隗より、始まる
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永禄七年(一五六四年)二月 若狭国 後瀬山城
俺の元を不思議な兄弟が訪ねてきた。名を遠藤秀清、遠藤俊通という。どうやら我が武田家に仕官したいとのことらしい。詳しく話を聞いてみる。
「武田伊豆守様のお成りにございます」
小姓である菊千代が刀を持ったまま俺の後ろに控えて口上を述べる。そして俺が名を名乗る。すると、遠藤兄弟の片方が頭を下げながら神妙にこう切り出した。
「お目通りが叶い、恐悦至極にございまする。某は遠藤又次郎、そして弟の遠藤喜三郎にございまする」
「うむ。まずは面を上げよ。当家に仕官したいと伺っているが、それは誠か?」
「はっ、左様にございまする。我ら兄弟、赤松の姦計に嵌まり主と兄者を亡くしておりますれば」
そう言って涙を零す遠藤秀清。どうやら上に遠藤秀信という人物が居たようだが、その姦計に嵌まって戦死したらしい。
では、彼等の主君とは誰か。そして姦計とはを詳しく伺う。どうやら彼ら兄弟は備前の浦上政宗に仕えていたようだ。
そして浦上政宗の嫡男が小寺何某の娘を室に迎える婚礼当日に置塩城主である赤松晴政の攻撃を受け室山城にて政宗と共に討死したというのだ。そこには兄の遠藤秀信も居たらしい。
と言っても、この元凶を作ったのは浦上政宗その人である。赤松晴政を廃して子の赤松義祐に無理やり家督を継がせるからこうなったのだ。とは言え、赤松晴政は浦上政宗の父の仇なのだとか。こ、拗れている。
また、浦上政宗は弟の浦上宗景とも争っていると聞くし、備前は一枚岩になれないようだ。兄の政宗には尼子が、弟の宗景には毛利がそれぞれ付いているとのこと。
備前には関わりたくない。いや、逆に好機か。とは言え、宇喜多直家が台頭してきても居る。ただ、彼奴も周りは敵だらけだ。出来なくはないだろう。まだまだ先の話だが。
話を戻そう。そういう事情があって遠藤兄弟は流れて若狭まで来たというのだ。召し抱えるのは吝かではないが、彼らは一体何が出来ると言うのか。それが重要である。
「種子島銃であれば我が兄弟にお任せいただきたい」
「ほう!」
まさか、ここで火縄銃の名手が現れるとは思わなかった。今現状、火縄銃をまともに扱えるのは明智十兵衛だけである。
「では、その実力を見せてもらおうか」
「ははっ」
場所を移動する。弓の的がある場所、後瀬山城の中庭へと赴く。そして俺は雑にこう指示してみた。あの的を撃て、と。二つ返事で了承する遠藤秀清。
手慣れた動作で種子島に火薬と弾を込める。そして火を付け狙いを定めて放った。ここまで一分もかかっていない。その所作から何度も繰り返し調練してきたことが伺える。
肝心の弾はというと、的のやや右下を打ち抜いていた。見事な腕前だ。召し抱えよう。だが、その前に彼等の考えを知りたい。
「お見事である。召し抱える前に、幾つか尋ねたい」
「何なりと」
「なぜ我が武田に仕えようと思ったのか」
「一目見て分かりましょう。新たに加わった者が数年で城持ちになる。斯様な処遇は他国に例を見ませぬ」
え、そうなの。確かに、身一つでやってきた前田利家や山内一豊を城持ちにはしたけども。
まあ、彼等の潜在能力は分かっていたし、大丈夫だと思ったから任せたんだけど、それは今の時代だとおかしなことだったか。失念していた。
とはいえ、それを目当てに他国から有能な人材が集まってくるのであれば僥倖である。まずは隗より始めよと言うではないか。
「種子島の扱いで大切なことは?」
「慌てないことにございます。暴発する恐れがございますれば、何度も繰り返し稽古することが肝要かと」
「うむ」
「弓と種子島、兵として育てるならばどちらが容易に育つか?」
「種子島にございましょう。弓よりも扱いが易いかと。ご懸念があるとすれば高価であるということでしょうか」
秀清が答える。基礎がしっかり押さえられていると思う。彼等であれば鉄砲隊を任せても良いかもしれない。いわゆる、鉄砲大将だ。
新参にいきなり鉄砲隊を任せるのかとも思うが、適材適所である。信用ならぬなら誰かを目付につけるか。やりようはいくらでもある。
「相分かった。其の方等には種子島隊の指揮を任せたいと思う。如何か?」
そう訊ねると、遠藤兄弟はぽかんと阿呆面になって惚けだした。なんだ、俺の言葉が届いていないのだろうか。それとも不服だというのか。ふむ、どうしようか。
「なんだ。不服か。それならば――」
「暫く! 不服だなんて滅相もございませぬ! 謹んでお引き受けさせていただきたく! しかし、よろしいので!?」
「何がだ?」
「新参者の我らに虎の子の種子島隊を指揮させるなど、正気の沙汰とは思えませぬぞ!?」
「なんだ。そんなことか。そう心配するな。種子島の数などそう多くはない。菊千代、種子島の数は如何ほどであったかな」
「はっ。およそ二、三百かと」
「だ、そうだ。其の方等を鉄砲大将とする故、組頭と為り得る者を選抜して鍛えて欲しい。能うか?」
そう訊ねると弟の方は再び惚け始めた。ただ、兄は顎髭に手を伸ばし、思案しながら撫で出した。どうやら考え事をするときの癖のようだ。
三百の火縄銃か。売ったらいくらの銭になるだろうな。それを任せると言われて驚かない者はおらぬか。しかし、効率良く運用するには火縄銃の熟練者が隊を率いるに限る。
「必ずや成し遂げて見せまする。まずは三百人の鉄砲隊を編成して見せまする」
「うむ、良い心がけだ。期待しておるぞ」
「ははっ! 必ずや、御屋形様のご期待に応えて見せまする」
「菊千代、城下に彼等の屋敷を用意せよ」
「はっ」
こうして若狭武田に鉄砲の扱いに長けた兄弟が加わった。彼等の近代化がまた一つ始まったのであった。
まず隗より始めよ。ただ、甲斐から始めることができないのは残念でならない。なんてね。
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