黒塗りの書
三國志14PKがやりたい。
個人的には魏が一番好きです。
孫堅か孫策が長生きしていればなぁ……。
永禄十一年(一五六八年)二月 若狭国 後瀬山城 武田氏館
十兵衛から早馬が来た。どうも三村と毛利の繋がりを示す手紙を手に入れたらしい。その写しも送られてきているが、核心を突いた言葉回しをしない毛利には脱帽だ。参考にさせてもらおう。
ただ、これなら何とかなるかもしれない。昔、三国志の万夫不当になるアクションゲームをプレイしたことがある。潼関の戦いだったか、そこで離間の計を用いて馬超を追い詰めたのをよく覚えている。
それを告げれば明智十兵衛なら理解できるだろう。一を聞いて十を知る男だ。三国志くらい、履修しているに違いない。これで毛利に圧力を掛けることが出来るぞ。
黒塗りの報告書は現代日本でも大きな話題となった。どんな時代でも黒塗りの書は人を疑心暗鬼にさせる力があるらしい。
公的機関がやったらお仕舞いよ。信用を失うだけである。なので今回はそれを逆手に取らせてもらおう。
毛利には手を出すなと言いながら我らが備中を綺麗にまとめる。うん、何事もほどほどが一番なのだ。
欲すれば更なる戦を呼び込んでしまう。ましてや、毛利と事を構えるつもりはない。構えるつもりは無いのだ。
オレはそんなことを考えながらとある人物と会っていた。呼び出した人物は二人。長船源兵衛尉祐定と長船与三左衛門尉清光である。
どちらも備前の長船派の刀工だ。だが、最近の備前は腑抜けている。数打ちばかり量産して質が伴っていないのだ。
低頭している祐定と清光の前にどっかと座り、威圧する。少し、お灸を据えてやらねば。数をこなすのも良い。質の悪い刀を売るのも良い。だが、技術の継承をしないのは悪だ。
「あ、あっしに何か御用でございましょうか?」
耐えきれなくなったのか清光が低頭したまま言葉を紡いだ。俺は厳かに、もったいぶって清光にこう告げる。
「其方に頼みたいのは他でもない。もうすぐ俺に子が産まれる。まだ男児か女児かはわからないが、其の方に短刀を作ってもらいたい。一世一代の短刀を頼む」
「へ、へぇ」
「わかっているとは思うが、俺の子だ。下手な刀は渡せん。わかってくれるな?」
「もちろんでごぜぇやす」
「それを聞いて安心した。其の方ら備前には包平から続き光忠、景光、勝光と連綿と続く技術があると聞く。俺も備前の打ち刀を何振りか所持しているが、あれは良いものだ。期待しているぞ」
「へえ! お、お任せくだせぇ!」
「もちろん報酬も弾む。質が良ければ更に二、三振りの打ち刀を頼もう。頼むぞ?」
そう言って祐定と清光にそれぞれ銭を二百貫、反物を二疋、砂金を一袋渡す。これに見合った仕事をしてくれ。いや、してくれるよなという圧力である。
嫌がらせに見えるが、これも備前伝を保つため、心を鬼にして行っているのだ。わかってくれ。
もう少し早く産まれていたら来派と青江派、三条派、粟田口派なんかを保護していたんだがなぁ。美濃の関と備前の長船、加賀から加州を連れて来て城下に刀鍛冶を広めても良い。
山々に良質な木はあるし、湊が近いため大量の鉄鉱石も集めやすい。また、領主が推奨しているとなれば人は集まるだろう。
正直、刀鍛冶では腹は膨れんが、武士の体面を保つ意味もある。良い刀を下賜したい。
正直、日本海に関しては制圧が完了している。奈佐日本之助のお陰だ。山陰から越前にかけては我らの海である。そして、この時代であれば山陰から越前を押さえて居れば十分である。
俺の展望ではそれを加賀まで伸ばすつもりなのだ。そうすればどう頑張っても船で京へと向かうには我ら武田の勢力下を通らなければならなくなる。それが狙いなのだ。
荷の検閲。
誰がどれだけ朝廷に寄進するのか。それが判明すれば怖いものはない。そもそも、俺と敵対している人間は日本海が使えずに苦心するだろう。
さて、次の狙いは瀬戸内だ。そう考えると備前だけでは心許ない。播磨が欲しい。今、我らの勢力下にあるのは西播磨だけである。別所の治めている東播磨が欲しくなってしまう。
だが、時期尚早というものだろう。どの道、讃岐や淡路を押さえられなければ瀬戸内を抜けられてしまう。そのためには、三好が邪魔になってしまうのだ。
さらに考えなければならないのが村上の水軍よ。能島、因島、来島の三つに分かれ瀬戸内を支配している海賊。ただ、三家に分かれているということは取り入る機会もあるということだ。
どこを優遇し、どこと敵対するか。三家で疑心暗鬼になってもらえればそれだけで儲けものである。そのためには毛利に弱ってもらわないと。
次の狙いは能登国だが、そろそろ三好と別所に黒川衆を潜めて行こう。段々と領地を切り取れる相手が居なくなってきた。いや、居るには居るんだが、手強い相手しか残っていない。
弱肉強食。その通りと言えばその通りなのだが、溜息しか出てこない。気分転換に娘である牡丹と一緒に孫犬丸と遊ぶことにしたのであった。
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