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試し、試され

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永禄六年(一五六三年)十一月 若狭国 後瀬山城 武田氏館


 今日は晴天。雲一つ無い気持ちの良い快晴だ。少し肌寒くあるが、これから動くのだ。寒さも忘れることになるだろう。


 待ちに待った試し合戦の日。配下の者はほぼ全員が参加するといっても過言ではない。諸将が二百の兵と共に試し合戦の場となっている後瀬山城の南の山に集まった。南の山は試し合戦のために少し整備され、切り開かれている。


 ルールは簡単だ。敵方の総大将の旗を奪えば勝ちだ。勿論、死なないよう木刀と木槍を使用する。兵達一人ひとりも旗を持っており、奪われたら死だ。


 また、矢には染料が塗られており、こちらは肌に当たったら死である。鎧であればセーフにした。あとは各人の良心に委ねるしかない。


 最初の合戦は槍の又左こと前田利家である。派手好きな男だ。一番を志望したのだろう。それに対するは武田四老の一人である武藤友益であった。


 両人には事前に半刻の時間を与えている。会議をするも良し、陣を築くも良し、時間の使い方は好きにさせている。そこからが戦なのだ。


「始めっ!!」


 俺の合図と共に銅鑼が鳴らされる。その音と共に馬を走らせたのは前田利家だ。先陣を切って駆けていく。その後ろを兵達が全速力で付いて行っていた。意気軒昂、士気が高い。


「放てぇー! 近付かせるなぁ!」


 対する武藤は弓を前面に並べ懸命に矢を射らせている。近付かせない作戦のようだ。しかし、それでもなお利家は恐れず近付いてくる。上手いこと矢を槍と鎧で弾いているのだ。


 俺は小高い山の上から戦況を見ているのだが、利家の技術が高い。巧いのだ。馬捌き、槍捌き、身体の使い方。どれをとっても一流だ。致命傷を負わないよう、考えているのか本能で動いているのか。


「綱上げろぉ!!」


 ここで利家の目の前に綱が現れる。どうやら両端に兵を隠しており、馬を通さないための綱を地面に隠していたようだ。どちらも土色で一見だけだと分かりにくい構造になっている。


 この綱に引っかかってしまった利家。馬から投げ落とされる。後続の味方の兵とはまだ距離がある状況だ。そんな又左に敵方の兵が殺到する。おいおい、馬を傷つけないでくれよ。


「へっ、この『槍の又左』を舐めるんじゃねぇぞ!」


 槍を振り回しながら牽制しつつ、下がる。そこに家臣である村井と高畠が合流した。そこからは乱戦である。しかし、乱戦となったら物言うのが純粋な武力だ。そして純粋な武力なら前田利家の独壇場である。


「そこまでっ! 前田又左衛門の勝利!」

「へへっ。俺が戦で負けるかよっ!」


 混沌とした乱戦での勝利だが、その力は折り紙付きのようだ。武藤友益も悔しそうである。ただ、薄氷の勝利であった。村井と高畠は討ち死にしている。


 将としてみれば落第点だな。部下を死なせ過ぎだ。突破力はあるが、後先を考え無さ過ぎである。もう少し思慮や分別を身に着けてほしい。


 それであるならば武藤友益の方が良将だったように思う。経験の差だろう。家臣に無理はさせず、死なせない。やはりこれが大事だ。


 さて、ここからが裏の主題だ。それは治癒技術の向上である。治療と称して糞尿を塗り付けるとか、煎じて飲むとか止めて欲しい。本当に。切実に。


 基本的には包帯で止血。骨折は当て木を添えて安静に。出血がひどい場合は紫根草や殺菌作用の強い笹の葉を使う。漢方の知識は明からどんどん仕入れていきたい。兵を一人でも多く助けたいのだ。


 勝っても負けてもそれらの知識を徹底して植え込んでいく。正しい治療、万歳。


 さて、次の試し合戦だ。明智十兵衛と山内一豊か。順当に行けば十兵衛の勝ちだが、果たして。一豊がどれだけ成長しているか見せてもらうことにしよう。


「始めっ!」


 掛け声と共に銅鑼が鳴る。しかし、両者共に動かない。恐らくだが、一豊は動かないのではなく動けないのだろう。十兵衛が後の先を狙っているのは明らかだ。


「埒があきませんね。伝五、兵を五十程率いて攻めかかりなさい」

「承知にございます」


 伝五が槍兵を率いて突出していく。手には盾をきちんと持っており、弓矢対策も万全だ。それから十兵衛が本陣をじりじりと押し上げていく。このままでは何もできずに終わってしまうぞ。


「全軍、突撃ぃっ!」


 そこで突然、一豊が全軍を動かした。両翼に居る祖父江、五藤も一気に駆け上がる。これに驚いているのは明智陣営だ。まさかあの山内一豊が力勝負を挑んでくるとは。


 虚を突いたのだろう。そして一気に十兵衛の旗を奪う。それで終わりにする気だ。十兵衛もそれを察したのか。陣を方陣に組み直す。伝五は戦線を離れていった。


「追わんで良い! 全軍で十兵衛殿を打ち倒すぞ!」


 百五十と二百の兵がぶつかる。兵数も勢いも一豊が上だ。しかし、十兵衛の兵の錬度が高く、全員が踏み留まっている。さて、このまま圧し潰せるか。ただ士気の差でじり貧に感じる。


 このまま終わるのか、と思ったところで現れたのは伝五であった。槍も盾も捨てて逃げ散った伝五とその五十の兵が一豊の背後にて集結していたのだ。武器は腰に差した木刀のみ。


「すわ、斬り掛かれぃ!」

「ここだ! 押し返せ! 伝五が背後から斬り掛かっている。今が好機ぞ!」


 完全に背後を取られた一豊。伝五が後ろから迫ってくる。そして前から現れたのは明智左馬助であった。やはり、背後を取られた部隊は脆い。それが証明された戦でもあった。


「そこまで!」


 下馬評通りに十兵衛の勝ちとなった。しかし、一豊も力攻めができるということを広く示したこととなった。最初に会った頃はどことなく頼りない青年だったが、今や一端の武将だ。


 こうしてどんどん試し戦が行われていったのであった。

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