2そうだ、富山へ行こう。
2、そうだ、富山へ行こう。
俺は、夢を見ていた。
《鳥図鑑を完成させよう2》の中で、擬人化されたライチョウちゃんと冒険している夢。
夢の中で思う。擬人化されたライチョウちゃんは、こんなに可愛いのか。
俺はまだライチョウちゃんの擬人化されたキャラクターを見てもいないのに、夢の中で勝手に想像で作り上げたようだ。
俺達は、宿屋に泊まり、シングルベッドの上で愛を語り合った。
「私たちは、絶滅危惧種だから沢山子供を作りましょう」
「そうだね」
それから、ベッドインしてベッドの中でモソモソしたあと、子供が生まれた。
展開が早いとご指摘されそうだが、夢なのでご勘弁ください。
ベッドの上には無数の卵があり、それを二人で暖めている夢だった。
そのあと、目覚ましの音で、俺は目が覚めた。
時間は朝の4時50分。
トタン屋根の上では、スズメたちがチュンチュンと、跳ねながら遊んでいる音がしている。
くそー、夢の続きが見たかったのに目覚ましの奴が勝手に起こしやがって。
こうなったら、二度寝して続きを見ようと思ったが、俺にはやらねばならない事を思い出した。
そんな大きな事を言ってるのだが、まだ俺は、布団のなかにいる。
ちょー眠いよ~、誰か助けて~。
心のなかで叫んでみたが誰も来なかった。
俺は仕方なく自力で起きて、シャワーを浴びながら、歯も磨く。
もし、電車やバスやロープウェーなどで、女の子と隣り合わせになって、お兄さんお口臭いと言われた日にゃ~立ち直れなくなり、ライチョウちゃんの事さえ頭も回らなくなり、その辺でノタレ死んでるだろう。
だから俺は入念にあっちゃこっちゃと指紋が無くなるほど、擦りまくり、歯磨きも同様にエナメル質が削れるほどに磨きまくるのだ。
それから朝食は、パンとバナナを食べてからまた、歯を磨いた。
念には念を入れるタイプでござる。
さてと、準備完了。
軽自動車の後ろに機材などを積んで、火の元も確認しつつ、指差し歓呼を小声でやってから玄関の鍵を閉めて、5時40分に出発した。
俺の今の格好は迷彩色の帽子、服、ズボン。端から見ると自衛隊員である。
まぁ、本物の自衛官なんだけどね。
大垣インターから高速で富山までは、だいたい2時間ちょい。そこからロープウェーやらケーブルカーなどに乗って、一気に2400メートルの世界へと行けるのだ。
俺は、ライチョウちゃんに会えることと、コンプリート出来ることで、テンションが高くなり、ハイジのオープニング曲を口ずさんでいた。
日本アルプスに向かうんだから、こんな時は、出ちゃうよね。
軽快に高速道路を進んでいき、富山県に到着した。
ここからが大変なのだ。バスに乗り、ケーブルカーに乗り換えて、ロープウェーにも乗る。
長野県ルートで行くよりは楽にハイジの世界じゃなくて、標高2400メートルの世界に行けるのだ。
ネットで調べた知識ですが。
人が多いなと思っていたら、三連休の事をすっかり忘れていた。
それにしても女性が多い。朝のみそぎが無駄では無かった。
乗り換えを3回もして、やっと到着した。
俺は、一歩足を踏み出してハイジの世界へとじゃなく、日本の屋根に降り立った。
そこには澄みきった空気に青い空があった。
この眺めでも来た価値はあるな。
それに、高山病にもならなくて良かった。
俺は登山道を荷物を運びながら目的のものを探した。
まだ、雪の溶けて無い場所が多数あるなと、眺めていたら速攻見つけてしまったのだ。
俺は、思わず声に出してしまった。
「リーチ、一発、ツモ!!」
純白の毛に覆われた真っ白なライチョウちゃんは、神々しく岩の上に立っていた。
神の鳥と呼ばれるだけの事はある美しさ。
俺の中のバードウォッチャーの血が騒ぎ出し、リュックから荷物を取り出して三脚を固定して、カメラに望遠レンズをはめて、岩の上に立つライチョウちゃんを撮りまくったのだ。
俺は、カメラ小僧のように回りを気にもせず撮り続けた。
カシャカシャカシャカシャカシャカシャ……。
ふーう。
あっそうだ。大事なことを忘れるとこだった。
ライチョウちゃんの可愛さで、興奮しすぎて、すっかり忘れていた。
てへぺろ。
首から下げられたスマホを持ち、《鳥図鑑を完成させよう2》を起動させて、ライチョウちゃんへと向ける。
やっとコンプリートが出来る。
ガシャリ。
俺は、一度もガチャを回さず、コンプリートしてしまった。
よっしゃー!!!
俺は、スマホの画面を操作しながら、余韻に浸っていた。
ここまで長かったな、約2年か。
《鳥図鑑を完成させよう2》のアプリを起動させて写真を撮ると、自動に会社元に送られて、メールが送られてくる。そのメールを開くと、擬人化したカードが送られてくる。
俺は、送られてきたメールを開くと、それを見て、驚いてしまった。
夢で見たライチョウちゃんと全く同じ容姿のキャラクターだったのだ。
あれは正夢だったのか。
考えていると、スマホの画面が光だしたのだ。
め、めがあああああ。
俺の体は、光の粒子に包まれた。
ヤバイ、意識が……。
俺は、足場の悪い場所で、どちらに行くともわからずに、動き回り足を踏み外して、滑落した。