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3 やつが来た

「俺、再婚することにしたから。」


ある日唐突に、


やたらとチャラチャラとしたTHE・遊び人と思しきイケメンがそんなことを言った。


若作り爺が。


御年40の。


まあ、それが享年になるかもしれないが。


「どうせ騙されているんだろう?


どこのキャバ嬢だ?


どうせ誘惑でもされてその流れで・・・だろう?」


こいつは見た目のままに昼間から働かずにどこぞの店で遊びまわっている。


親が残した遺産からお金が入ってくるから、


問題ないのだ~。


などと舐めたことを恥ずかしげもなく言っていたのを覚えている。


・・・女と遊ぶために残したわけではないだろうに。


俺の目は冷めていた。


「違う違う。


俺と同い年。」


・・・同い年・・・だと・・・。


俺は戦慄する。


「・・・まさか・・・どこの人妻だ?」


この馬鹿野郎また繰り返すつもりかっ!?


俺の冷めた目に強い感情が宿る。


それは経験者だからこその怒りであった。



・・・以前、ここで修羅場に巻き込まれたことがあった。


・・・あの時は・・・相手の旦那が・・・。


思い出したくもない。



知り合いがうまく場を収めてくれたが、二度と体験したくはない。



そんな俺の様子を読み取ったのか、


苦笑いを浮かべ、


「違う違う。」


なんて言うが、


信用ならない。


こいつは所謂トラブルメイカー。


何がどう転んで俺に害をもたらすかわからない。



すると俺の移り変わる表情なんぞお構いなしに続ける。


楽しそうに。


話を聞くには、


笑顔が素敵で、


優しく、


スタイル抜群、


はたまた同じように若作りの人物がお相手だという。


さらには互いに愛し合っているという設定すらあった。



これで俺は悟った。


自然と怒りの感情と訝しむ表情も消えていく。


これは・・・



・・・妄想の類だろうと・・・。



きっと明日になれば、忘れているだろう。


それか俺を揶揄っているのだろう。


そのどちらかだと判断した俺は聞き流すことにした。


毒にも薬にもならない。


そう思った。



そもそも一体誰がこんなボンクラを好き好んで引き取ってくれる奇特な人物なんていない。



でも、それは違った。


そんな心の広い人間がいたのだ。



「末永保さん、いらっしゃいますか?」


良く通る凛とした声が聞こえた。



俺は振り向く。


目に入った瞬間、


思わず息をのんだ。


そこにいたのはまごうことない美少女。


黒い長い髪を後ろでくくり、


切れ長の瞳。


制服を一切着崩すことないそれでもどこか大人な色香が漏れていた。



この人物を自分は知っていた。


俺は親友に問いかける。


「お前、色咲利香と知り合いだったのか?」


「・・・違うな。」


友人はそう言って、


隠れるように俺を盾にし、最後の抵抗を試みる。


「お前・・・あの娘になにかしたの?」


「・・・していない。」


明らかに答えに迷ったな。


これはきっとなにかしたんだろう。


俺は立ち上がる。


すると、悪友は驚いたような声を上げる。


「お前っ!


まさか・・・。」


「タモツはここにいるぞっ!」


手を上げて、軽く返事をする。


その瞬間、


視認できる限界に近い速度で何かが通り過ぎた。


器用に俺を避けて。


「兄さ~んっ!」


見えはしたが、


状況確認というか、


状況理解ができなかった。


「は?」


思わず声が出る。



女が駆け出し、


悪友にタックル。


それもラグビー部も真っ青なほどすごいやつを子供のような晴れやかな笑みでだ。



理解の範疇を超えている。


・・・それに兄さん?



この悪友に妹なんぞいたか?


・・・悪友はやたらと若い親父さんと二人暮らしだったはずだが。


その瞬間、俺のピンクの脳細胞が活性化する。



色咲さんがタモツを探して、やってきた。


タモツは彼女に何かしたらしい。(もしくはその逆。)


タモツに色咲さんがタックル。


・・・いや・・・抱き付いた・・・か?


・・・そして兄さん。



「なるほど、そういうプレイか。」


俺はポンと手を叩く。


案外大きな声だったのだろう。


周り中に聞こえてしまったようだ。


みんなは俺の素晴らしい推理に感嘆したのか、


誰も言葉を発せずにいた。


「・・・馬鹿が・・・。」


そんな中、女に抱き付かれた悪友はそんな風に毒づいた。



補足だが、タモツの隣の例の彼女は噴き出していた。



なぜだ?



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