普段の政務、そして発展 ※
最後に皆様にご相談があります。
ご協力いただけますと幸いです。
俺の朝は早い。まず、朝起きて歯を磨き顔を洗うと鶏の世話をする。鶏は大事な栄養源である卵を産んでくれる大切な家畜だ。
それから羽根も羽毛になるし、肉はそのまま栄養になる。骨からは出汁が出るし、捨てるところのない家畜である。
領内で養鶏を急ぎ、広めている最中である。問題は領民の栄養なのだ。炭水化物が過多になり過ぎてしまうのでタンパク質と脂質を確保出来るのがありがたい。そして茹で卵にすれば壊れにくく、日持ちもするのだ。
しかし、養鶏にも問題がある。それは鶏の餌だ。大豆も大事なタンパク源である。おいそれと鶏に食わせてやることはできない。では、どうするのか。ソバの実を主食とさせるのだ。
ソバの実、米ぬか、野菜くず、そして細かく潰した魚の骨である。これが俺の考えた現時点での最強の鶏の主食だ。領内の食料事情を改善しつつ、羽毛布団を売り捌いて銭も儲ける。これぞ、一石二鳥である。
本来であれば羽毛布団は水鳥の羽根を使いたい。そこで鴨の家畜化も進めている。鴨は合鴨農法にも使えるし、食べても美味しい。そして羽根も使えるとなったら捨てるところが無いとは正にこのこと。
領内の街道の整備も進んでるし、商人が盛んに訪れるようになっている。治安に関しても検断方を定めて彼等に一任してある。そして分国法に基づいて罪人を処断する手はずが着々と整えられているのだ。
だからこそ、俺がこうして武芸に打ち込めるというものである。今日も俺は武田流の弓馬術に精を出していた。武田流の弓馬術、それから礼法を学んでそれを次代に伝える役目がある、と思っている。
「今日はここまでに致しましょう」
「ありがとうございました」
叔父上に礼を述べて稽古を終える。ここからは自由時間だ。と思ったら大間違い。政務の時間である。本多正信を始めとする参謀方との打ち合わせである。
しかし、それも毎日ある訳ではない。今日はお休み。予定が無かったので小浜の湊へと繰り出すことにする。護衛に堀菊千代を連れて小浜散策だ。
領主だとはバレたくないので、菊千代と共にちょっと良いところの武士の息子の格好をする。
「賑わっているな」
「左様でございますね。これも偏に御屋形様の努力の賜物かと」
「下らん世辞は止せ。そんな世辞よりも湊の粗を探せ。この小浜の湊をより良い湊にするための粗を」
それから俺は菊千代と湊を練り歩く。屋台がそこかしこに出ていて活気に溢れている。売られているのは魚に野菜、瑪瑙に反物、そして何と言っても若狭で造られた太刀等である。
それは別に良い。どんどん売ってもらいたいものである。ただ、商人の撰銭が目立つように思えた。撰銭令を発するべきか。
悪銭を良銭の半価として扱う。いや、それだけでは足りないな。悪銭と良銭の基準も揃えなければならないのだ。
それとも銀銭を俺が新たに造るべきか。銀を貨幣として普及させることはできるだろうか。
それにあちこちで怒号が聞こえる。好意的ではない怒号だ。喧嘩に押し買い、それに押し売りが目立っているように思える。対策が後手になっている感が否めない。
「何か気が付いたことはあるか?」
「はい。喧嘩が多いように思います。喧噪に怒号が混じっているような」
菊千代も俺と同意見だ。それだけで少し安心する。これは治安の低下にも繋がるが検断方に対策を求めるのも酷だろう。これは経営の範疇になるのだ。我等で話し合うべきである。
ちなみに検断方の責任者は前田又左衛門だ。彼にも少しは政の何たるかを理解してもらいたい。大丈夫、俺がいた世界線では名君として君臨していた。
経営の責任者は嶋左近だ。彼を参謀方から経営に移動させた。嶋左近は若いが公明正大な男である。信頼に足るだろう。その代わり、参謀方には南条宗勝を追加することにした。
勿論俺は参謀方、経営方、検断方のどれにも加わっている。行く行くは菊千代にも経営方に加わっていただきたい。欲を言うのであれば全てに参加してもらいたいくらいだ。頼りにしているぞ、名人。
「まずは左近と話し合う必要があるな。城に戻って左近を呼び出してくれ」
「はっ」
「いや、ちょっと待て」
そのときであった。天啓が下りてきた。閃いてしまったのだ。俺は蕎麦粉と卵、それから水を用意する。それから余った鶏ガラ。それから名産の醤油を揃える。
本来ならば干し椎茸と昆布で出汁を取りたいところだが、そんな贅沢なことはできない。味が落ちるかもしれないが、今回はこれで売りに出すとしよう。
これで準備は完了だ。あとは左近が到着するのを待つのみである。俺の怪しげな笑みに気が付いた菊千代の笑顔は引き攣っていたのであった。
新作の歴史小説なのですが、行き詰っております。執筆が済んでいる個所まで投稿しました。
もし、良ければお読みいただき、ご意見賜れましたら幸いです。
ご協力ください。よろしくお願い申し上げます。
春に弓、その手に刀を ―戦国時代に紛れ込んでしまった青年は自らの武と智を頼りに乱世を自由気ままに生き抜くようです―
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