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勅命

 そんな俺がまず行ったことは兵粮の用意である。兵粮奉行として新たに小西如清を抜擢した。


 堺の商人である小西隆佐の長男なのだが、正親町天皇が京都から宣教師を追放するよう命令があった際、縁が生まれたのだ。


 その時はそれで終わったのだが、誰か良い商人は居ないかと尋ねたところ、武野新五郎が小西如清を推挙したため、彼に兵粮奉行を任せようと思ったのである。


 本来ならば武野新五郎を召し抱えたいところだったが、今はそれどころではないらしい。なんでも今井宗久と父である武野紹鴎の遺産で争っているのだとか。父の遺産などくれてやれば良いものを。


 如清は熱心なキリスト教信者のようだ。正直、キリスト教を今、領内で布教されるのは困る。なので、それは禁じるが本人が何を信仰しようとそれは自由である。

 

「よろしくお願い致しまする」

「うむ。早速だが、糧秣と矢の調達を行って欲しい。十万人が一か月食っていける食糧を用意してくれ」

「じゅ、十万人分でございますか?」

「そうだ。荷の手配を頼む。岡山城まで運び入れてくれ」


 俺は俺で予備の食糧を集める。万が一の籠城に用いるため、南瓜を岡山城へと運び入れるのだ。やはり船は良い。一気に荷を運べるのが大きな利点だ。


 後瀬山城から日本海を通り鳥取城へと運び入れる。そこから南下して津山城に運び込むのだ。後は又左衛門が戻ってくるのを待つばかりである。俺は準備万端だ。早く片を付けたいのである。


「御屋形様。前田殿がお戻りになられましてございます」

「わかった」


 小姓から又左衛門が戻ってきたことを告げられる。ようやくである。俺は又左衛門のいる部屋に足を踏み入れた。又左衛門は低頭したまま微動だにしない。


「面を上げよ」

「ははっ」


 今まで粗野だった仕草が流麗になっている。稽古に励んだ痕跡が見られる。どうだ。落ち着きのなかった又左衛門が頼りに見えるではないか。


「見違えたな」

「士別れて三日、即ち更に刮目して相待すべしと申しまして」


 これではもう若州の又ちゃんと呼ぶことは出来ないだろう。ここまで成長するとは思ってもみなかった。公家衆に鍛えられたと見える。後でお礼の手紙を送ることにしよう。


「それで首尾はどうだ?」

「上々にございます」


 又左衛門が書状を取り出す。帝の勅だ。どうやら朝廷を動かすことに成功したらしい。これは又左衛門だけの功績ではない。全員が一丸となって備中を奪う。その目標に向かって動いた結果だ。


「ようやった!」


 バシンと俺が膝を打つ音が鳴る。全員が努力してくれたのだが、俺は大袈裟に又左衛門を褒め讃えた。それくらいしても許されるはずである。


「兵を集めろ! 戦支度をさせぃ! 帝に代わって三村を誅すぞっ!!」


 そう檄を飛ばす。檄を飛ばすものの、今回の戦に俺は加わらない。するのはせいぜい毛利と尼子、大友に手紙を送るくらいである。


 俺の本命はあくまでも能登。そこにブレはない。ただ、我ら武田は西に目が向いていると見せる必要がある。動かせる兵の半分を西に向かわせるのだ。その数は一万五千。これだけあれば三村は潰せる。


 総大将は一門でもある明智十兵衛に任せる。十兵衛とは密に連絡を取り合っている。良きに計らえで上手く動いてくれるはずだ。黒川衆を走らせる。


 永禄十一年(一五六八年)二月二十二日。忙しくなってきたぞ。

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