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毒殺と後継ぎの問題

感想で要望のあった朝倉の状況になります。

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永禄十一年(一五六八年)二月 越前国 朝倉屋敷 朝倉景鏡


 今、朝倉家の雰囲気はすこぶる悪い。というのも御屋形様の御子である朝倉阿君丸が体調芳しくなく、臥せっているのだ。回復の兆しは見えない。このまま行けば、最悪の結果が頭を過ぎる。


 何がつらいって、儂が疑われているのがつらいのだ。確かに御屋形様の世子が居なければ養子をとることとなる。誰からとるか。儂の子しかおらんだろう。


 儂の子と御屋形様の姫を結婚させて、婿入りさせる。儂がそう考えていると思っているのだろう。困ったぞ。どうするべきか。うろうろと屋敷の中を歩き回りながら検討する。


 忌々しいのは山崎新左衛門尉吉家よ。徐々に頭角を現し、昨年の堀江中務丞景忠が謀叛した際には儂が讒言を流布して失脚させたなどと吹聴しておった。まあ事実なのだが。


 山崎も儂の邪魔になるのは必定である。早々に排除したいが、果たして。


 家中は今、二つに割れておる。一方は儂が率いている一門衆。大野郡司を蹴落とし、儂が筆頭となっている。なっているが、朝倉右兵衛尉景隆が台頭してきている。邪魔だな。


 もう一つは山崎新左衛門尉吉家が率いている年寄衆である。譜代の家臣が中心となっている勢力だ。先に山崎をやるか。それとも右兵衛尉をやるか。


 殿が心を痛めているからこそ、儂が代わりとなって家中をまとめねばならんのだ。さすれば、殿も心置きなくお世継ぎをつくるため、閨に籠れるというもの。


 しかし、もう一つ懸念があるとすれば殿と奥方の仲が拗れ始めているということである。子は鎹というが、まさにその通りだと実感している。


 誰か別の女子をあてがうか。側室に送り込んで男児を生んでくれればなお良い。儂の息の掛かっている者であればこの上ないくらいだ。そういえば。


「誰か居るか!?」

「はっ」

「美濃から斎藤兵部少輔なる者が流れておったな。儂の元へ連れて参れ」

「かしこまりました」


 斎藤兵部少輔には美しい娘が居たはず。それを殿の側室として送り込もう。そうすれば殿とその娘の間に子を授かるかもしれん。阿君丸の件は……朝倉右兵衛尉が毒殺しようとしていると吹聴しよう。


「殿、来客にございます」


 家臣の一人が申した。先触れも無しに尋ねてくるとは、一体誰であろうか。少し不機嫌になりながらも家臣に尋ねる。


「誰じゃ?」

「武田伊豆守様が家臣、菊池治郎助様にございます」

「おお。今すぐ通せ」


 伊豆守殿から儂に用があるとは珍しい。これは恩を売る好機だ。使者殿に会うため、身なりを整え咳払いをしてから部屋に入った。


「お待たせして申し訳ござらぬ」

「なんのなんの。突然のご訪問、誠に申し訳ございませぬ。御屋形様より、こちらの文を式部大輔様にお渡しするよう、御下命仕りましてございまする」

「拝見しても?」

「はい。返書を認めていただきたく」


 菊池治郎助より文を受け取る。その場で拝見して良いとのことだったので文を開いて読み進めた。ほう。どうやら伊豆守殿は能登に攻め込むようだ。そのため、三國の湊で補給を受けたいという。


 儂に話を持ってくるあたり、わかっておられる。さて、どう返事しようか。伊豆守殿が能登を治めた場合、我らに利はあるだろうか。


 ある。儂らが頭を悩ませているのは加賀の一向宗どもよ。伊豆守殿が挟撃してくれるというのであれば儂らとしてもありがたいこと、この上ない。


 いや、待てよ。伊豆守殿の義理の祖父はあの武田徳栄軒信玄だ。そして徳栄軒信玄は本願寺の顕如と義兄弟にある。一向宗に味方されても困るぞ。


「我らは今、加賀の一向宗に頭を悩ませておりましてな」

「お察し申す」

「伊豆守殿が加賀の一向一揆鎮圧にご助力願えるのであれば我らとしても惜しみない助力を致そうではないか」

「そのお言葉、書に認めて頂戴しても?」

「構わぬ。用意しよう」


 席を立ち、返書を用意する。加賀が安定するのであれば願ったり叶ったりだ。西の若狭はこの通り、儂と友好的な関係を築けている。南の飛騨は山だらけで越前に進軍すらままならない。


 越中は上杉と武田が争っている。争いが続いている限りは安泰だろう。しかし、能登を伊豆守殿が獲るとなると越中も荒れるやもしれん。武田に加担するは必定である。


 それも加筆しておこう。越中と加賀の安定にご助力願えるのであれば儂は協力すると。これが上手くいけば家中での儂の地位も上がるだろう。伊豆守殿の覚えめでたいのはこの儂だ。


「用意いたした。こちらを伊豆守殿にお渡しいただきたい」

「ありがとうございまする。では、某はこれで」

「そう急がずとも。こちらは行きがけの駄賃ではないが、受け取っていただきたい」


 菊池治郎助に銭を握らせる。伊豆守殿の家臣だ。少しくらい良い顔をしておいて損はない。儂のこと、良いように伝えておいて欲しい。


「ですが――」

「構わぬ。ささ」


 無理やり懐に仕舞わせ、席を立たせた。これで越前と朝倉は十年、いや二十年は安泰である。ほほほ。

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