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攻めるか和するか

本日、頑張って更新しますのでポイントください。

なんとかランキングのトップに食い込んでみたいです。


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私を助けると思ってください。

「食べながらで構わん。聞いてくれ。浅井と組んで六角を攻めるか。それとも六角を助けるか」


 着の身着のままの恰好で皆を評定の間へ集める。腹が減っては考えも纏まらない。椎茸と鶏ガラでとった出汁と醤油の蕎麦を全員分用意させた。最近の俺のお気に入りだ。


 そして全員がそれを平らげる間に俺は説明を済ます。三好の嫡男が遠行したこと。観音寺城で騒ぎがあったこと、毛利の当主が亡くなったことの全てを。


 我等が行わなければならないことは三つある。一つ目は因幡国の統一である。これは決定事項であり、体制を整えて直ぐに行いたい征伐でもある。


 そして二つ目が丹波国の共闘だ。天田郡と何鹿郡をどうやって我がものとするかである。こちらは内藤宗勝と連携しなければ我らに敵意の矛先が向きかねない。


 最後に三つ目が今回の騒動だ。浅井と共に南近江に攻め込むか。それとも六角を助けるのか。どちらを選択するかが重要になってくる。前者を選ぶのなら父の敵と手を結ばねばならん。後者はあまり旨味が無いが浅井を牽制することは出来る。


 三好に関しては今は考えない。三好長慶も健在であり、松永も居る。今は時期ではない。しかし、ここから三好内部でお家騒動が発生するだろう。だれが跡取りとなるのか。それが問題だ。


 ここで足利義輝がしゃしゃり出てきたら厄介だぞ。三好を討伐せよ、とな。まだ因幡を統一できていない。それを理由に延期できるか。……難しいだろうな。


「皆、状況は飲み込めたか? まずは南近江をどうするか。此処から話したい。これによって丹波と因幡で取るべき手段が変わると考えておる。如何か?」

「某は浅井と組んで攻め取るべきかと。これはまたとない好機にございまする。近江の国衆は六角と距離を取りたがっておりましょう。それに、浅井は必ず動きまする。動かなければ後れを取るだけにございますぞ」


 そう主張したのは嶋左近である。確かに左近の言う通り、浅井は必ず動くだろう。坂田郡を占領下に置くはずだ。しかも戦でではなく調略でそうするに決まっている。あの浅井新九郎ならやるだろう。


 もう野良田での傷が癒えたはずだ。そこで、六角側が蹴躓いた。此処を見逃す新九郎ではないだろう。そんな凡愚には見えなかった。


「お待ち下され。六角を敵に回すのは如何なものかと。六角左京大夫は未だ健在。嫡男の不始末とはいえ、必ず立て直してきましょうぞ。それに六角に攻め入るは三好と盟を結ぶも同義。公方様が如何思われましょうや」


 そう反論するのは細川藤孝である。確かに彼が申すことも尤もである。幸か不幸か俺は将軍の甥なのだ。間違っても大手を振って三好に与する訳にはいかない。だから内藤を経由しているのだ。


「しかし、それでは――」

「そうは言うがな――」


 議論は段々と熱を帯び、各々が主張をぶつけ、混迷の一途を辿って行った。それを静観しているのは俺と本多正信である。十兵衛は場を落ち着かせようと必死になり、上野之助は深く考え込んでしまっている。


 このままでは埒が明かん。そう思った俺は声を張り上げて場の静粛を願った。


「相分かった! 一同、鎮まれぃ!」


 辺りが静まり返る。そして全員の目が俺を捉えていた。試し合戦終わりで全員の気が立っている。しかし、御さねばならん。


「本多弥八郎、何か意見はあるか?」

「ははっ、しからば。某が愚考するに、此処は調略の一手にございましょうな。六角は敵に回しとう無いですし、浅井とも手は組みたくない。それであれば高島郡の高島七頭のどれかを調略すればよろしいかと」

「調略して如何する?」

「機を見極めまする。六角の嫡男が暴挙に出たのです。六角左京大夫では押さえが利かなくなりましょう。まずは高島七頭を調略しつつも六角を助けなさいませ。そして六角の目を浅井に向けるのです」


 流石は本多正信だ。ここまで言われて俺も理解した。高島七頭の誰かを押さえれば彼奴と諮って高島郡を抑え込もうという腹だろう。あくまで後詰めの名義で。


 浅井にも与さなければ六角にも与さない。独自の路線を貫くということだ。ここまで議論が紛糾したのだ。どちらかに肩入れするとどちらかの不興を買う。それならば本多正信の案を採用しておこう。


「分かった。では弥八郎の案を採用する。調略は弥八郎に任せて良いな?」

「勿論にございまする」

「細川兵部には公方様の許へ赴いてから幕臣の方と観音寺城へ。我等はお味方であること。必要な手助けは行うこと。浅井の侵略や引き抜きに警戒することを伝えて欲しい」

「かしこまりましてございます」

「嶋左近は俺の名代として浅井に向かってくれ。何があっても浅井とは敵対しないと。しかしながら、六角侮り難しと伝えて支度に時をかけさせよ。歩みを遅らせてほしいのだ」

「承知仕りました」


 本多正信の調略が上手く行けば高島郡の保坂と朽木、それから今津と木津を将来的に押さえることができる。欲を言うなら勝野と堅田も押さえたいが、それは難しいだろう。


 これらを獲れれば小浜から京へ繋がる道――鯖街道――の東側上半分をほぼ手中に収めることになる。京への物流の根幹により深く触れることができるのだ。これは莫大な益を生むぞ。


 さて、これで対六角、対浅井の対策は終わりだ。浅井と六角で争って是非とも疲弊してもらいたい。


 次は丹波の攻略に関してだ。丹波の国衆に十兵衛が調略を仕掛けていたはず。まずはそちらから詳しく伺うことにする。


「十兵衛、丹波への調略は如何だ?」

「はっ。天田郡の桐村将監高信、塩見大膳大夫頼勝、共に降る様子はございませぬ」


 天田郡は小笠原氏(名を改め塩見氏)が抑えていると言っても過言ではない。親子兄弟の奈賀山長員、和久長利、牧利明、塩見頼勝、塩見利勝等が天田郡を抑えているのだ。その絆は深いだろう。


「何鹿郡の大志万宮内大輔長秀、狙うなら生環山館主の上林下総守晴国 上林十倉館主の渡辺内膳道春辺りがよろしいかと」

「ふむ。どうやら丹波の大部分は力攻めで落とす他ないな。が、それは今ではない。引き続き丹波の調略と情報の収集を。まずは因幡を攻め落とすぞ」

「ははっ」


 まずは何といっても因幡だ。今は落ち着いてきたが、怒りを忘れた訳ではない。


「それから因幡の国衆に伝えよ。今ならば因幡からの追放で許してやる。逃げぬのならば根伐りだと脅しをかけよ」

「ははっ」


 これで方針は決まった。六角は国衆の保護という名目で高島郡に調略をかける。浅井と六角の関係が拗れたら仲裁に入れるよう、準備をしておく。


 それから丹波は静観。引き続き調略を行うに留める。そして因幡は力で攻め落とす。ここで若狭武田は力攻めもできるのだということを国内外に知らしめる必要があるのだ。此処は変わらない。


 おっと、忘れていた。もう一つ大事なことを誰かに任せよう。


「誰か近江の坂田郡にある国友村を訪ねてきてはくれないだろうか。そこに住まう種子島職人達を根こそぎ引き抜いて来てもらいたい。若狭に種子島製造の一大拠点を作るぞ。金にも糸目はつけんし、必要なものは全て用意すると伝えて欲しい。誰か行ってもらえぬか?」

「然らば某が参りましょう。御屋形様は公方様の甥御にございます。その点を利用し説得いたしましょう。それに浅井へ向かう道中にございまする」

「うむ。よろしく頼む」


 立候補したのは嶋左近であった。左近であれば安心して任せることができる。首肯して肯定の意を示した。これで一通りの対策は行ったはず。さて、この決断で鬼が出るか仏が出るか。こればかりは俺にも分からないのであった。

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