3 異世界へ
3、異世界
気が付くと俺は白い壁の部屋にいた。
突然スマホが光だして、足を踏み外して人生終わったなと思っていたが、助かったようだ。
だが目の前に立つ者の容姿でなんとなくだがわかってしまった。
俺は死んだんだと。
正面には白の衣を纏い、背中から翼を生やした金髪の美人が立っている。
俺がへこんでいると、正面に立つ女神様らしき美人がコホンと可愛く咳払いした。
まあ、聞いてみないことには、わからないなと、俺は自然と流れていた涙を服の袖で拭った。
「あの~、おねえさん。俺は死んだのですか?」
俺がそう聞くと、おねえさんは俺の右手を取り、白い衣の上から、胸に当てた。
むにゅ。柔らかい。
「女神様なのか~。じゃなくて手を離してください」
女神様に頼むが、手を離してくれない。だんだんと手は胸からヘソへと進んでいく。
俺は、力ずくで手を振り払おうとするが、抵抗できない。
ヤバイ、このままでは俺の恋人が、ジャングルの奥地へと連れ込まれて、犯されてしまう。
「め、女神様。恋人を、いや右手を離してください」
俺の言葉を無視して、俺の恋人がジャングルの奥地へと連れ去られてしまった。
ダメだ。このままだとアマゾネスかメデューサに犯されてしまう。
しかし、こ、これは俺も知っているあれじゃないのか?
俺は、意を決してジャングルにそびえ立つ一本の御神木を掴んでみた。すると、女神様が声をあげた。
「あ~あん 」
もう一揉み。
「あは~ん」
もう一丁。
「あんあんあ~ん」
「お前、女装男神だろ。触らせて確かめさせるんじゃねぇよ」
「そうです。男神ガブリエルです。アイ ・ワズ ・ゲイ・デス」
何言ってるんだこいつは……。
男神ガブリエルは。今あったことを無かったかの様に話し出した。
「では、本題に入ります」
「本題に入る前に、早く手を離してくれないか」
「わすれてました。すみません」
くそ、俺の恋人が汚れてしまった。もう使えないな。
「私好みの男でしたので、魔が差しちゃいました 。てへ」
神様が万引き犯の常套句みたいな言い訳してるけど……。それに、魔が差したって……。
ありえんわ。
「それで、俺は死んだのですか?」
俺は、祈るように男神ガブリエルの言葉を待った。
「鳥居裕太さん。貴方は死にました」
生きてるはず無いよな、滑落したんだし。あ~、最後にライチョウちゃんが見れて良かったと、俺は、その場で泣き崩れた。
男神ガブリエルは、優しく俺の頭を撫でてから、顎を人差し指で持ち上げた。
「そんなに泣かないでください」
俺は、人差し指で持ち上げられた顔を横にふって、泣きながら言った。
「お前に俺の気持ちなんてわかんねえよ」
しばしの静寂のあと、俺は死んだことを受け入れて泣くのをやめた。
男神ガブリエルは、俺の頭をフェザータッチの様に撫でながら優しく話しかけた。
「貴方は鳥が好きなんですね」
男神ガブリエルは、俺の心を読んだのか、鳥が好きな事を言い当てる。
こんなところで嘘をついても仕方がないし、俺は真面目に答えた。
「そうだ、俺は、鳥が好きだ」
「それでは、貴方を異世界へ転移させてあげます」
まじか!?
「貴方の首から下げられた機械で、従者を一つお選びください」
「スマホか」
俺は、スマホを手に取ると画面には擬人化された鳥ちゃん達が居た。
「うーん。かわゆす」
男神ガブリエルは、俺の横に座り、同僚とインスタグラムを見るようにスマホの画面を見ていた。
それにしても、近いな。
従者と言うことは、一緒に旅をすることになるのか。ここは、慎重かつ大胆に選ばないとな。
うーん。ヤマセミちゃんもいいな~。
カワセミちゃんも捨てがたいな~。
「忘れてました。ダブルタップは、禁止なのです」
「串屋のソースの2度漬けの様に言うな」
それにしても、どの娘にするか迷うな。
俺が悩みまくってると、男神ガブリエルも選ぶのを手伝ってくれた。
「この子はどうですか。ボーイッシュで、可愛いです」
「ハヤブサちゃんか」
キリッとした顔立ちで、 気が強そうだな。
「この子もボーイッシュデ、可愛いですね」
「キジちゃんか」
攻撃的な目で、睨まれたら少し怖いな。
「この子もボーイッシュデ、可愛いですね」
そう言えば、この男神ガブリエル、さっきなんか言ってたな。確か、アイ・ワズ・ゲイだと。
「お前、さっきからボーイッシュばかり言ってるが、今もゲイじゃねぇーか。俺が決めるから黙ってろ」
俺が強い口調で言うと、男神ガブリエルは、しゅんとなり黙ってしまった。
まあ、こいつはほっといて、真面目に選ぶか。
うーん。やはり、最後に撮ったライチョウちゃんにするべきだな。
「おい、ライチョウちゃんに決めたぞ」
俺は、男神ガブリエルを見ると、羽をむしり、自傷行為に及んでいた。
「プン、プン」
「おい、怒るなって。それにインコみたいに羽をむしるんじゃねぇよ」
俺が言うと、男神ガブリエルは、羽をむしるのをやめてから落ち着いたのを見計らい
押すことに決めた。
「じゃ、押すからな」
一応ねんを押して俺が言うと、男神ガブリエルは、ライチョウちゃんが気に入らないのか、興味無さげに横をむいて答えた。
「ご勝手にどうぞ」
だが、俺がライチョウちゃんを押す瞬間を狙っていたのか、男神ガブリエルが、
「えーいっ!」と声を出して両手で押してきた。
俺は、不意打ちをくらい、手元が狂い何を押したのかわからなくなった。
すると、スマホの画面から光の粒子が無数に現れて、何か人影らしき者を形作っていった。