2 諦め
最悪だった。
同じ学校だった。
俺は手紙を握りつぶす。
学校に着き、
下駄箱を開くと
一枚の紙っぺらが落ちてきた。
ラブレターかと一瞬考え、戦慄するが、
今どきそんな酔狂なことをするはずはいるまいと考えなおす。
第一どこの誰が封筒にすら入れずに、
そんなものを入れるだろうか?
もしやそれ以外か?
とも一応は思考するが、
不幸の手紙とやらは昔もらったことがあったが、
小学校の頃の話だ。
流石に高校生にもなってそんな子供じみたことはするまい。
いろいろと思考を繰り返すが、
俺は答えが出るよりも先に行動に移す。
出たとこ勝負というやつだ。
しゃがみ込んで手紙を拾い、
中身を見る。
書かれた字に目を走らせる。
瞬間、世界が止まった気がした。
何度読み返しても書かれた文字、それから伝わる意図は変わらない。
俺は思わず額に手を当て、
空を見上げる。
そして呻くように呟く。
「・・・そっか・・・そうだよな・・・。
今朝歩いていくって・・・言ってたもんな・・・。」
天を仰いだ俺の手から手紙が滑り落ちる。
そこにはこう書かれていた。
『今日のお昼は一緒に食べようね、お兄ちゃん。』
こうして俺の気分はどん底まで落ち込んでしまった。
ただでさえ、気分が良くないというのに・・・このバカは・・・。
悪友が妙なことを言うから、
さらに気分が悪くなった。
正直かなりむかついていた。
担任が教室に入って来なかったら、
2、3発殴っていたかもしれないというほどに。
まったく・・・この馬鹿は知っているはずだろうに。
・・・俺がイメチェンなんて女にモテるような真似をしたいと思うはずがないことを。
「・・・そんな理由でここまで痩せるのに理由はずないだろうが・・・馬鹿野郎・・・。」
その言葉は誰に聞かれることもなく、
虚空へと消えていくのだった。
昼休みになったことだし、
そろそろ相談とやらを受けてやろうと思う。
なんで昼休みかって?
他の休み時間だってあったはずだろう?
言いたいことはわかるが、
それは無視する。
ただ一つ言えることは・・・
休み時間中はぐったりとしていたということ。
これで察してほしい。
追加して、言おう。
これはもしかしたら・・・もしかするかもしれないと・・・。
だいたい夏休みというものは休むことであって・・・うんぬんかんぬん。
そんな自分への言い訳を繰り返していたからだろうか、
思ったより時間が過ぎてしまった。
きっとタモツのやつは食べ始めていることだろう。
俺は横に視線を送る。
・・・おや?
おやおやおや?
珍しい。
食べていない。
いつもなら飯はさっさと食べてラノベなり、漫画なりを読んでいるか、
ゲームでもしているというのに。
まさかこの悪友が俺を待っていてくれるとは・・・。
俺は少しばかり感動していた。
ほんの少しだが、
まなじりが濡れているようなそんな気もする。
涙は見せない、だって男の子だもの。
俺は強い子だから。
こんな感動をくれた悪友・・・いや、親友・・・。
お前に報いなくてはな。
少しばかり(かなり)茶化そうと思っていたが、
今日はやめることにするよ!
「よお、悪友。
悩みとやらを聞いてやろうじゃないか。」
座り方を変えて、
俺はできる限り恰好とやらをつけて話しかける。
タモツの隣の女子が噴き出したのは気にしない。
「・・・どうした?」
タモツに素で返されてしまったが、
気にしない。
・・・ほらそこの笑うんじゃないっ!
・・・ここで折れたらただの道化じゃないか。
俺は先のダメージをないものとして続ける。
「話してごらん?」
起こったのは大爆笑だ。
・・・タモツの目も冷たい。
でも俺にはわかる。
そこに愛はあるよね。
タモツは溜め息を吐き、
時間を見る。
そして諦めたようにこう言った。
「もういい・・・時機にわかる。」
その言葉が言い終わったあたりだろうか、
「末永保さんいらっしゃいますか?」
どこか凛とした声が扉の方から聞こえてきた。