表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/5

自室にて、王都行きを考える


来週向かう王都では、新しい店舗の上に事務所、その横に我が家の住居が併設されている。従業員の住まいもアパートタイプのものを近くに用意してある。


この店舗、この国ではほとんど見ないログハウス的な作りである。

先に説明した通り、この世界では植物も派手なものが多ので、一般的な木材を使って何かを作っても派手な物になってしまう。

この世界では木目調にリラックス効果を期待してはいけないのだ。


父が留学先に持っていった、領地の間伐材で作った木製の食器や小さな家具を見た母の実家のみなさんが、『この男を手離してはならない!』と、本人たち以上に父と母の婚姻に乗り気で、国や身分の垣根を越えた結婚の根回しを頑張ったらしい。


温かみのあるその木製品はファーマス家の領地の木材を使ってこそである。今まで父が諸国を飛び回っていた為に細々と取り引き(しかし大人気)していたそれを、今回父がこの国に帰って来た事を期に一大事業にしようとする計画がすすめられている。

この国の店舗も旗艦店としての働きを期待されており、伯父が息子にその代を譲り、父が領地経営を手伝わなくてすむようになれば、この国に残り本来の仕事に専念する予定になっている。


今現在、商会で一番人気の木材商品といえば『積み木』である。

それまで、その家に赤ちゃんが産まれると、その家の色をしたぬいぐるみを送るのが定番だったのが、この『積み木』が発売されるとともに、あっという間に不動の1位となったのだ。


この『積み木』の発案者は当時6歳のソフィアである。


『これ、無意識に前世の知識使ってたな~』


その後も、紐で引っ張るアヒルに似た鳥がカタカタするものや、おもちゃの木琴など、優しい木目調の子ども向けのおもちゃのアイデアを色々出し、商会の発展に貢献していた。

今までソフィアがこんなモテそうな見た目のわりに恋愛に興味なく過ごして来たのは商会の手伝いが楽しかったからである。


そういえば試しに数点作ったこけし風人形は人気が出ず、今も倉庫の隅で一点を眺めているのを思い出す。


『あっ、やばい、あのこけしが倉庫にあるの想像したら怖い!魂入りそう。今度送ってもらって陽の目にあててあげよう。』


それはさておき、そんな感じでアイデアを出していたソフィアが、なんとなく書いた『木のお家』を形にしたのが、今回王都に建てた店舗である。

「こう、丸太を並べて~」などと、書いた絵をもとにこちらの世界の建築家が「あーでもない、こーでもない」と試行錯誤の上で建ててくれた。


この店舗、子ども連れオッケーのカフェを併設し、キッズスペースでは木のおもちゃ、ガーデンではファーマス領の木材使用のブランコで遊べるようになっている。


こちらも無意識の前世知識満載だ。


とは言えこの世界の職人もさすがその道を極めただけあり、ソフィアがアイデアを出さなくても、色々なおもちゃを生み出しているので、商会はこれからも発展していくだろう。

でも、


『もっと子どもが使う優しいおもちゃを作りたいな~』


そうぼんやり思いながら、王都に行ったあとの目標を考える。


学業も大事だけど、やっぱりお店の手伝いもしたいな~。

楽しいし、何より目を休めたい!!


と言うか、私の目は大丈夫なのか!?

これ、目の色素薄いから余計まぶしさに弱くない??

でも、母の家系もみんな薄いけど平気そうだしな~。

慣れかな?

慣れるのかな?


結局最後は、目の心配ばかりになり、パスカル領での生活は過ぎて行ったのである。


ちなみに、前世知識でアイマスクなるものをチマチマと縫ってみた。

ゴムはないので。頭の後ろで紐で結ぶタイプだ。


これに、ポケットをつけ香油を垂らした布をいれられたらいいなとか、温めたり出来たらとかは父にアイデアを出したので後は任せよう。


そうそう、この世界にはライフラインに使われる魔力なるものがある。でも魔法を使って攻撃!!みたいな魔法は無い。

そもそも魔物も魔獣もいないしね。

動物はいるけど、これまた派手な色をしている。急に見ると「魔物!!」って叫んでしまいそう。


動物に癒し効果を求めてはいけないのだ。

もふもふはしているけど。


それなら弟たちをもふった方がいい。

………後でもふりにいこう。


そんな魔力をうまく使えばホットアイマスクもアイスアイマスクも作れそうなんだけど、安全面もあるから任せた方が良さそうだ。


試作品アイマスクは、付けた姿に母は尻込みしていたけれど、短時間の休憩ですっきり出来ると家族にはなかなかいい反応をもらえた。


それもしっかり荷物に詰め込む。


明日はとうとう王都へ出発である。短い期間だったけど存分に癒されたファーマス領の景色を思い出しながら私は眠りについたのであった。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ