終・堀久の大冒険
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馬を走らせ小牧山城に向かいます。その道中、私は武藤殿にお礼を言われました。一人では織田上総介様に会うことすらできなかっただろうと。それは私も同様です。御屋形様の威光が無ければ私も会うことは出来ませんでした。やはり御屋形様はすごい。
小牧山城では池田勝三郎殿がお待ちになられていました。城内の案内は勝三郎殿がしてくれるらしいです。私と武藤殿、そして傳兵衛殿が其の後を付いていきます。
なんとも立派な城です。石垣もしっかりとしており、郭の数も多いです。この城から上総介様の美濃に対する本気度が伺えます。
「こちらにてお待ちください」
武藤殿と並んで上総介様が来るのを待ちます。そして暫くした後、上総介様がやって来ました。低頭して待ちます。足音だけが響いています。
「織田上総介である。両名とも面を上げよ」
「はっ」
「はっ」
顔を上げると、そこには三十代の厳しい表情をした男性が寛ぎながら座っていた。見る人が見れば怖いと思うでしょう。かく言う私も少し恐怖心を覚えます。
「其方が豆州殿の使いである堀久太郎か。そして其の方が武藤喜兵衛か。この儂に何用であるか」
この問いに答えたのは武藤殿でした。私は静かに趨勢を見守ります。
「はっ。塩を提供いただきたくお願いに参りましてございまする」
「ふむ。塩であるか」
武藤殿が塩の取引を申し出ます。此処で互いの利を説き始める武藤殿。甲斐武田と織田が結ぶのは利が大きいと私も考えます。
対今川、対一色で協力体制を築けるのです。手を結ばないという選択肢はありません。それは織田上総介様も理解しているはず。問題は塩と何を交換するかでしょう。また、その交換の割合です。
「では、塩と金の交換で如何か?」
「金にございますか」
甲州金と塩を交換ですか。ですが、これでは金は雀の涙ほどしか手に入らないでしょう。ただ、塵も積もれば山となります。金で塩を買うということになるでしょう。
「承知いたしました。詳しい話は何方とすれば?」
「そうだな。林佐渡守に一任す。良きに計らうよう伝えよ」
控えていた小姓にそう伝える上総介様。武藤殿も胸を撫で下ろしていることでしょう。それから上総介様と武藤殿が腹の探り合いをする。
甲斐の武田は今川を攻めるために南下するのかと上総介様が尋ねれば、武藤殿が美濃は落とせそうかどうか尋ねています。どちらも曖昧な返事で終わってしまいました。
おそらく、上総介様から甲斐の武田に後詰めの要請が届くことでしょう。美濃盗りと遠江盗りで協力関係が築かれるはずです。この二国は切っても切り離せない、永遠の同盟となるでしょう。
「時に上総介様、塩でございますが三河から信濃に運んでいただくことは可能でございますでしょうか」
「それが合理的であるな。竹千代に伝えておいてやろう」
そう言って塩の問題は解決を迎えました。後は林佐渡守殿と具体的な話し合いに移るのでしょう。まず一つ、御屋形様から仰せつかったことを済ませて安堵する私。上総介様の目が安堵する私に向きます。
「久太郎とやらよ。其方の主は何を考えておるのだ?」
「は? ははっ」
突然声を掛けられ驚き低頭します。何のことかわからず、目をぱちくりさせていると上総介様が言葉を補足してくださいました。
「公方のことよ。叔父の矢島公方に付くと思うたが平島公方に付いたではないか。かと思えば矢島公方にも擦り寄る始末。全くもって何を考えておるのか。読めぬではないか」
「恐れながら申し上げまする。御屋形様にとって、将軍位の争いなど些事にございまする」
「ほう! 些事か!」
目を丸くして驚く上総介様。隣の武藤殿も驚いている空気を醸し出していました。しかし、事実なのだから仕方がありません。御屋形様は誰が将軍になろうと構わないのです。
「はい。力無き公方様にどれだけの価値がありましょう。御屋形様は不安定な存在である公方様に頼ることなく己が力でこの乱世を生き抜こうとされておりまする。そのお陰で御屋形様の治めまする若狭や丹後は民百姓が笑顔にて暮らせる極楽の地となっておりますれば」
そして私は伝えます。御屋形様は熱田や津島を常々参考にしていること。上総介様に好感を持っていることを。しかし、問題が一つあります。そう、浅井です。
浅井長政は御屋形様のお父上を討ち取った家。御屋形様のみならず、若狭武田の譜代も快く思っていません。が、浅井長政は織田家の妹婿。手出しすることが出来ないのです。
そこで御屋形様が考えた嫌がらせがこちらです。
「御屋形様も上総介様と商いをしたいと考えております。そこで、北近江の関銭を優遇していただきたいのです。もちろん今すぐにではございませぬ。上総介様が美濃をお盗りになった暁には是非に」
浅井に銭は流さない。浅井をどんどん貧させようという考えなのだと推測しています。じわりじわりと首を絞めようとしているのでしょう。もうすぐ我らの石高も五十万石を超えます。そうなれば、畿内の諸勢力も無視はできないはずです。
「もし、万が一にございますが、御屋形様が御父上の敵討ちに乗り出した場合、上総介様は浅井新九郎に肩入れ致しますでしょうか」
踏み込んだ質問をしました。背中の汗が止まりません。ですが、御屋形様にとって必要な質問です。この返答次第では、上総介様は若狭と甲斐の両武田を敵に回す恐れがあるのですから。
「……もちろんである。新九郎は我が弟。助けぬ訳が無いだろう」
返答に間がありました。また、失礼なことを尋ねているというのに語気が強くありません。本心からの言葉でしょうか。読めません。
「失礼仕りました。出過ぎた質問にございますれば、平にご容赦を」
「気にしてはおらん。まだ武田と争う気は無いのでな。ふっふっふ、冗談だ。商いの件は考えておこうではないか。美濃を盗れればの話だがな」
そう言って笑う上総介様。なんとも闊達に笑うお方だと思いました。御屋形様との相性は良いのではないでしょうか。そう思い、私にも笑みが浮かびます。
「しかしそうか。豆州殿も戦いは嫌いか」
織田上総介様がそうぽつりと呟きました。「も」とは何でしょうか。「は」の間違いではないのでしょうか。そのたった一文字で悩んでしまいます。
しかし、問いただせるわけもありません。ただ、私の話と集めた情報だけで御屋形様が戦嫌いと見抜くのは流石としか言えません。
御屋形様は戦に次ぐ戦に連戦連勝しておられます。傍から見れば摩利支天に愛された戦の麒麟児にみえるはず。なのに、そうではなく戦嫌いと上総介様は仰った。
「二人とも大儀であった。下がって良い。おい、手土産を持たせてやれ」
小姓にそう命じる上総介様。ようやく、私の初めての交渉が終わりを迎えました。帰りに父上のところに寄って帰るとしましょうか。
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