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漁夫利

https://goo.gl/maps/ugWdnKFCiW6gBMTo9

 坂田郡と犬上郡の境で浅井と六角が衝突した。浅井は野良田の戦いから着々と勢力を伸ばし、一万の大軍を率いて南下を始めていた。浅井は六角と完全に決別した形になる。


 対する六角は国衆達の離反も相次ぎ、多くの兵を動員することが出来ていない。また、南の松永に対しても兵を残さねばならず、六千の兵にて浅井を迎え撃とうとしていた。


 結果はどうなったのかというと、浅井が六角を押し込め、坂田郡から完全に追い出そうとしていた。これで坂田郡は浅井の領地となるはずだった。しかし、あと一押しが出来ない。


 それは佐和山城の北、琵琶湖付近の矢倉川橋を突破できないでいたのだ。山と山の間の隘路となっており、六角が必死に抵抗をしているというのだ。


 この隘路さえ抜ければ彦根はすぐそこなのだが、それが叶わずにいるらしい。迂回して東回りで攻め込めばとも思うが、そちらにも隘路がある。むしろ、そちらの方が危ない。


 長蛇の兵が隘路を進むのだ。里根山城や小野城、それこそ佐和山城から格好の的になってしまう。浅井も手を焼くに違いない。


「さて、事態が動いたな。松永はこれに乗じて必ず攻め込むだろう。となると、三好は目の上のたん瘤であった松永を討つか。これは面白いことになるな。さて、この辺りで六角に恩を売っておくことにするか。源五郎」

「はっ」

「六角と浅井の仲を取り持とうではないか。このまま浅井が勢力を伸ばすのも癪だ。頼めるか?」


 真田昌幸は少し考え、自分の中でどう説得するかの構想を練っているのだろう。それでどうすれば六角を動かせるのか、頭を働かせているのだ。


「御屋形様には文を二通認めて欲しく存じます」

「構わんぞ、内容は?」

「一通は公方様へ。六角が反省し、家督を弟に譲ると。なので、帰参を赦して欲しいという旨を。もう片方は六角へ。家督を譲れば公方様は帰参を赦し、我らもお味方できると」


 足利義秋を追い出したのは現当主である六角義治である。父の六角承禎は足利義輝の忠臣だ。その義治を廃し、弟の義定に家督を譲るのならば義秋も矛を収めるだろう。全ては義治の一存とする気だ。


 問題は六角義治がこの条件を呑めるかどうかだ。今は浅井と一進一退の攻防を続けている。現況で凌げると思えば、この話を蹴るかもしれない。


 浅井は既に石高を四十万石まで伸ばしている。このまま侵攻が続けば四十五万石、五十万石と伸長するだろう。対して六角は転げ落ちる一方だ。後藤や進藤、蒲生が離反しているとなると、既に石高は逆転しているかもしれない。


「これで成るか?」

「五分でしょう。しかし、浅井が押し込むようであれば即座に泣き付いてくるかと」

「わかった。では直ぐに手配しよう」


 浅井は勢いが止まらんな。負けても這い上がってくる強さがある。その点は義兄である信長と似ているかもしれない。その義兄の要請で美濃にも攻め込んでいるようだ。


 手紙を認め、それを真田昌幸に持たせる。すると昌幸は一通――恐らく越前の義秋のものだろう――を弟の信伊に手渡した。


「刻が経てば苦しくなるのは確実に六角でございます。この際でございます、六角にも高島郡は我ら武田が管理することを、正式に認めてもらうことにしましょう」

「ああ、頼む」


 祐筆に手紙を書かせ、最後の署名だけを自分で行う。この時代の文字は未だに慣れない。手遊び程度では上達しないのは理解しているのだが、これこそ筆が乗らない。


 真田兄弟を見送ってから幾日が経過した。そんな俺のもとに客人が現れる。髙木彦左衞門貞久と名乗っていた。駒野城主、どうやら織田信長の家臣のようである。


 その髙木貞久は武者をもう一人、連れて来ていた。三田村左衛門尉国定という男だ。この男、浅井長政の家臣のようである。その二人が一体、何の用だというのだろうか。


 俺に目通りを願っているようだが、まずは堀久太郎と南条宗勝に相手をさせる。織田と浅井の家臣が俺のもとに来た。その内容の予想は付く。味方してくれという話だろう。


 浅井単体では味方してくれないと判断したのか、俺が織田と懇意にしていると聞いて織田に仲介してもらう肚積もりなのだ。織田としても浅井が大きくなり、美濃攻略の助攻をしてくれるのを望んでいるはずだ。


 それだけ浅井の六角攻めは頭打ちなのだろう。俺が高島郡まで出張っているので六角を攻める意思があると思われているようだ。あくまで牽制でしかないのだが。


 ただ、これはあくまで推測でしかない。織田とは懇意にしたいが浅井は父の仇である。どうしようか。やきもきしながら二人が戻ってくるのを待つのであった。

いくつか問い合わせをいただいたので。

「消息宣下」じゃなくて「将軍宣下」じゃないの?

という問い合わせがあります。違いは以下のwikiをご覧ください。


https://ja.wikipedia.org/wiki/消息宣下

https://ja.wikipedia.org/wiki/将軍宣下


個人的には「消息宣下」で合っていると思っています。


①朝廷が衰退しており、将軍宣下をやってられないこと。

②朝廷が将軍宣下に積極的ではないこと。


この時代は消息宣下をして、後ろ盾(お金)がある場合、権威付けのために将軍宣下をさせてくださいと朝廷に申し出るのかなと思ってます。


その辺り、どうなのでしょう。

ご意見ください。あ、いつも通りポイントと感想とレビューとブックマークも欲しいです。


よろしくお願い申し上げます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 略式での将軍任命は消息宣下で正しいでしょう。 ただ武家の棟梁、というか日本の支配者たる将軍を略式ではやらんでしょう。だからこそ義輝死後の空位の時代が出てくるわけで。消息宣下で将軍任命なんての…
[一言] 織田が付き添いできたといっても仲介の動きを始めている中ここで浅井が大きくなるのを手伝う必要もないわけで。 この仲介でいかに六角の中に手を突っ込むことが出来るか。代替わりで離反している重臣た…
[一言] 消息宣下というのは手続きの略式化のことですよね。 これ自体に将軍の任命とかいう意味があるわけではないので、「略式で行われる将軍任命」のことを「消息宣下」と表現するのは違和感があります。 素…
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