子は力、子は希望、子は未来
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永禄十一年(一五六八年)二月 若狭国 後瀬山城 武田氏館
腰が痛い。というのも連日連夜、代わる代わるに求められ励んでいたからだ。文のお腹が目立つようになってきた。それに触発されたのか藤も霞も旺盛なのである。
栄も他人事ではない。生まれは公家の大臣家だが彼女の背景はあまりにも薄い。母親も知れず家族兄弟からも疎まれていたのだろう。栄も栄でこの場所で生き残るのに必死なのだ。
今、俺には一男一女がいる。正直、少ない。子はそれだけで力なのだ。織田信長を見てみると兄弟が男子だけで十一人。子どもの男子だけで十に届きそうな勢いだ。
毛利元就も男児を七人授かっている。子が多いのは力になるのだ。俺には兄弟も居なければ親族も少ない。一門衆が弱いのだ。何とかせねばならん。
この調子だと藤にも霞にも栄にも子を授かることが出来るだろう。妊娠に必要なのはタイミングだったはず。適切な時に適切に行為をするのがその一歩だ。
しかし、俺には最適な時期がわからない。であればどうするか。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる作戦を取るしかないのである。するとどうなるか。冒頭に述べた通り、腰が痛くなるのだ。
これも当主の務めだ。腰の一つや二つ、どうということはない。考えてみれば男にとって夢のような環境じゃないか。文句を言うなんて、それこそ罰が当たるというもの。
子は大切に育てなければ。この子らが未来を創るのだ。まだ、そのようなことを考えている者は居ないだろうが、未来から来た俺はひしひしと実感する。
少子化などとは無縁の世界だが、だとしても、どの時代でも子は宝なのである。これだけは肝に銘じておきたい。
「御屋形様、ご報告にございます」
「入れ」
万千代が入室してくる。なにやら西の方が動きがあったようだ。というのも、尼子と三村が揉めているらしい。三村が弱っている今が好機と見て尼子が動いたか。
尼子と三村の小競り合いは我らには関係のないこととして無視を決め込むこともできるが、尼子に備中に入り込まれると面倒である。
あくまで我らは三村が押さえている備中の領地を掠め盗ることができるのだ。尼子に奪われた場合、俺に残された選択肢としては尼子を滅ぼすしかなくなってしまう。
先に手を打つべきか。それとも朝廷と幕府の意向を待ってからにするべきか。ここは待つべきだ。焦る必要はない。動きたくなる気もするが、我らに関係のないことならば無理に首を突っ込む必要は無いのだ。
「捨て置け」
「ははっ。それと織田尾張守様よりお手紙が届いておりまする」
「寄越せ」
万千代から手紙を受け取り、読み進める。内容は栄との婚儀を言祝いだ手紙だ。祝いの品を送るとも書かれている。また、手紙の末尾に一度会って話をしてみたい。そう綴られていた。
さて、どうしようか。織田は尾張と美濃それから三河も実効支配している大大名である。石高は二百万近くにもなるだろう。そんな大名からの誘いを断っても良いものか。
会うこと自体は吝かではない。美濃と若狭は目と鼻の距離だ。近江の高島郡を押さえている俺からすれば、淡海を挟んで向こうに織田が居る。それだけの距離である。
流石に織田信長に下手な手紙は送れない。祐筆を呼ぶ。紹介しよう。新たに祐筆として雇った内藤重政である。隠居などさせるわけがないだろう。今の仕事は俺の祐筆と孫犬丸の遊び相手である。
「じゃからあれほど筆の手習いをと」
「それは今度聞く。持明院家か西大路家に筆を習うから今は頼む」
重政がぶつぶつと言いながらも筆と硯、紙を用意する。内容はこうだ。お誘いは有り難いが、一刻も早く上京したいとわめいている男が近くにいると思うので、全てが丸く収まったら落ち着いて会いましょう。
これでお茶を濁す。会いたくないわけではない。ないわけではないのだが、今会うと力関係が明確化してしまい、織田に頭が上がらなくなってしまう。
せめて備中と能登。この二つに兆しを見出してからだ。織田に負けない背景を持って接しなければあっという間に取り込まれ、徳川の二の舞になってしまう。それだけは避けたい。
織田は六角と北畠を抜いて京の喉元に短刀を突きつけるのに躍起になっている。三好は六角を助けるだろうか。明日は我が身、昨日の敵とはいえ助けるかもしれん。
「調練の様子を見に行くか」
万千代を連れて調練の様子を査察する。戦はもうすぐそこだ。まずは西。次いで東にて戦が起こる。俺が起こす。永禄十一年は激動の年。転換の年となるだろう。いや、そうして見せる。俺は心にそう誓ったのであった。
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