7 一緒に下校 1
ここは牡丹桜商店街。
この町の中心。
昼夜問わず多くの人がごった返し、
八百屋、魚屋、肉屋なんかからは客を呼び込む大きな声が聞こえる。
時刻は夕方。
ここは高校からも近く、学校終わりには多くの学生がここに来る。
そうなれば、カップルなんかも多くいることだろう。
そんな中にとても初々しい反応をする二人がいた。
男はどこか居心地が悪そうにし、
女の方は顔を真っ赤にして横を歩いていく。
女は時折男を見上げ、
時折、目がっては反らすということを繰り返している。
そんな光景は
人によってはひどく妬ましく、
また人によっては見ているだけで微笑ましい光景だ。
彼らは付き合い始めのカップルだろう?
こんな風に多くの者は考えるだろう。
しかし、それは違う。
2人は兄妹だった。
そんな中、当の本人・・・色崎利香はひどく混乱していた。
頬を真っ赤にし、
目を潤ませて。
見るものが愛しい人を見上げているように感じたそれは混乱していたからだった。
ど、どどど、どうしようっ!!
な、ななな、なんで兄さんが?
だって部活だって・・・ああ、早く終わったんだっけ・・・?
う~ん・・・でもそんなに早く部活って終わるのかな?
中学の時、部活に入っていたが、
その時はこんなに早く終わったことは一度もなかった。
ミーティングだけの場合でも30分とか1時間はかかった。
今日は友人と話し込んでいたわけでもない。
ホームルームが終わってすぐに校門へ向かった。
もしかしたら高校の部活は本当に短い顔合わせ程度なのかもしれない。
高校の部活は中学の部活より、緩い部活も多くあるらしいし・・・。
少女は少し頬を膨らませる。
少し残念な、
どこかそうあってほしくはない
といった感情があったからだろうか?
彼女はこの自分にとって嬉しさを半減させるこの考えをどこかにやる。
でも違ったら?
もし兄が私の隠そうとした感情を感じ取ったのだとしたら?
それは・・・
・・・すごくうれしいかもしれない。
そんな感情が出たのか、思わず顔がにやける。
こんなの誰だって無理だ。
隠しようがない。
少女はその表情が見えないようにと下を向く。
すると不意に兄の手が目に入る。
彼女の中で欲が生まれた。
今の兄妹目標。
それを達成できるのではないか?
昔から憧れたあれをできるのではないか?
その考えが生まれたからか、
彼女は彼の手を気にし始める。
チラチラと見たり、
握ろうと何度か繰り返す。
けれども勇気がでない。
・・・ううう・・・私のいくじなし・・・。
憧れとは儚く叶わないもの。
そう諦めようとしたときのことだった。
思わず手を取られた。