもう少し俺の側に居て欲しい。
一門衆も少ないが、此処を増やす手立ては無い。恵瓊がやって来てくれるのであれば、叔父の娘を娶らせることも可能だ。母方は……足利だ。流石に迎え入れるには忍びない。ここは諦める他無さそうだ。いや、待てよ。
公方にお願いして三淵大和守か細川兵部大輔を招き入れるか。
彼らの姉が大叔父である武田信高の妻だ。つまり、彼等も我が武田の一門と言っても過言ではない。まあ、武田信高には新保山城で謀反されたんだがね。
いや、どちらも公方は手放さぬであろうな。しかし、他に手が無いのも事実。駄目で元々。葬儀の時にでも彼等に尋ねてみるとしようか。
それから六角にも使いを出さねば。勿論、銭をせびるためである。それと、当分の間は戦に加わることが出来ないということを伝えるためでもある。まあ、六角も阿呆ではない。理解しているだろう。
問題は浅井よ。恐らく、浅井は俺を敵視しているだろうな。いや、敵視されていると思っているだろう。そりゃそうだ。父を殺したのだ。敵視されていないと思っていたら大間抜けである。だが、俺は浅井を敵視していない。
いや、この言葉だと誤解がある。浅井を敵視することが出来ないと言う方が正しいだろう。そのことを伝えなければ。俺は葬儀の準備に忙しなく動いている家臣達を集めて述べた。
「俺達の今後だが、まずは一年。しっかりと力を蓄える。大飯郡の安定を図る。領地替えが起きるやもしれぬが、理解して欲しい。銭を稼ぐぞ」
銭こそ力だ。澄酒と椎茸、蒸留酒で銭は稼げている。更に産業を拡大させねば。まずは蕎麦だ。鶏卵と乳牛の用意は出来ている。そこから銭を生み出すぞ。蘇を製造する計画が頓挫したままだ。これを動かそう。
それから保存食の研究だな。梅干しなどの塩漬けや酢漬けを研究、発展させねば。籠城に備えることは大事である。いっそ、城の中に生簀でも拵えるか。
そして最後に浅井についての対処を述べた。ここまでは皆が理解を示してくれている。最後の浅井との和睦を何とか理解させねば。
「そして、浅井とは和睦する。一年後、丹後を切り取るぞ」
「お待ちを! 何ゆえ浅井ではなく丹後の一色なのでございまするか!?」
最初に噛み付いたのは武藤友益であった。彼にしてみれば浅井新九郎は生き恥をかかされた敵である。簡単に和睦と言われても呑み込める訳が無いだろう。
「武藤上野介よ。俺が浅井新九郎を憎う思っておらぬとでも思っておるのか?」
「いえ……それは」
そう言って口籠もる武藤友益。俺は全員を見回してゆっくりと口を開く。ここで俺達の立ち位置を全員と共有しなければならないのだ。
「俺は浅井新九郎が憎いぞ。憎いが和睦するのだ。それはこちらが若狭の小国。石高は大飯郡を平定しても八万石だからだ。それに対して浅井新九郎は京極氏を追い出し北近江を支配している。その石高は二十万石を超える。更に彼奴等の後ろには朝倉も居るのだ」
具体的な数字で現実を突きつける。彼我の差は二倍以上開いている上、向こうには朝倉も居るのだ。そう簡単に手出しができる訳が無い。そのことを理解してもらわねばならん。
「し、しかし六角は未だ健在にございます。六角と手を組めば浅井など蹴散らすことが出来ましょう。それに朝倉のご当主である左衛門督様は縁戚ではございませぬか」
「もっと広く、全体を見よ。畿内は三好が支配している。そして公方様は三好が憎いのだ。浅井と朝倉、六角が争い始めたら和議を結ばせようとするに決まっている。其の方は心の底から六角に信を置くことが出来るのか?」
これだから大人の世界は嫌になる。権謀術数が蠢くとは正にこのこと。あっちが立てばこっちが立たないのだ。そもそも、六角が当てになるのかという話でもある。俺達は自力で力をつけなければならんのだ。
とは言え、俺は三好――正確には内藤だが――と密約を交わしている。三好は間違っても攻め込んでこないだろうが、万全を期すに越したことはない。相手は直ぐ裏切る松永の弟だぞ。
残念なのは密約を交わしたにも関わらず、それを行使しないで家督を継いでしまったことだ。こればかりは残念で他ならない。
「仇を討ちたいのであれば丹後を喰ろうて力を付けよ。いや、丹後だけではない。但馬も喰らって力を付けるのだ。その時が仇討ちの好機ぞ! 努々、肝に銘じよ!!」
「「ははっ」」
最後は熱量で、情熱で押し切った。とはいえ若狭・丹後・但馬の三国を奪っても三十万石に到達しない。だが、更に西へ伸ばすのは危ない。尼子と領地を接することになるからだ。因幡は悩みどころである。
全員と今後の方針を擦り合わせて解散する。皆に俺の思いは伝わっただろうか。
蝉の音だけが嫌に大きく、耳に入るのであった。
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