1はじまりました。
1、はじまりました。
今日も仕事が終わり、明日から3連休となる。独り暮らしの俺は、くつろぎながら椅子に座り、スマホの画面を操作しながら、キモイ独り言を出していた。
「うーん。ヤマセミちゃんとカワセミちゃんマジ天使。実物も良いが、このデザインした人、マジ神だわ。鳥ちゃんの事わかってらっしゃる!」
一応、言っておくが、タレントのヤマセマミでもなく、カワセマミでもなく、一切関係がございません。
「それにしても、去年の夏に撮影してゲットしたヤマセミちゃんとカワセミちゃん強すぎるわ」
オンラインで、新しく出たミッションをコンプリートして、マセキを50個もらい無料の11連装備ガチャを引いた。
「お、レインボーだ」
レインボー箱は、星5の装備が必ず1つは確定して出る。
『星2鉄下駄、星1短剣、星1短剣、星2鉄の鎧、星5マサムネ、星2羽帽子、星4クロスカウンター、星2鉄の爪、星1杖、星3金の胸当て、』
よっしゃー!『マサムネ』キター!!
これは、俺に装備だな
俺は、スマホをタップして、自キャラの『バードウォッチャー』に星5の『マサムネ』を装備させた。
俺の名前は鳥居裕太23歳。職業は、自衛官で身長は、173cmで、体重は67kg。
趣味はゲームとバードウォッチで、スマホゲームの《鳥図鑑を完成させよう2(ツー)》をプレイしているのだ。
このゲームは、野鳥をスマホで撮って、図鑑を埋めてくやり方と、ガチャで引いて埋めていくやり方があるのだ。
もちろん俺は、前者推奨者である。
それで、集めた鳥が擬人化したキャラクターになって、オンラインRPGでも遊べる。
俺としては、ゲームも出来てバードウォッチも出来るのは、いわば神ゲーである。
リリースされた当初、初代《鳥図鑑を完成させよう》は、そこそこ人気があったが、図書館やネットで撮った写真で完成させるやり方が広まり、速効廃れていった。
あの時は、俺はあまりのショックで、頭に10円玉の大きさのハゲが20個ほどできて、何かヤバイ病気でも拾ったのかと思ったくらいだ。
今回出た新作版は、GPSと連動していたり、他にも色々と対策してあり、不正行為が出来なくなっている。
俺としては不正の出来ない新作版の《鳥図鑑を完成させよう2》の方が断然やる気がでる。
それに、レア度の高い天然物を写真に納めると確実に星5のレアがもらえるのだ。
ガチャで回して取れることもあるようだが、確率は0に等しい。
だから俺は天然物を撮るために、週末はあっちこっちの山や川や湿原などに足を運んでレアな鳥を撮影してコンプリートを目指している。
俺は、スマホの《鳥図鑑を完成させよう2》
を見ながら最後に残った空欄の画面をタップする。
「うーん。ここまで長かったな~」
俺は、目をつむり二年間の事を走馬灯の様に、楽しかった撮影や辛かった撮影を思い出しては顔をにやつかせたり、怪訝な表情など浮かべて思い出に浸っていた。
「おっと、30分も過ぎてたわ。よし、あとはライチョウちゃんだな、三連休の間にコンプリートしにいくか」
しかしながら、ライチョウの撮影難易度は星5。流石、レッドリストに載るライチョウちゃんである。
レッドリストとは、日本でいう絶滅危惧種であり、特別天然記念物にも指定されている。
まあ、氷河期から生きてる鳥ちゃんなので、生息地域が限られている。2400メートル以上の山にしか住めない、アルプスの少女ハイジみたいなものだ。
うーん、やはり、ライチョウは冬毛の時期に撮るのが一番良いか。
なぜかと言うと、 ライチョウは夏毛と冬毛の時があり、夏は褐色になり、冬になると真っ白な純白の毛に覆われる。
妄想するだけでバードウォッチャーとしての血が騒ぎ出した。
夏毛に変わる前の今がチャンスだな。
思い立ったら吉日ともいうし。よし、すぐに行こう。
まあ、スマホとスマホ用の望遠レンズだけ持っていけばいいかと思ったが、俺の中のバードウォッチャーとしての血がそれではダメだと囁き始めた。
他のバードウォッチャーに会うかもしれない。
もし、他のバードウォッチャーに遭遇して、(素人がこんな万年雪のある場所でライチョウ撮影ですか?プゲラ草)
なんて言われた日にゃ~、お兄さん激おこしちゃうよ。
俺は、色々と妄想してから、なめられないように、三年間で揃えたフル装備で行くことにした。
カメラ2台に、望遠レンズ、三脚、スマホ用の望遠レンズと双眼鏡2つに、コンパスに、鳥や人の数を数える、集計カウンターに、護身用のサバイバルナイフを入れてと、迷彩色の帽子と服とズボン。
あとは防寒具やレインコートなどである。
それらを防水リュックに詰め込んで終わり。
だいたい30kgになるが、自衛官である俺にとっちゃ~屁みたいなものだ。
ふぅ~、準備はできた。あとは明日になって、車で岐阜から富山に行ってロープウェーに乗って行くだけだ。
よし、寝るか。
俺は、目覚まし時計をセットしてから布団に入って眠りについた。